NAGOYA REPORT 名古屋外食産業事情特集

名古屋を発祥とする外食チェーンのM&Aそしてリストラ

記事公開日:2005年11月19日 更新日:

 名古屋を本拠とするファミリーレストランチェーンのなかで、独特な空気感を放っているのが「キャッツカフェ」です。90年代初頭は「カジュアルレストラン・キャッツカフェ」と名乗っていて、ケーキやパフェなどデザートが中心の少し広めの喫茶店といった雰囲気で、小牧や長久手などの郊外に出店をしていました。

 名前のとおり店内には猫の置物がたくさん配され、それは女性社長の趣味であると当時雑誌などで紹介されていました。当時のキャッツカフェを知る人のなかには、「まだキャッツカフェってあったの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。当時あったキャッツカフェは今、ほとんど姿を消しています。

最初は喫茶店の延長線上だった

キャッツカフェ

 一体キャッツカフェに何があったのでしょうか。このキャッツカフェもやはりあの名古屋ファミレス戦国時代に転換期を迎えます。キャッツカフェは「大き目の喫茶店」からいわゆる「ファミレス」へと脱皮を図ります。尾張旭や豊田、多治見などにそれまでよりも大きなお店を展開し、メニューも食事を中心としたものとなり、それまででは考えられなかった和食までもが登場するようになりました。

 既にこの時迷走は始まっていたのかもしれません。

 キャッツカフェには直営店とフランチャイズ店があり、この変革が始まった際には、店によってメニューが違うといった事態になりました。そしてある日その迷走が決定的なものとなりました。

 2002(H14)年4月、キャッツは経営陣が保有株を一部手放し、第三者割当増資を行います。それを一手に引き受けたのが、当時波に乗っていたフランチャイズ支援企業、ベンチャーリンクです。ベンチャーリンクのキャッツに対する出資比率は6割となりました。

 当時キャッツはキャッツカフェを直営で38店展開していたのですが、この買収により半分近くがレインズインターナショナルの「とりでん」や、タスコシステムの「暖中」に姿を変えることになるのです。当時は、ベンチャーリンクがさらにキャッツカフェをFC展開し、株式公開を目指していたのですが...。

写真
▲店舗イメージを変えつつあるキャッツカフェ。

買収され、さらに買収され...

 ところが、レインズインターナショナルやタスコシステムは、2004(H16)年末をもってベンチャーリンクとの提携関係を見直します。それまで加盟店の開発をベンチャーリンクに委託していたものを全てを自社で行うことにしたのです。そしてキャッツは再度買収されることになるのです。

 ベンチャーリンクからキャッツの株を取得したのは、名古屋で1994(H6)年に「がんばる学園」という学習塾で創業した「ジー・コミュニケーション」でした。学習塾?と思われるかもしれませんが、このジー・コミュニケーションは2000(H12)年から外食産業に進出し、豆腐料理「鈴の屋」、ケーキショップ「さんもりっつ」などを次々と買収していたのです。キャッツは2005(H17)年2月にジー・コミュニケーションに買収され、新たな道を歩み始めるのです。

 これにより、それまで減る一方だったキャッツカフェの店舗は一転して増加に転じます。現在では関東から九州まで32店舗を展開、愛知県に14店、岐阜に 4店、三重に2店舗を構えています。それまでの郊外型店舗に加え、ショッピングセンターにテナントとして入るなど、新たな方向性を模索している印象を受けます。

 メニューも、かつて迷走を始める前のキャッツカフェに戻ったかのように、特徴あるデザートと遊び心のある食事を全面に押し出すようになりました。

 一時期は「創業者に捨てられた」などと揶揄され、店舗も減り、メニューも寂しくなったキャッツカフェは今、再生の道を歩み始めました。猫の人生はやっぱり飼い主次第なのですね。

