▲電車を降りて改札を出ると、空港のアクセスプラザ。
「セントレア」
この名前が全国的に知れ渡ることになるとは、当初誰も予想しなかったでしょう。セントレアとは、愛知県常滑市沖に2005(H17)年2月17日開港した中部国際空港の愛称です。
この名前が一躍有名になったのは、空港自体の宣伝によるものではなく、この空港の南にある知多郡美浜町と南知多町が、住民の意向を反映せず合併協議会だけで「南セントレア市」に新市名を決めてしまったことがニュースなどで大きく取り上げられたからです。カタカナである上に施設の名前を市名として採用した奇抜さと、住民抜きという選考手法が批判されました。
結局その後住民投票が行われ、合併自体が破談となってしまいました。あり得ないとは思いますが、この騒動が空港の売名行為として誰かが仕組んだものだったとしたら「うまくやったな」としか言いようがありません。全国的に、自費であれだけ名前を売り込もうとしたら相当費用がかかります。あり得ない想像ですけど。
知名度はとりあえずアップしました-セントレア
セントレアという名前が開港前から話題に上ったこともあり、開港後、多くの見学者で混雑するセントレアの映像が全国的に流れました。多くの方は「なぜ名古屋っ子は、たかが新しくできた空港ごときにあんなに足を運ぶのか」と思われたかもしれません。違うのです。セントレアはただの空港、ただのターミナルではないのです。1994(H6)年9月に開港した、セントレアの先輩である関西国際空港を反面教師とした結果がこれなのです。
関空と同じ徹は踏めない
関西国際空港は、世界で初めて民間会社の運営する空港として開港しました。民間と言っても半官半民の政府系特殊会社である関西国際空港株式会社が運営しています。民間が運営するということは儲けなければなりません。
ところが、これまで関空は開港後一度も黒字となったことはなく負債は増える一方、累積損失は2000億円、さらに2期工事を1兆円かけて進めており、現在は合わせて1兆2000億円にも負債は膨れ上がっています。2005(H17)年3月期は、補助金分を除いて初めての黒字化となりましたが、単独黒字化は遠い未来の話です。
関西国際空港はバブルの遺産です。だからといって赤字が良いというわけではありませんが、この関空の姿を見ていながら、セントレアは同じ徹を踏むわけには行きません。
中部国際空港株式会社も、会社自体は半官半民となったのですが運営はそうではありません。あえて「民間主導」を打ち出したのです。1銭単位でコストを削減することで有名なトヨタ自動車のお膝元名古屋。トヨタの指導を仰ぎ、中部国際空港は徹底したコスト削減、公共工事では今まで考えられなかった事業費削減により、4700億円の負債で空港を完成させることができたのです。
さらに運営面でも、東アジアのハブ空港を目指すために、思い切って関空よりも飛行機の着陸料を安く設定しました。そして空港でありながら、空港として以外の売上を、空港としての売上と同程度見込みました。つまり、航空収入の倍稼げる空港を目指したのです。
ちょっとわかりにくいですので、具体的に見てみましょう。
空港は今まで経由地でしかありませんでした。ですから、落ちるお金は飛行機の利用客が待ち時間にする買物程度でした。セントレアはその概念を打ち破り、空港自体を目的地として利用してもらうことを目指したのです。空港に魅力的な商業施設などをずらっと並べました。飛行機に乗らない人も遊べる空港、それがセントレアなのです。
だから飛行機に乗る用事が無くとも、セントレアに名古屋っ子は行くのです。そんなセントレアには一体何があるのでしょうか、駆け足で見てみましょう。
1階は「ウェルカムガーデン」。ローソン、フードコート「Airport Oasis」、郵便局、 UFJ銀行が入っています。そして2階は「到着ロビー・アクセスプラザ」。サンクス、喫茶店「SANARE」、カレーショップ「C&C」、カフェ「Steiner」、診療所などがあります。ここまでは特にすごいものがあるわけではありません。3階からセントレアらしさが出てきますが、まだ驚いてはいけません。
▲日本の、いやアジアのハブ空港になれるか!?本気…?
