中区[8] 大須観音
寂れた時期があったなんて信じられない-大須
若宮大通から国道19号を南下するとすぐに、地下鉄鶴舞線大須観音駅があります。その2番出口あたりを左手に入ると、大須観音です。ここから東側の大須2・3丁目一帯が今、注目されている大須地区です。
▲西大須の交差点から参道を臨みます。平日でも活気あります
大須は古くからの繁華街で、戦前は大道芸、物まね、曲芸などが連日行われ、縁日には12万人以上もの人出があったそうです。また、大正時代までは中村区大門に移った遊郭街がここにあり、名古屋一の盛り場であったそうです。
1892(M25)年に大須の大火、大正初期の遊郭の移転、そして戦災により壊滅的な状況となります。しかし、昭和30年代映画が人気となるとそれに合わせて大須へと人の足が向かい復活。
ところが、映画の衰退とともに大須の活気は薄れていきます。昭和50年代にはただの古い商店街に成り下がってしまい、人通りも現在の1/3まで落ち込んだそうです。
そして今、大須は名古屋で唯一、観光にも対応できる繁華街として脚光を浴びています。大須には何があるのか、それは一言では言えません。
かつて閑散期は、そのなかで突出して元気だったアメ横ビルという電気街を指して、東京で言う秋葉原のような場所と例えられていましたが、現在では若者が古着を売る下北沢のような店も多くなり、浅草のような門前町の雰囲気も兼ね備え、縁日にはお年寄りがたくさん訪れる巣鴨の風情もあります。
さらに秋葉原的な部分も進化し、マニアックなお店も増えています。新しいところでは中華街も誕生しています。
そんな許容力の高い大須を隅から隅まで見て回りましょう。
▲大須観音前の観音通です。いつも賑わっています
徳川宗春があなたのリクエストに応えます-大須観音
まずは大須観音です。もともとは尾張国長岡庄大須郷(現在の岐阜県羽島市大須)にあったのですが、水害が多かったために1612(慶長17)年、家康の命によりこの地に移されました。
毎月18、28日には境内で縁日、骨董位置が開かれ大変な人出となります。またその日の午後6時からは先着200名に長命甘酒、18日は加えて身代わり餅がふるまわれます。鳩の餌が売られており、いつも誰かが餌をあげています。
▲こちらは大須観音。境内でコンサートが開かれることもあります
この大須観音の境内には「大正琴発祥の碑」があります。1912(M45)年、森田吾郎という大須の人が小型で手軽な二弦琴を開発し、この琴を元に、ピアノキーを応用し改良したものが大正琴の原型とされています。
のちに衰退してしまうのですが、演奏のしやすさから現在も年配者を中心に人気があり、9月9日には境内で大須琴大祭が開かれます。また、大須にあるテレビ愛知では、時折、大正琴特集番組が組まれます。
▲大正琴発祥の碑です。以前は通販でもよく見かけましたね
また観音さんの境内には、「宗春爛漫」というからくり人形があります。尾張七藩主の徳川宗春は、将軍吉宗の倹約令を無視し、芸能・消費を奨励。江戸や大坂から芸人、商人を集め、芝居小屋や飲食店を建ち並べ、名古屋の街を一気に発展させたのでした。
その後、もちろん将軍からはお咎めを受けるのですが、宗春は自分の政治理念のもとに庶民の側に立った政治を続けたのでした。それがこの大須の発展の元になっているのです。
このからくり人形は1日4回、11時、13時、15時、17時に上演されるのですが、山車カラクリは二種類あり、宗春が問い掛けてくるので、見物客が答えると、そのリクエストに応じるという双方向スタイルになっています。
消費が冷え込み、倹約節約が叫ばれているのは今も同じ、しかしここ大須が元気なのは、今も宗春の思いが残っているからなのかもしれません。
▲「宗春爛漫」。「浦島」「唐子」どちらがいいか宗春にリクエストしてください
北村想さん縁の芝居小屋-七ツ寺共同スタジオ
そんな芸の心が残っている場所があります。大須観音の南には、「七寺」があります。もとは稲沢市七ッ寺町に建てられたものですが、1611(慶長16)年にこの地に移されました。
▲七寺(長福寺)です。真言宗智山派のお寺です
七区の精舎を建てたことから七寺と呼ばれるようになったとのこと。木造観音菩薩坐像と勢至菩薩坐像および一切経は国の重要文化財に指定されています。そしてすぐ横にあるのが、名古屋の老舗演劇スタジオ「七ツ寺共同スタジオ」です。
決して広いとは言えませんが、逆に舞台と客席が近く臨場感溢れるステージが見られます。ワハハ本舗はこのスタジオでよく上演していましたし、演出家の北村想さんゆかりの地でもあります。
こういった場所は名古屋にあまり無いというイメージがありますが、名古屋でも頑張っている演劇人はいるのです。もっと老舗の大須演芸場には後ほど回ります。
▲こちらが国の重要文化財。スタジオはすぐ横のビルです
ういろとういろうの違いをまず知ろう-大須観音通
大須観音に戻り大須観音通を歩きましょう。歩き始めるとすぐ、右側にはいつも長い行列ができています。ここ「大潮屋」のお好み焼きは200円で、おやつとして最適です。
▲大潮屋のお好み焼きは、前を通るとどうしても買ってしまいます
持って食べられるように包装されています。そしてすぐそばに「大須射撃場」があります。単なる遊び場ではなく公認射撃場で、エアライフルを撃つことが出来ます。
▲公認大須射撃場。近くにたくさんいるからといって、鳩撃ってはだめですよ
そしてその向かいにあるのが「Yen=g」というお店です。かつては普通の古着屋さんだったのですが、1g=0.5円の量り売りのお店となりました。このお店は「コメ兵(こめひょう)」の店舗の一つです。
▲「Yen=g」古着リサイクル量り売りショップです
コメ兵とは大須一帯にさまざまなジャンルのリサイクルショップを持つ有名なお店です。東京にも進出しています。次の大須門前町通編でご紹介します。
そして、一般的に門前町といえば和菓子です。名古屋を代表とする和菓子のメーカーがここにあります。その和菓子とは「ういろう」です。
ここ観音通と仁王門通には「♪ボーン、ボーン、ボーンと時計が三つ」の大須ういろと、「♪白、黒、抹茶、あがり、コーヒー、ゆず、さくら、ポポポイのポイ」の青柳ういろうがあります。
このふたつの味の違いがわかれば、あなたも名古屋っ子です。まずは「ういろ」と「ういろう」のどちらがどちらかということを判別できるようになれば、少し名古屋通と認められます。もちろん名古屋っ子にとっては常識中の常識です。
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