三河(東愛知) 東海あまのじゃくツアー

文人の面影はあれれ?竹島ぱるく・海辺の文学記念館

記事公開日:2010年12月15日

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★昭和のおみやげ街は現在進行形で...
★文人と蒲郡そして未来の自分へ?
★面影はその窓の向こう

 前回は、三河湾に浮かぶ歩いていける島「竹島・八百富神社」を見てきましたが、今回はその対岸にある竹島園地周辺をぶらぶらしてみようと思います。実はここ、文人たち縁の場所として知られており、多くの作中に登場しています。その風景を未来に伝えようという心意気はわかるのですが、残っているのは...あれれ?

 かつては鉄道唱歌に歌われた景勝地、竹島海岸には次々と老朽化の波が押し寄せています。変わらない竹島海岸、変わらざるを得ない竹島海岸。そんな空気を感じながら散策してみます。

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なぜ対岸にも?そうか!

 竹島橋を渡って島から戻ってきますと、その先に、八百富神社の社殿のような建物があります。はて、神社は竹島そのものに勧請したはずなのに、なぜ対岸にも社殿があるのかと思ったら、これは遥拝所。かつてはここから島に向かってお参りをしたということでしょうね。橋が架かっていなかった頃は、船が無ければ本殿に参拝できなかったわけですものね。

 さて、まずは緑が海の青さと対比されて美しい、竹島橋のたもとに広がる芝生広場へと行ってみます。ここは三河湾国定公園「竹島園地」でして、前回見かけた藤原俊成像を中心に、俊成苑として整備されており、その先にはホテル竹島が見えてきます。ホテル自体は立派で大きく、古さを感じさせることはないのですが、ぜひとも訪れて欲しいのが、その北側にあるお土産店街です。

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昭和45年の空気に触れられそう!

 ホテル竹島の北側にあるのは、1970(S45)年に完成したドライブイン「竹島ぱるく」です。ここには1956(S31)年に開館した歴史ある「竹島水族館」もあり、多くの名古屋っ子は遠足や子ども会などで訪れたことがあるであろう観光スポットです。

 その風景を見てビックリ。幼少期に訪れた際の記憶の扉をこじ開けてくれるかのように、そして、昭和の息吹を感じさせてくれるかのように、昭和45年当時のままなんじゃないかと思わせてくれるようなお土産店街が広がっていたのです。

 いや...違いますね。やはり時の流れは確実にありました。シャッターが閉められたお店も...。

 しかし、そのシャッターには、手書きの地図で「竹島周辺の食事処のご案内」という張り紙がありました。このお店は閉まっちゃってるけど、他にもあるから、お願いだからこの街でお金を落としていって!と、閉店を余儀なくされたけれども、地域のために何か遺品を残せないかという、かつてここで飲食店を開いていたオヤジさんの心意気が伝わってくるかのような張り紙でした。勝手な想像ですが。

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これは...おいしいぞ!でも...

 そんなオヤジさんの思いに感銘を受け、絶対ここでお昼ご飯を食べるぞ!ということで、竹島ぱるく内にある「美味の店・たこしま」というお店に入ることにしました。一見、たこ焼き専門店のようで、竹島でタコだからたこしま...なのでしょうかね...。ところが、実際にはメニューは多彩で、冷やしうどんと焼きうどんをいただきました。

 この焼きうどんというのが、しっかりと味が利いていて、相方は「おぉ~」と驚きを隠せない表情でした。これは確かに美味の店です。

 ただ、店内はタイガース装飾一色なので、普段、家電量販店のなかでもジョーシンだけは避けているという、D党の方にはつらいところがあるかもしれません。でも、店内にかかっていた掛け時計は、我らD党のための放送局・CBCのロゴ入りでしたが。

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老朽化で...

 そんなシャッターを閉めたお店のある竹島ぱるくの横には、「長年皆様にお楽しみいただいたウミガメ類の展示を中止しました。」という、これまた寂しい張り紙がしてある竹島水族館があり、さらに、その正面には船が展示されているのですが...。

 その船の名は「エリカ号」。1981(S56)年、手づくりのヨット「エリカ号」でこの蒲郡港を出航した長江さん一家は、6万キロ、4年9ヶ月の大航海で世界を一周してこの蒲郡港へと帰ってきました。家族ぐるみでのヨット世界一周は日本初。その偉業を称えて保存・展示されているのです。

 しかし、その長江さんは昨年2月に亡くなりました。そして、エリカ号は老朽化で安全性に問題が生じ、補修するには多額の費用が必要になってしまうとの理由で、取り壊しが決定したのです。展示は2011(H23)年2月までです。

 竹島海岸からひとつシンボルが消えることになります...。ところが、実は、この竹島海岸からは、もっと大きなシンボルといいますか、象徴が既に取り壊されているのです。そしてその跡地には、それを慰めるかのような建物が...。

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文人が愛した常盤苑

 では再び、竹島橋のたもとにある八百富神社の遥拝所の方向へと戻ります。するとその先に「常盤苑」という門があり、そこにはかわいらしい子どもの像が座っています。

 常盤苑とは、多くの文人たちが訪れた料亭で、眺めは格別といわれ、その風情は多くの作品に登場しているところです。見ると、その先には歴史を感じさせる古めかしい建物があるのですが...。

