トッピーの放送見聞録

放送局の枠を買い取って村のラジオ番組を放送・東白川村の重大なトピックスを全世界へ発信!

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★村発信の情報トークバラエティラジオ番組とは?
★村の毎月の重大ニュースがほのぼのすぎる
★お便り受付はハガキのみというアナログ感!だけどアプリで全世界で聴ける

 「今月の村のトピックス、第1位は...。2日間、村にピザーラの移動販売車がやってきた!」

 「これが1位なんです!そうなんです!村にとって、宅配ピザというのはすごい憧れなんですよ!でもね。村では...宅配じゃなかったのです。ピザーラなのに!取りに行かないといけなかったんです。ピザーラなのに。」

 「移動販売車だからね。でも、私なんて、2日連続でピザ食べましたよ!」

 こんな感じで、村民にとって重大な出来事を、村民の感覚で伝える、村のラジオ番組がこの春から岐阜県でスタートしました。しかもこれは、趣味やお遊びではなく、本物のラジオ局の放送枠を買い取って、公共の電波で「村」の実状を伝えるもの。時には真面目に、時には笑いを交え、さらには自虐ネタまで躊躇無く入れるトークバラエティなのです。

 アナログ感満載の「村のラジオ」。何が目的なのでしょうか。収録現場を取材しました。

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明治時代から一度も合併していない東白川村

 名古屋から高速道路を利用して車で45分のところにある、岐阜県中濃地域で古くから宿場町として栄えた美濃加茂市。さらにそこから、車を走らせること約1時間。標高1,000メートルほどの山々に囲まれ、美濃白川茶の発祥地として茶畑の広がる長閑な山村、それが東白川村です。

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 平成の大合併に巻き込まれなかったどころか、1889(M22)年以来、130年近くに渡って単独で「東白川村」として存在し続け、幻の生物である「つちのこ」の目撃例が多く、神棚の生産も盛んで、その背景には非常に珍しいお寺のない自治体という側面もある、神秘的な村でもあります。

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 人口は2,400人。減少のペースはここ数年ゆるやかになっているものの、依然として厳しい状況があるなかで、なぜ今、ラジオなのでしょうか。

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 しかも、東白川村のラジオ番組が放送されているのは、村を放送エリアとはしていない、美濃加茂市など中濃地域の都市部をエリアとするコミュニティFMラジオ局「FMらら」です。放送エリアではない自治体が、ラジオ局の放送枠を買い取って番組を放送するという例は、全国を見てもそれほど多くはありません。

 さらに、東白川村のラジオ番組は、行政主導による自治体の情報番組ではなく、村民によるトークバラエティ番組なのです。では、収録現場を覗いてみましょう。

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村民と役場の連携による手づくりラジオ

 「この番組は、東白川村の出来事や話題、魅力をお伝えするマニアックな番組です。東白川、こりゃほんね!ラジオー」

 自治体内で発生した出来事、話題、魅力を伝える番組...という前置きにも関わらず、それを「マニアック」と言い切ってしまう自虐なフリで番組はスタート。

 メインパーソナリティは男性2人。軽妙なトークで村のイベントMCなどもしているけれども、本業は林業・製材業を営む房国さんと、地域おこし協力隊員としてこのラジオ番組に対してアツい思いをぶつける銀二郎さん。そして毎回、そこに女性ゲストが加わります。ゲストと言ってもタレントさんではなく、村で事業などを手がける女性陣。

 村の人口が少ないことが逆にメリットに。出演者が村民なので和気藹々。そんなボケ、ツッコミで大丈夫?と思えるトークが展開されます。

 でも、内輪ウケではないのです。見ると、構成台本には文字がびっしり。パーソナリティ陣と役場の担当者がそれぞれ「伝えたい」ことを出し合い、「村をどういった切り口で紹介すればウケるか」を、練った内容になっています。

 軽い感じで番組をやっている雰囲気を出しながらも、そこに注がれている思いの強さを感じます。

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1ヶ月間の村の重大なトピックスをほのぼのと

 最初のコーナーは「村トピベスト○」。番組が放送されるのは月に1回なので、その間に発生した村のトピックスをベスト10形式で紹介していきます。しかしそこはやはり村。「ベスト7」だったり「ベスト6」だったり、項目数は流動します。

 5月の放送では...。

 第6位「ゴルフ場で倒れた男性にAEDで人命救助・消防協力者表彰」
 第5位「地元グルメコンテスト・かも1グランプリ入賞ならず」
 第4位「山間地元バンドによる音楽フェスタ」
 第3位「小学校6年間で村内の6つの山すべてに登る全校登山」
 第2位「取り壊しになる保育園で別れを惜しむフェスタ」
 第1位「つちのこフェスタ2016・今年もつちのこ見つからず」

 入賞しなくても参加することに意義がある、山間部で活動しているバンドによる音楽フェスタ、村の小学校ならではの全校登山、取り壊しになる保育園など、都市部のラジオ番組では大きく取り上げられないような項目自体も興味深いのですが...。

 実際に内容を聞いてみますと、過疎化の問題が背景にある中でも明るく過ごそうという心意気だったり、村の暮らしぶりが伝わってきます。ふらっと遊びに行っただけではなかなかわからない、村民の空気感やライフスタイルが垣間見られるのも特徴です。

 そして1位の「つちのこフェスタ」は、名古屋のテレビやネットメディアでも大きく取り上げられたもので、つちのこの目撃例が多い東白川村ならではの年に1度のイベント。つちのこを生け捕りにしたら今回は賞金127万円。つちのこ自体が見つけられなくても、つちのこプレートを見つけたら賞金や商品がもらえるということでも話題になりました。

