尾張(西愛知) 東海あまのじゃくツアー

日本一の初詣...桃太郎出生地と利用された過去-犬山

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 桃太郎の現場レポートも3回目です。長くなってすみません。お付き合いありがとうございます。

 前回は、桃太郎生誕地を様々な証拠品で主張する、愛知県犬山市の桃太郎神社の存在についてご紹介しました。しかし、お婆さんが使っていたという足跡の残った洗濯岩や、きびだんごの材料をこしらえたと思われる石臼といった証拠品では、まだまだ「桃太郎と言ったら岡山・香川ではないのか」という思いを払拭することはできません。

 そこで、桃太郎の存在についての証拠があるという、桃太郎神社の宝物館へと足を進めることにします。さらには「桃太郎って岡山じゃないの?」という質問を、思い切ってぶつけてみたいと思います。その回答やいかに。

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 桃太郎神社では、境内のあちこちに、

「宝物館には珍しいものがいろいろ展示してあります」
「話の種に宝物館のご見学をおすすめします」

 と、やたらと宝物館見学を進める看板が置かれています。その程度では「ふーん」なのですが、社殿に近づくと、

「鬼は実在したか?くわしくは宝物館をご覧ください」

 とまであります。まさか、証拠があるとでも...。

 さらには、境内名所案内の看板があり、何だか無くなってしまった名所があるのか、空白の多い看板なのですが、そこには「有名な宝物館」と書かれています。神社自らが「有名な」と言い切ってしまう宝物館。そりゃ、行くしかありません。

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 宝物館の入館料は大人200円、子ども100円です。入館料を払って宝物館の前へと進みます。宝物館の前には、さらにたくさんの像が。猿の首には「話の種に珍しい宝物ごらんください」という札が。いや...もうお金払ってますから、見ますって。

 泣いている青い鬼には、なんだか哀愁が漂います。だって、その後ろにいるイヌとサルとキジは皆ガッツポーズや万歳をしていて...やっぱり、目が怖いんだもの...。

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 これまでにも、投降している鬼や、目から実際に涙を流し続ける、反省している鬼の像を見てきました。そして先ほどの泣いている青鬼。最後に見た鬼はとうとう...。

 次に現れた桃色の鬼の悲惨なこと。なんと四つん這いになり、「やさしい鬼です。背中にどうぞ!」という札を首から下げさせられているではありませんか。

 とうとう人格...いや、鬼格が破壊されてしまったのね...。

 なんてことを言ってはいけません。悪人が桃太郎の力技...じゃない、正義の制裁によって善人に生まれ変わったのです!

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 では、宝物館へ。この日は平日の雨の日ということもあって、参拝者は私たちのみで、宝物館では、宮司さんが直々に案内をしてくださりました。

 宝物館の入口には、例祭である「桃太郎まつり」の際に曳かれた、宝車が展示されています。まるで、絵本に出てくるような宝物です。桃太郎神社の例祭、それは予想通り、毎年5月5日に執り行われます。

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 桃太郎神社の宝物館には、桃太郎の掛け軸や、古い桃太郎の人形や絵本、外国製の桃太郎など、桃太郎に関するあらゆるものが展示されているほか、太平洋戦争終戦の詔書、戦前の御前会議の絵など、一見、桃太郎とはあまり関係ないと思われる展示品もあるのですが、実は関係があるのです。

 あの頃...桃太郎はいいように利用されたのです。そして...。

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 その話の前に、この犬山が桃太郎生誕地であるという証拠が見たいですよね。すると、やっぱり鬼の武器と言ったらまずコレ、という「鬼の金棒」です。これまた、絵本に登場するような、こん棒にトゲトゲがついたものです。

 そして、鬼の珍宝の化石。確かに、あそこみたいな形をしてるけど、それって化石なんじゃなくて、そういう形の石なのでは...。いや、夢の無いことを言ってはいけません。なんと、桃太郎の戦いの際に、イヌが噛みちぎったものが、化石になったそうです。化石になっている程の時間が経っているのに、なぜ噛みちぎったことがわかったのか...。

 夢の話とはいえ、想像しただけで痛そう。

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 だから、夢の話なんじゃなくて、鬼は現実にいた...という証拠が、鬼のミイラの写真と、鬼のガイコツの写真です。

 鬼は本当にいたんですね!

 でも、なんで写真なのでしょう。本物はどこに?

 などというお話をしますと、胡散臭く感じてしまうかもしれませんが、決してそんなものばかりではありません。この、桃太郎神社の宝物は、京都の二条城で開催された「日本の名宝展」など、各地の展覧会で紹介されたほか、テレビでも紹介されていて、それがパネルでも展示してあります。

「フジテレビで紹介されました。」
「NETテレビで紹介されました。」

 ...。NETテレビって...。時代を感じます。NETテレビがわからない人は、お爺さんやお婆さんに聞いてみましょう。読み方は「ネットテレビ」じゃなくて、「エヌ・イー・ティーテレビ」です。

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 宮司さんに、桃太郎の伝説とこの神社についてのお話を伺いました。