 その建物とは「海辺の文学記念館」。菊池寛の作中に「常盤館」が登場して以降、志賀直哉、谷崎潤一郎、山本有三、川端康成、井上靖など、多くの文人がこの場所から見た竹島海岸の美しさを作中に描いたことを記念して建てられたものです。

「記念して建てられた」ってどういうこと?常磐館そのものじゃないの?と思ったら、先ほどのエリカ号と同じように、常磐館は老朽化などによって廃業し、そのまま1982(S57)年に取り壊されてしまっていたのでした。

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 では、今建っている建物は何かと言いますと、常磐館の文化を後世に伝えていきたいと、常磐館が建てられたのとほぼ同じ時期に建てられた、蒲郡市中央本町にあった「岡本医院」の建物を模倣復元したもので、それを海辺の文学記念館としているのです。

 いやいや、同じ時代に...と言うから、てっきりそれを移築したのかと思いきや、模倣復元とは。だったら、最初から常磐館そのものを模倣復元できなかったのかなぁ...と思ったのですが、ホテル別館の料亭だったわけで、そう簡単には復元できるような規模の建物ではなかったのでしょうね...。

蒲郡観光開発の祖

 そんな海辺の文学記念館で、まず出迎えてくれるのが胸像なのですが、どの作家さん?と思ったら、その方は作家ではなく滝信四郎氏。

 滝信四郎氏は、かつてここにあった「常磐館」を建てた実業家で、そう、前回訪れた竹島・八百富神社へに架かる橋を自費で架けて寄進した人物です。旧・蒲郡ホテルを開業させたのもこの方です。

 愛知県民にとっては、舟木一夫さん主演の映画「高校三年生」が撮影されたことでも有名な滝中学校・高等学校の創立者といった方がわかりやすいでしょうか、それとも、2010(H22)年12月、下請代金支払遅延等防止法に違反して、取引先の下請代金を勝手に減額して公正取引委員会に対して措置請求が行われたことで有名なタキヒヨーを法人化した人物といった方がわかりやすいでしょうか。

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未来の自分に手紙を

 そんな滝信四郎氏の胸像の次に登場したのは「時手紙」のコーナー。ここでは、未来の自分や両親、子どもに手紙を書くことができまして、未来の指定した日に郵送してくれるというものです。

 未来によって料金が違いまして、5年以下の未来だったら500円、6年から8年後の未来だった700円、9年から10年までの未来へは1,000円で手紙を出すことができます。

 時手紙のコーナーには、「がまごおり絵手紙大賞」入賞作品の展示が行われていまして、その展示作品のレベルの高さに、思わず、未来への自分にそんなハイレベルな手紙が書けるだろうか...と怖気づいてしまうこと受け合いです。

 そして蒲郡を最初に開発した歌人・藤原俊成の展示...あれ?ここ、文学記念館じゃないの...と思ったら、ちゃんとありました。

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この風景が...!

 記念館の奥には、蒲郡・竹島・常磐館・蒲郡ホテルに関わる主な文学作品と文人のパネル展示がしてあり、そこには先ほど挙げた名前のほかにも、池波正太郎、高浜虚子、与謝野晶子、三島由紀夫など、そんなに蒲郡は文人と関わりがあるのか...!と思わせるほどのビッグネームがずらりと並んでいました。

 そして、その奥にある和室に入りますと...。うわぁ~。

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 目の前に広がる三河湾と竹島。これは美しい。先にあげた文人たちもきっと、この風景を見ながら、創作の想いを巡らしていたのかと思うと、ゾクゾクっとするものがありますね。建物自体は無関係の模倣建築だけれども、この風景は今も昔も変わっていないはず。

 でも、全部が無関係というわけではなく、この和室の天井から釣り下がっている照明具や、アイスペールなどの調度品は、実際に常磐館で使用されていたものだそうで、この空間では確かに、文人たちの面影に触れたことができたような気がしました。

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 さらに、精巧さとユーモラスさと併せ持つ、旧蒲郡ホテル六角堂軒下にかけられていたという十二支透彫額には思わず見とれてしまいます。

 ここにあった常磐館は、料亭そして和風旅館として、その旧蒲郡ホテルの別館という位置づけになっていて、ホテルとは屋根つきの渡り廊下で繋がっていたそうです。その旧蒲郡ホテルは今も蒲郡プリンスホテルとして営業を続けています。

 ということは、そんな文人たちはきっと、蒲郡ホテルにも訪れていたはず。見てみたい...のですが、蒲郡プリンスホテルといったら「蒲プリ」と呼ばれ、由緒だけでなく、その格式の高さは有名で、思わず腰が引けてしまいます。

 そんな気持ちを、とても上品で物腰の優しかった、海辺の文学記念館の方に吐露しましたところ、蒲郡プリンスホテルは2007(H19)年に近代化産業遺産に認定され、誰でも気軽に見学ができるとのこと。

 また、ツイッターでフォロワーさんから「せっかく蒲郡にいるのなら、蒲郡プリンスホテルの喫茶店でお茶しなきゃ。」と背中を押され、物怖じする気持ちを抑えながら、いざ、蒲郡プリンスホテルに行ってみることにします。よーし、奮発してデザートセットでも...い...いくらくらいするのかな...ガクブル。

関連情報

海辺の文学記念館(愛知・蒲郡市)MAP

海辺の文学記念館

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