 これについても「イベントに村の人口以上の人が来たんですよ!これはすごいことですよ!名古屋市に例えたら250万人くらい来たってことですよ!」という切り口が斬新。

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村からの告知コーナーも全世界で聞けるのです

 このラジオ番組は、もともと東白川村商工会青年部の有志によって立ち上げられたもので、当初はつちのこのように、1回限りの幻の番組として放送したところ...。大きく告知をしていなかったにもかかわらず、聴いた人から番組にハガキが届いたことがレギュラー化の契機に。

 村をアピールする手段になり得るのではないのか。そこで村の有志と役場が連携し、この春から毎月の放送となったのです。

 もちろん、村からのお知らせのコーナーも。山あいの村とはいえ「詳しくはFacebookで」というあたりが、イマドキです。

 イマドキといえば、このラジオ番組は、スマホやパソコンでは全世界で聴けるのも特徴です。FMららは美濃加茂市・可児市・御嵩町をカバーする地域ラジオ局ですが、独自アプリを開発しており、アプリをインストールさえすれば無料で全世界で聴くことができるのです。民放やNHKのように国内だけではなく、世界です。村のラジオでありながら全世界で聴けるというアンバランスさも面白みがあります。

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村で商売している方がゲスト

 この回では、女性ゲストは村でタイ古式マッサージ店を経営する、いくえさん。タイに単身で乗り込んで修行した本格マッサージを提供しているという時点で、その行動力、そしてそれを村で経営していること自体がすごいのですが、その本業の話よりも、笑いを取りに行く姿勢がさすがです。

 そしてもう一人の村のゲストは、新世紀工房の田口雅士さん。その日のお昼に摘んだという新茶を、氷で出したものを持参して登場。白川茶の魅力をスタジオでアピール...と思ったら、メインパーソナリティの房国さんが、普通のペットボトルのお茶を飲んでいることに対して「村の白川茶ペットボトルがあるでしょ!」と激しいツッコミ。

 実際に村で商売に携わっている方が登場して、笑いを取りに行きながらのトークをすることで、押し付けがましくない村のアピールになっています。

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村のラジオ番組が目指すもの

 東白川村総務課の田口さんにお話を伺いますと、村には村が自主運営するケーブルテレビがあり、村の情報をテレビ番組として村内には発信しているものの、若い人に伝わらないのが残念。このラジオ番組はその層にも聴いてもらいたいとのこと。

 なぜケーブルテレビでは若い人に伝わらないのか。そこにも村の事情がありました。東白川村では、高校生になると村の外に出て行かざるを得ない状況があるというのです。村を離れて一人暮らしをしている若い子に、村外でも村を感じて欲しい...。

 「だから、自治体からのお知らせ...ではなく、今の雰囲気を大切に続いて欲しいと思っています。若い人はもちろん、村の外にいる"村民"との架け橋、一体感をこのラジオ番組で生み出すことができたら。」

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 地域おこし協力隊員でパーソナリティの銀二郎さんは、このラジオ番組の立ち上げにあたって、もともとつながりのあった名古屋のラジオ局のアナウンサーに相談。そうこうしているうちに、自分自身がパーソナリティを務めることに。

 「村の雰囲気そのものを味わってもらえるラジオ番組にしたいという思いがあります。かけあいの面白さをいかに出せるか、ですかね。」

 あくまでも、聴いて楽しいことが最重要。その先に地域おこし、村おこしがある...という信念で番組づくりにあたっているそうです。

 そして普段は林業の経営者、パーソナリティの房国さんは、村の情報をもっと発信していかなくてはいけないと、このラジオ番組の放送を役場に申し入れ、自ら番組を企画。何を伝えたら良いか...を考えていくうちに今のスタイルができあがったとのこと。

 「村、平和だよね~と思ってもらえたら。村のレトロさと、ラジオのレトロさって通じるところがあると思うんですよね。だから番組も、ハガキでしかお便りを受け付けてないんです。アプリで全世界で聴けるけど、コミュニケーションはハガキ、そういう村らしさにこだわりたいですね。そして、なるべくたくさんの村民を巻き込みたいです。」

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次回からは本当に村民が作るラジオに

 今回取材させていただいた5月の放送分までは、FMららのプロデューサー・ディレクターのもとで番組が制作されていたのですが、なんと、6月からは役場のケーブルテレビの設備を使用して、本当にすべてを村民で作るラジオ番組にするというのですから驚きです。

 村民で作る、村の空気を伝える、村のラジオ。地域ラジオは全国に多々ありますが、そのなかでも珍しい、村が自ら番組を作って、村が放送局の番組枠を買い取って、全世界に向けて放送する村のラジオが、いよいよ本格始動します。

 東白川村の挑戦はこの春、始まったばかりです。

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 「東白川こりゃほんね!ラジオ」
 放送は毎月第4月曜日午後7時からの20分間。次回は6月27日(月)19:00~
岐阜中濃地域ではFMらら・76.8MHz。エリア外ではアプリで聞くことができます。
 お便りは...〒509-1392 東白川村「東白川こりゃほんね!ラジオ」係まで

 ・FMらら公式アプリ...スマホ、タブレット、パソコンから聞くことができます。

 ぜひ一度、岐阜県の美濃山間部にある東白川村の「村LIFE」と書いて「むらいふ!」を、体感してみてください。

取材協力

FMらら

東白川村役場(岐阜・東白川村)

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