・現在の桃太郎神社がある場所には、桃太郎のお爺さんとお婆さんが住んでいた屋敷があり、そう言い伝えられていることから、地名が「古屋敷」となっている。

このシリーズの初回でご紹介したとおり、このあたりには、桃太郎の物語にまつわる地名がかなり多く残されており、ストーリーを実際に辿れるような距離である。

・実際には、桃太郎は桃から生まれたわけではなく、桃を食べて若返ったお爺さんとお婆さんの子どもであるということ。鬼ヶ島にいたのは鬼ではなく、悪党の根城だった。

 え?鬼のミイラやガイコツは...?それは、それ。らしい。

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・ここから鬼ヶ島へ行くのには、山を越えれば距離は近いのですが、陸路で行くのが困難だったため、木曽川から可児川へと船で渡った。

 確かに、現在もこの山には犬山市と可児市を結ぶ道はありません。現在でも道路が作られないほどに険しいということでしょう。誰ですか、道路を作る需要が無いだけだろ!という人は。

 しかし何だか、鬼の証拠品ばかりで、肝心の桃太郎の証拠品が全く無いんですけど...。

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・鬼退治をした後、桃太郎はお爺さんお婆さんと暮らすのですが、二人が亡くなった後、桃太郎は山へと姿を消し、その山が桃の形になったため「桃山」になった。

 なるほど!桃山が桃太郎がいた証拠なのですね。

・桃太郎は古事記の大神実命(おおかむづみのみこと)の生まれ変わりであると言われるようになり、大神実命と桃太郎を祀る祠が桃山におかれ、桃太郎の神社として信仰を集めるようになった。

・1930(S5)年に、現在地に桃太郎神社は遷された。

 確かに、これだけ桃太郎の伝説にまつわる地名がしっかりと残されていると、おとぎ話だけに真偽を問うのはナンセンスで、明らかに桃太郎信仰がこの地には古くから根付いていて、それが本当に桃太郎だったかどうかは別にして、あの可児の鬼ヶ島に悪党がいて、それを成敗した英雄がこの犬山の地にいたことは間違いないでしょう。

 では最後に、聞きづらい質問を、宮司さんに...。

「あのー、桃太郎って、岡山じゃないんですか?」

 すると、岡山市の「桃太郎伝説」のパンフレットを提示され、

 岡山では「吉備津彦命」を桃太郎になぞらえているに過ぎず、桃太郎の物語を足跡として辿れるわけでも無いし、吉備津彦を祀っている神社はあっても、桃太郎を祀っている神社は、日本でここ犬山だけと、自信満々に答えられました。何だか、ホッとしました。やっぱりそこは...地元民だから。

 でも、わざわざ岡山市のパンフレットを用意しているあたり、結構聞かれるんでしょうね...やっぱり。

 そうなんです。日本の各地に桃太郎の伝説は残されているのですが、桃太郎そのものを祀っている神社はここにしかないのです。

 考古学的には、生誕地はどこか、本当の鬼ヶ島はどこか、といったことを調べる価値はあるのかもしれません。

 でも精神的に、桃太郎の日本一にあやかることができる神社は、日本でここにしか無いということだけは、はっきりしています。

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 最後に、桃太郎が利用された過去について。

 桃太郎は現在、我が国の教科書に採用されていません。それはなぜか。桃太郎は戦犯だからです。先の戦争で、日本は米英を鬼になぞらえ、我が国の軍隊を桃太郎になぞらえていました。

 この宝物館には、当時の戦意高揚ポスターが展示されているのですが、それを見て、私は衝撃を受けました。

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 そのポスターは、1942(S17)年12月8日の「大東亜戦争第二週年・征け桃太郎・米英を撃て(ママ)」という、開戦2年目を記念した「中部軍報道部」作成のもの。保存状態がものすごくよく、当時のままの色合いが残されています。

 何が衝撃だったって。

 戦意高揚のポスターなのに、ものすごく、ポップでカワイイんです...。

 アメリカの軍機をイメージしたトンボがキジにやられて「ヒャーまたやられた」と言っていたり、アメリカ国旗をつけたクジラが「グワーンやられた・助けてくれ!!」と叫んでいて...それぞれがとってもカワイらしい。

 一方の日本側は、サルが「前進基地の無血占領だ!!どんなもんだ!!」と、胸を張り、米軍機をやっつけるキジを見て笑顔のイヌ...。

 私のなかにあった、戦時中のイメージが覆された...と言ったら大げさですけど、戦時中でも、そういうキャラクターのカワイらしさで訴えるというセンスが、あったんですね...。

 もちろん、このポスターで日本軍の船の先頭に立っているのは桃太郎。戦時中は教科書でも、桃太郎はそういう戦争の英雄のような扱いをされていました。だから、桃太郎は戦犯なのです。

 戦犯なので、教科書には載っていない桃太郎。でも、この犬山市では副読本で桃太郎を習います。

 確かに、戦争に加担したのはよくないですけれども、悪党によって困っている人を助けるために、悪党を倒して日本一になることは本来悪いことではありません。それくらいの野望を持った子どもにならないと、これからの世の中は生き抜くことはできないかもしれません。

 桃太郎にあやかって、来年こそは日本一な人生を!そんなあなたに桃太郎神社はオススメです。もちろん、私はしっかりとお参りしてきました。目指すからには何事も「日本一!」の気概で行こうじゃありませんか。

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桃太郎神社(愛知・犬山市)

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