かつ丼の味を悩む-かつどん那古野
ではいったん、大須の南端である上前津駅まで南下し、そこから大津通を北に向かって歩きましょう。
万松寺から新天地通を南へ歩くと、携帯電話を売る喫茶店や、ばね専門店、とんかつ店などが並びます。この「かつどん那古野」ではいろいろなカツ丼を食べることができます。しょうゆ、みそ、さらにはあんかけ。かつどんの味で悩むというのも名古屋ならではですね。そうして歩いていくと大須通につきあたります。その左側、UFJ銀行と三井住友銀行に挟まれるように春日神社があります。
病気を治してくれる木は戦争で…-春日神社
春日神社は、名古屋市内では数少ない「春日さん」で、尾張藩2代藩主徳川光友が出生の際、母が安産を祈願したことで知られています。母・於尉の方は病気を患うのですが、神木の椎の木を採って祀り治ったとされています。そのため、かつては椎の木がお守りとして大変ありがたがられていたのですが、戦災で神殿とともに焼失してしまいました。その後神殿のみが1959(S34)年に再建されました。色が大変鮮やかで、周囲の木々の緑とコントラストが印象的です。
▲春日神社です。新しいといっても50年程前の建物ですが、赤が大変鮮やか。 |
動く竜のビルに中華街-大須301ビル
大津通を歩きますと、大きな龍のあるビルが見えてきます。それは万松寺交差点に2003(H15)年12月にオープンした「大須301ビル」です。このビルは大須で初めて、複数の地権者が共同で建てたテナントビルとなっていて、地権者が共同というのは見てすぐにわかります。かつて、万松寺交差点と言えば「甘栗の今井総本家」とCMのフレーズを思い出すほど有名な店がありましたが、ビルの1階、同じ位置に新しく綺麗な今井総本家がありますし、松屋コーヒーも理研産業補聴器センターも、かつてとあったのとほぼ同じ場所に、ピカピカの店舗を構えています。
そして2階は大須バザール。雑貨店や占い屋さん、服屋さんからボディーアートの店まで、見ているだけでも楽しい店が建ち並びます。3階がこのビルの目玉、「大須中華街」です。四川、北京、台湾、香港と多種多様な中華料理のお店が12店舗入っています。室内でしかも店舗を構えているので、横浜や神戸の中華街と比べてどうかな?という気もしたのですが、テイクアウト専門の「チャイニーズ MATONKE」というお店もあるので、気軽にフカヒレスープだけちょっと飲みたいな、という願望も叶えてくれます。
連日多くの人で溢れており、全国紙にも商店街活性化の成功例として取り上げられたりしていますが、大須は商店街自体が元気ありますからね。名古屋でも他の商店街は厳しい状況であることに変わりありません。元気があるから設備投資ができる。厳しいから設備投資ができない。典型的な勝ち組・負け組となってしまっています。しかしこの状況を打破しようと、大須を視察に訪れる商店街も増えているそうです。
▲大須301ビルと万松寺ビルです。手前の龍がいるビルが大須301ビルです。 | ▲以前もこの位置に今井総本家はありました。ちなみに龍は時々動きます。 |
お寺のビルってどんなの?-万松寺ビル
さて、その大須301ビルの北側にあるのが「万松寺ビル」です。「ミスタードーナツ」や「デニーズ」もあります。前述の巫女茶屋もこのビルにありました。875台の駐車スペースがあるので、車でお越しの際はここが確実です。お寺のビル?と思われるかもしれませんが、万松寺周辺は1912(T元)年に境内の大部分を開放したことで繁華街が形成されたという歴史があります。このビルは、その現代版とも言えるもので、大須301ビルよりも前に注目されました。今も昔も、万松寺は大須の発展を願っているということがわかります。また、電気街らしく万松寺ではパソコン供養も行われているようです。いらんパソコンはコメ兵へ、それでも売れないときは…。
電子部品から生鮮・薬までこれぞ大須-第1アメ横ビル・中公設市場
万松寺の北側が第一アメ横ビルです。私は小学生のとき父親に連れられてきたのが最初ですが、見たことも無い電化製品の山に興奮したことを覚えています。今でもジャンク品を扱う店もあり、ベータのビデオデッキなども見つかるかも。ただ完動品かどうかはわかりませんが。ミキサーやオーディオ機器、ラジオや受信機を見ていると今でもワクワクします。でも、昔よりパソコンを扱うお店の割合が随分増えました。
▲万松寺ビルと第一アメ横ビルです。かつてはアメ横が大きく感じられたのですが…。 |