♪まわれ、まわれ、まわれ、お寿司♪

アトムグループ

 鉄腕アトムの看板を掲げた回転寿司「アトムボーイ」。かつては名古屋じゅうにその姿を見ることができました。アトムボーイを運営するのは株式会社アトム。ファミレス業態は持っていませんが、名古屋の外食を語る上では外せない存在です。回転寿司からスタートしたアトムは和食、イタリアン、中華など手広く外食チェーン事業を拡大していきます。

 その広げ方はものすごく「え?ここもアトムなの?」「あそこもアトムなの?」という状態になっていきます。回転寿司だけでも4つの業態を持つという不思議なアトム。大きく広げた風呂敷は今...。

 かつては名古屋で回転寿司といえばアトムボーイ、という時代がありました。アトムは順調に業績を伸ばし、1998(H10)年に名証2部に上場。回転寿司以外の分野にも積極的に進出します。アトムグループのお店に行くと、レジのところに「株主になりませんか」という、地元証券会社とタイアップしたパンフレットが置いてあったので、それを見るたびに「ああ、ここもアトムなのかぁ」と思ったものでした。株主優待が食事券であることをアピールしていました。

 多角化の幅は広く、和食は「えちぜん」「歓喜亭」「蟹や徳兵衛」「お好み鉄板どて玉」、和食居酒屋の「時の国歓喜」、とんかつの「かつ時」、中華料理「ザ・フォーロン」、韓国料理「韓の食卓」、イタリア料理「ラ・アモーレ」、焼肉「カルビ大将」「唐楽家」、そして回転寿司は「アトムボーイ」「海鮮アトムボーイ」「100円アトム寿司」「にぎりの徳兵衛」と、たぶん株主でも覚えきれないほどの業態を抱えるまでになりました。

アイツはリストラしないんですか?

 和食だけを見ても5業態、そして回転寿司だけでも4業態と、素人目に見てもこれはどうなんだろうと思っていたところ、やはり業績は悪化。そしてとうとう 2005(H17)年3月期連結決算では最終赤字に転落します。そして7月、アトムは第三者割当増資を行い、それをアメリカの投資会社オリンパス・キャピタル・ダイニング・ホールディングスが引き受け、オリンパスはアトムの筆頭株主となりました。

 アトムは外資の下で再建の道を歩むことになり、不採算店舗の整理を始めます。

 それと同時に、オリンパス・キャピタル・ホールディングス・アジアから要請を受けた、全国に居酒屋「甘太郎」などを展開するコロワイドからアトムは役員の派遣を受け、再建を目指すことになります。そしてアトムグループの店舗のうち、首都圏と北海道の店舗はコロワイドに譲渡され、アトムは中部地方の175 店舗で再出発することになりました。

 そして10月、コロワイドはオリンパス・キャピタル・ダイニング・ホールディングス自体の全株式を投資ファンドから取得し、連結子会社化しました。

 アトムもコロワイドの子会社となり、コロワイドグループの一員となったのです。コロワイドはちょうど名古屋への進出を進め始めたところで、店舗数はまだ少なく、食材も大阪から配達していたものを、アトムの配送センターを買収することで出店攻勢の足がかりを作ったところでした。アトム自体を傘下に収めることで、一気に名古屋地区への進出を加速するものと思われます。

 アトムの再建はまだ始まったばかり。今後どういう方向に動くのか注目したいと思います。キャッツとアトムは単独で生き残ることはできず、キャッツは関東資本を経て現在は名古屋資本の傘下に、そしてアトムは関東資本参加で再建を進めることになりました。名古屋の企業はどこも堅実...というわけでもないのです。

 再建策によってキャッツはキャッツらしさを取り戻しましたが、アトムは今後どういう方向性で生き残りをかけるのでしょう。既に回転寿司分野は全国チェーンの「かっぱ寿司」や「スシロー」が名古屋を固め始めていますし、焼肉も名古屋には地元を発祥とする「焼肉屋さかい」があります。

 アトムの今後のリストラ策に注目です。まずは版権料が高そうな、鉄腕アトムのリストラでしょうか?

協力:yueさん

※以上は2005/11/19にメールマガジンとして発行したものです。


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