名古屋のおみやげ何でも揃います
3階は「出発ロビー」。さすがにここは飛行機利用者しか入ることができませんが、免税店も国内最大級です。単一免税店としては日本最大。
出発から免税品を買うというのも変な感じがしますが、とりあえず抑えておきたいところ。他にも制限エリア内には喫茶店やスタンドカフェ、軽食、おみやげのお店があるそうですが、さすがに私もまだセントレアができてから海外旅行に行ったことがないので入ったことはありません…。
3階の、誰でも入ることができるエリアには、とにかくお土産がたくさん売られています。「セントレアおみやげ館」では、弁当から名古屋土産まで豊富に品揃え。そして「セントレア銘品館」では、両口屋是清や宮きしめんといったお馴染みのものから、中津川で有名な川上屋、伊勢名物赤福など、中部地区全体の有名和・洋菓子店のお土産がずらり。
約100銘柄の地酒も取り扱っている上に、季節によって催事も開かれます。この地方のお土産選びはまずここから。
そして3階のもうひとつの目玉は展望レストラン「QUEEN ALICE&TURANDOT」です。クイーン・アリスは、料理の鉄人でおなじみのフレンチの巨匠、石鍋裕さんがプロデュースするフレンチレストラン。トゥーランドットも同じく石鍋シェフがプロデュースする中華レストランです。飛行機の離発着を見ながら優雅なひと時を過ごせます。電話予約をオススメします。
150席あり、パーティや披露宴にも対応してくれます。そうです。セントレアでは結婚式を挙げることができるのです。挙式は1階のセンターピアガーデンが対応します。空港で結婚式というそれ自体が珍しいという面白さだけではなく、空港が結婚式会場ということは、遠方から飛行機でやってくる来賓の方々にとってこれ以上便利な場所はありません。
飛行機下りたらすぐ会場。式が終わればすぐ飛行機です。空港を出なくとも名古屋土産もバッチリです。
▲国内線と国際線の搭乗口が同じフロア。乗り継ぎが便利。
空港へ遊びに行くという感覚
でも、まだ驚いてはいけません。セントレアで最も賑わうのが4階の「スカイタウン」です。スカイタウンは「レンガ通り」「イベントプラザ」「ちょうちん横丁」と分かれています。まずは、ヨーロッパの路地裏をイメージしたというレンガ通りから。このフロアは世界の味と雑貨を中心とした出店構成になっています。
物販13店舗のうち、世界的建築家がデザインしたキッチン用品やバスルームグッズの「ALESSI」、オリジナルシルバーブランドBUTTYが有名なアクセサリーショップ「L`atelier」、宮内庁や外国の日本大使館に納められているクリスタルガラスの「KAGAMI CRYSTAL」、教育雑貨店「THE STUDY ROOM」、セントレア限定品もある「THE GINZA」、イタリアのスイーツブランド「BABBI」、ハワイアングッズの「Hula Hawaii」の7つが中部初出店です。他にもキャラクターグッズの「yb. Friend’s」、旅行雑貨の「cavalier.」、世界各地の民俗雑貨店「MALAIKA」、名古屋を代表する洋食器メーカー・ノリタケのセレクトショップ「MAHORA」、アメリカ最大のアクセサリーチェーン「claire’s」、世界中の雑貨を集めた「MARCHAND DE LEGUMES」、JAが運営する「花工房あぐりす」、「丸善」、「アマノドラッグ」があります。
▲レンガ通りはヨーロピアンな雰囲気。
飲食店はカジュアルレストラン「クイーン・アリス・アクア」、イタリアンの「DECANT ARE」、ふかひれ料理専門「筑紫楼」、石焼ビビンバ「トラジ」、セルフカフェの「CAFE VOYAGE」、栗原はるみさんプロデュースのカフェ「YUTORI NO KUKAN」、無添加スープ専門の「Soup Stock TOKYO」が中部初。
