西区[3] 明道町
あなたが食べている駄菓子もひょっとすると-明道町
では、円頓寺交差点のある江川線へと向かいそこから北に歩きます。次の信号交差点が「明道町」です。1994(H6)年の町名変更に伴い、明道町の名は交差点とバス停に残っているのみで、現在はそこから東側が幅下、西側が新道という地名になっています。
今、これを読みながらガムや飴を口にしている方は、一度その販売元を見てみてください。そこには名古屋市西区と書いてありませんか?と言いますのも、ここ明道町はお菓子や問屋街として有名で、多くのメーカーもあります。
すると早速問屋さんの看板が見えてきました。うさぎとリスのキャラクターでおなじみの「クッピーラムネ」を扱う問屋さんです。
▲♪カクダイのクッピーラムネ。カクダイ製菓の本社はもう少し北にあります
さらに見回すと「うまい棒」をロットで販売しているお店や、当たりくじつきのお菓子をそのまま全部売っている問屋さんなどがあります。問屋さんとはいえ、ロット買いであれば一般に販売してくれるお店も多く、この日も女の子達が駄菓子を箱買いしていました。駄菓子屋さんごっこでもする気でしょうか。
▲見るだけでワクワクする品揃え。ただ、原則まとめ買い
おもちゃの銃専門問屋-菓子問屋街
お菓子だけでなく、シャボン玉やおもちゃの銃なども売られており子どもの頃にタイムスリップできますし、大量に購入することができます。しかし、中には一般客には販売しない問屋さんもあります。
不思議なお店を見かけました。そこは「名古屋ガンショップ」です。ガンショップと言っても、もちろん本物の銃を扱っているわけではなく「おもちゃのてっぽう問屋」と書いてあります。おもちゃの銃だけでひとつの問屋さんがあるというのも面白いですよね。
▲こちらが名古屋ガンショップ。本物のガンマニアの方お間違いなく
明道町の菓子問屋街は、戦後は600以上の店舗が集まり大変活気がありました。しかし70年代以降急速に廃業が相次ぎました。スーパーやコンビニの隆盛で駄菓子屋さん自体が減少したに加え、後継者がいないことも理由となっています。
かつては明道町の名所のひとつで、私もよく買いに行った「中京菓子玩具卸市場」が2000(H12)年3月に半世紀の幕を閉じると、街はさらに活気を失いました。
ところがここ最近のレトロ・昭和ブームで、駄菓子や玩具が今、注目されています。そうやって駄菓子を目当てに女の子もこの街にやってくるようになりました。明道町に光が指し始めました。
結婚するのに駄菓子が必要-嫁入り菓子
他にも明道町には名古屋ならではの需要があります。街の問屋さんの至るところに「嫁入り菓子」という文字が見られます。名古屋では結婚の日、新婦を家から送り出す際と、新郎の家に新婦を迎え入れる際、近所の人を集めてお菓子を撒く風習があります。
これは過去のものではなく、今でも「お菓子撒かないといけないなー」という適齢期の女の子が名古屋にはいます。最近は撒かずに簡略化して、ビニル袋に入ったお菓子を近所に配る場合もあります。ひょっとしたら先ほど見かけた女の子達は、菓子撒き用のお菓子を探していたのかも…。
▲嫁入り菓子を売るお店。入口には花嫁さんの姿が
私が驚いたのが、この明道町のお菓子は国内にとどまらず、海外でも普通にコンビニエンスストアに置かれているということです。ロサンゼルスのコンビニでマルカワのフーセンガムを見かけたときは感激しました。
もちろん製造者のところには、マルカワの名と、名古屋市西区新道という住所が入っていました。かつては駄菓子と言えば、版権にひっかからないような、有名キャラクターにギリギリ似てるような似てないような、という絵が描かれていたものです。
この明道町に本社を構えるマルカワのガムにも、以前はフィリックスに似た奇妙なネコの絵が描いてあった記憶があるのですが、海外展開もするようになったからか、現在のマルカワのフーセンガムには、版権をクリアしたフィリックスが描かれています。
♪とって~も柔らか、どなたも褒める-延命院地蔵・鶏三和
さて、この界隈はお菓子だけでなく、食品関係の会社があります。明道町から西に歩くと延命院地蔵があり、その周辺には、豆腐屋さんや鶏肉屋さんがあります。
▲延命院地蔵です。延命をお願いする前に偏食を治さないと
菊井通の交差点の南西角にある「鶏三和」。ここでは純鶏名古屋コーチンをはじめ、鶏肉の本当の味を販売しています。精肉、惣菜、ギフトのほか、店内でコーチン鍋を食べることもできます。
▲「三和」です。ホームページのCMライブラリーはすごい
名古屋っ子なら多くの方が「さんわの若鶏」と言えば「♪とって~もやわらか、どなたも褒める。さんわ、さんわ、さんわの若鶏、おいしいったらないね。」という、今から少女に食べられる状況にもかかわらず、陽気に踊る鶏たちを描いたアニメーションCMを思い出されると思います。
さんわのホームページでは過去のCMも含めて全てを見られますので、ご覧になってみてください。懐かしいですよ。
本気で駄菓子店を開きたいあなたへ-食品産業新報社
そして、その交差点の北東にあるビルには「食品産業新報社」という業界紙の本社があります。この新聞はお菓子業界の専門誌で、毎月3回発行されています。
またウェブサイトもあり「お菓子うらわざ雑学講座」という名称で運営されています。駄菓子を家で再現するレシピや、駄菓子を辛口批評する「喰わずに死ねるか」のコーナー、駄菓子博物館、といった内容の充実振り。駄菓子占いのコーナーで、あなたも占ってみてはどうですか?
私は「大吉」で共親製菓「フルーツの森」、ウェファスにフルーツ餅が乗ったお菓子がでました。凶の駄菓子ってどんなだろう…。
▲食品産業新報社。駄菓子屋さん開業希望者必読!?
また、本格的に駄菓子屋さんを始めるための「虎の巻」のコーナーもあり、仕入れから売り方まで丁寧に解説されています。
明道町へ行けば、ごっこではなく、本当に駄菓子屋さんを開店できますよ。
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