そして赤門交差点には「おもいっきり健康館」があります。大須に薬局?と思われるかもしれませんが、名古屋版「マツモトキヨシ」という感じです。かつてここには「テクノ」というエイデン系のパソコンショップがあったのですが、グッドウィルのマニアックさに押されてか撤退しました。そして、その西にあるのが「中公設市場」です。1918(T7)年に開設、その後1958(S33)年に改築され現在に至っています。市場というよりはショッピングセンターという雰囲気ですが、大正時代からあるということは、当時最先端を行っていたのではないでしょうか。現在も市営で運営されており活気があります。
大津通に戻り、おもいっきり健康館の北側にあるのが三洋堂書店です。三洋堂は名古屋に本社を置く書店チェーンなのですが、ここ大須の店舗だけは品揃えに特徴があります。さすが電脳街ということで、パソコン関係の本や理工書のほか、3階は、コスプレ喫茶目当てでやってきた人たちにも対応できるような品揃えを目指しているようです。しかしここ最近は、栄地区にできたまんだらけなどにお客が流れているそうです。
▲以前はテクノだった「おもいっきり健康館」おもいっきりって…まさか、あの番組にあやかって!? | ▲中公設市場です。名古屋の元祖!ショッピングセンター。 |
ジャンボ地蔵は名前もジャンボ-清浄寺
大津通を反対側に渡ると清浄寺があります。一見駐車場の入口の様な間口ですが、奥にはジャンボ地蔵があります。ここはもともと小林城というお城があったところで、廃城となった後、1700(元禄13)年、春日神社で安産を祈願した母を持つ尾張藩2代藩主光友が創建したお寺です。小林城主牧氏の墓所、芭蕉・馬州の句碑、六地蔵尊もありますが、何と言ってもすごいのが高さ5メートル、重さ35トンの平成のジャンボ延命地蔵尊菩薩です。1991(H3)年に建立されたもので、延命長寿、家門繁栄にご利益があるそうです。境内は砂利など綺麗に整備されており、座る所もあり休憩するにもいい場所です。
▲清浄寺の境内、六地蔵尊です。大変綺麗で足を踏み入れていいかどうか迷うほどです。 | ▲小林城跡のほか芭蕉・馬州の句碑などもあります。 | ▲こちらがジャンボ地蔵尊。お寺自ら「ジャンボ」って言うのですね。 |
ここを通り抜け、前津通に出るとそこはもうランの館です。しかしそちらには行かず大津通へと戻ります。三洋堂の北には1階にリーバイスストアのあるゲインビルがあります。ゲインは名古屋で数あるタウン誌のひとつ「ケリー」を出版している会社です。タウン誌といってもエリアは愛知・岐阜・三重と広く、ファッション情報なども多く扱っています。そしてここには、ゲインが経営するコミュニティFM局、「DANVO」があります。開局時は華々しく、ZIP-FMとの同時放送企画などもあったのですが、一時期は1日の放送時間が約5時間という状況にまでなってしまいました。現在は多少改善されたものの、厳しい状況が続いているようです。
※DANVOは放送を終了しました。
▲ゲインビルです。かつて1階には日本ゲートウェイのショールームがありましたが、日本から撤退してしまいました。 |
名古屋で知らない人はいない味噌かつ専門店-矢場とん
そして、その北側若宮大通沿いにあるのが「矢場とん」です。名古屋で味噌カツと言えば矢場とん、というくらい有名なお店なのですが、なんと2004(H16)年3月には東京・銀座にも進出します。名古屋に味噌カツを食べにわざわざやってくる東京の人がいるので勝算はある、ということですが果たしてどうでしょうか。味噌カツ専門店ですが、カツカレーが隠れた人気メニューです。
以上で大須編は終了です。最後に、大須を紹介しているラジオ番組をひとつ紹介しましょう。それは毎週土曜の午後7時から放送されている「大須三丁目矢野雑貨店」という番組です。大須出身の矢野きよ実さんが大須にこだわった番組を…という内容で、時には全国区アーティストをわざわざ大須の喫茶店に呼んで収録するという凝ったこともやっています。放送は大須にあるFM局…と言いたいところですが、千代田にあるFM AICHIから、FM三重、岐阜FMとの3局ネットで放送されています。
大須は本当に面白い。何がある街か、一言で言えば「ぐちゃぐちゃ」。大阪のアメリカ村や道頓堀のような雰囲気に似ているのだけど、若者だけで溢れているというわけでもなく、お年寄りもマニアも、皆がこの街に惹かれてやってきます。名古屋で面白いところある?と聞かれたら、私は真っ先に大須をお薦めします。何度行っても飽きませんね。
では、大須からさらに南下し、怖い伝説があるらしい橘へと向かいます。
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