他にはラーメン朝かゆ「櫻」、オムライスの「omu- port」、べーグルの「BAGEL&BAGLE」、麺類と丼の「美濃味匠旅処」、カフェ洋食店「文化屋」、ライトミールの「ZETTON CAFE&EATS」、回転寿司「丸忠」とこれだけの店舗が並んでいます。しかし、しかしまだ驚いてはいけません。ここに書いたのはレンガ通りにあるお店だけです。ちょうちん横丁にはさらに飲食店がずらり並んでいます。
ちょうちん横丁は懐かしの味がテーマ。古くから名古屋に伝わる名物など和食を中心にお店が並んでいます。さらに駆け足でご紹介します。
「買い食い味めぐり」ゾーンでは、愛知県が日本一の生産量を誇る「えびせんべいの里」、岐阜県飛騨をイメージした和菓子のお店「飛騨の国」、やっぱりういろ「虎屋ういろ」、八丁味噌料理の「三河呑龍」、大豆を使った食事からお菓子まで揃えた「とうふや豆蔵」、三河湾のたこ・ふぐをお土産に「日間賀観光ホテル」、海産物を漬け込んだ「真珠漬本舗」、豊橋名産「ヤマサのちくわ・ねりもの家」、東海3県の名物をコラボレート「あぎみ家」、おにぎりの「あぐりす」、知多半島で有名な「網元直売魚太郎」。これらは気軽に買い食いできる地元の名物料理店です。
▲ちょうちん横丁は和の雰囲気。懐かしい駄菓子屋さんも。
そして日本の食文化で欠かせないのがラーメン。らーめん小路には名古屋名物の台湾ラーメンの元祖「味仙」、高山ラーメンの「豆天狗」、「ラーメン昭和」の3軒が並びます。名物はまだまだあります。天むすを発明した「めいふつ天むす」、隠れた名古屋名物カレーうどんの「若鯱家」、ひつまぶしの「うな匠」、えびフライを名古屋名物に仕立て上げた「まるは食堂」で名古屋名物の本物の味をどうぞ。
他には和菓子のカフェ「和の間」、ダイニングレストラン「かめりあ」、そばの「沙羅餐」、和食「鈴波」、知多牛のシチュー・カレーの「山田屋ベル」、天丼専門「満天」、お粥専門「謝朋殿粥餐庁」、とんかつの「和幸」、パスタ「角燈亭」、駄菓子の「吉田商店」があります。他に常滑焼の「陶翔」、和の小物「Warakuya Okame」といった和の物販店もあります。
でも、まだ驚くべき施設があります。この4階には、飛行機を見ながら入ることができるお風呂「くつろぎ処」があるのです。展望風呂「宮の湯」だけでなく、国内の空港初となるエステ・ネイル・ヘアサロン「ゆらら」が併設。休憩、食事もできてしまうのです。空港でお風呂です。空港で買う弁当を最近は「空弁」と言いますが、これは「空湯」ですね。
▲ちょうちん横丁ではスタバさえも…。
これだけ見てお店がありますから、周るだけでも疲れてしまいます。やっぱりお風呂は必要です。和をテーマにした、このちょうちん横丁。一軒、違和感のあるお店を最後に紹介しましょう。和の空間と言っても、やはりコーヒーを飲みたい方もいらっしゃることでしょう。
ご安心ください。このちょうちん横丁には、スターバックスコーヒーがあります。でもやはり和の空間。スターバックスにも瓦屋根の装飾が施してあります。こんなスターバックスは他に無いでしょう。
このように、空港で一日遊べてしまうのがセントレアなのです。でも、ここ最近は当初のような人出は無いのだとか。いつまで経営というフライトを順調にこなすことができますやら。しかし空港に銭湯とはレアですね。あ、だから…!これ以上言うのは辞めておきます。
▲関空は大変みたいですね…。やっぱり儲からなきゃね。
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