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光と影が永遠を描く-藤城清治さんの世界

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 今回は山陰紀行をちょっとお休みして、旅先で立ち寄った美術館で偶然、懐かしい世界と出会うことができましたので、レポートします。光と影が織り成す影絵で描かれたメルヘン、幼い頃に夢見た世界に再び出会えただけでなく、永遠に続くかのような効果に魅了されました。

 夕日を見にいったはずの島根県立美術館。夕日は見られなかったですが、まさかここで幼少の頃に母が買ってきた本に見た異世界、学生時代あこがれた東京での夕暮れの風景などを思い出すことになるとは。

 今はもう終了していますが、島根県立美術館と、そこでで開催された藤城清治さんの展覧会をご紹介します。

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さすが縁結びの国

 島根県立美術館を訪れたのは、実は美術作品を見るためではありませんでした。日本で7番目の広さを誇る宍道湖、シジミが獲れることでも知られていますが、何より有名なのは夕日の美しさです。その夕日が最も美しく見られるスポットが国道9号の袖師公園とその横にある島根県立美術館なのです。しかし...。

 私たちが訪れた日は、日中はすごくいい天気だったにもかかわらず、時刻が夕方に近づくにつれ、車が美術館に近づくにつれ、次第に雲が空を覆い始めました。

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 島根県立美術館は、ロビーや芝生広場は入場無料となっていて、ロビーは宍道湖側がガラス張りに、そしてそのガラスの向こう側にある芝生広場には彫刻作品が並べられ、まるで夕焼けが芸術作品のひとつであるかのような構成となっています。

 その彫刻作品のなかのひとつ「宍道湖うさぎ」には、さすが島根らしい噂があります。宍道湖うさぎは、走り抜けるうさぎを表現した12羽からなる作品です。その、前から2羽目のうさぎにシジミの貝殻を供えて、西を向きながら撫でると縁結びにご利益があるのだとか。

 信仰とかではないので、どこまで信憑性があるかはわかりませんが、たぶんそうやったことで結ばれた人がいるのでしょうね。いかに島根に、縁結びをお願いにやってきている人が多いかということを示している気もします。

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紅い光は見られなかったけれど

 この美術館は3月から9月の間、日没後30分が閉館時刻となります。次第に日没の時刻が近づくのですが、残念ながら真っ赤に染まる宍道湖の湖面を見ることができませんでした。

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 それなら美術館を見ようと館内を見回すと、懐かしい絵が目に飛び込んできました。それは藤城清治さんの影絵。目に力のある独特な表情、躍動する楽器を持つ小人や動物たち、まさに幼い頃に見た夢の世界。

 私はその作品たちを見た記憶はあったものの、失礼ながら藤城さんのお名前は存じ上げなかったのですが、相方は以前から知っていたようで、さっそくギャラリーに入場します。

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夕日が名物の美術館にふさわしい

 影絵といっても、単純なものではありません。当たり前のことかもしれませんが、影の部分は黒で単調であるのに対し、光の部分の色鮮やかさに思わず息を呑みます。製作された影絵を本など紙上で見るのと、実際に光が投影された作品の輝きは全く違います。

 なかには水や鏡を効果的に使った作品もあり、光が映りこんだ揺れる水面や、鏡を両側に置くことで覗き込むと永遠に広がる世界が形成されていたりと、その表現の奥深さに、子どもでなくとも思わず別の世界に心が旅立ってしまいます。

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 藤城さんは、この水の都松江にある夕暮れの宍道湖が美しい美術館での展示会の開催をうれしく思い、松江を第2のふるさとと仰っています。確かに、これでもし前日に日本海テレビのニュースで見たような美しい夕日の宍道湖を見ることができたなら、そのシルエットに映る嫁ヶ島や袖師地蔵が作り出す景色はまるで影絵。現実の世界と藤城さんの作品の融合を感じることができたんだろうな...と思うとますます残念でした。

いろんな気持ちがよみがえりました

 藤城さんの作品といえば、私たちよりもかなり上の世代でしたら木馬座のケロヨンをご存知の方が多いでしょうね。ケロヨンも展示されていましたが、残念ながら私たちの世代では、知識としては知っていても、リアルな記憶はありません...。

 関西の方なら朝日放送のクロージング、関東の方なら東京12チャンネル(当時)の天気予報、全国的にはカルピスでも藤城さんの作品は知られていますよね。

 名古屋に住む私の場合は、幼い頃に母が買っていた「暮らしの手帖」に見た影絵の世界が最も印象に強く、そして学生時代、修学旅行を除いて初めて東京に行った際、夕方の「TEPCO天気情報」で見た、藤城さんの世界に感激したことを思い出しました。

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 私は絵ハガキを買っただけだったのですが、相方はさすが思い入れが強いのか図録などを買い求めていました。

 テレビ東京のTEPCO天気情報は、東京12チャンネルだった頃に比べるとわずかな時間しか藤城さんの影絵は登場しなかったのですが、立ち寄ったスーパーの家電売場で見た瞬間、幼い頃に包まれていた暖かい何かを思い出したような気がしたことを覚えています。

 当時の私は、上京する夢を抱いていました。今回すっかり大人になって再び藤城さんの作品と出会って、暮れ行く東京のスーパーにいた自分の姿を思い出し、とても切なくなってしまいました。もちろん今は別の夢を追いかけているので、上京の夢を封印したことに後悔はありませんが、まだ10代だった頃の自分に不意に出会ってしまった...そんな気がしました。

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いろんな気持ちがよみがえりました

 実は今回、夕日をみるためだけに美術館に来たようなものだったので、じっくりと作品を見る時間が設けられなかったのが残念です。140以上の作品が展示されていたので、あらかじめ知っていたら何時間もかけてじっくりと作品を見て、その世界に陶酔したかったなと後悔。

 でも、ふと立ち寄ったところでこういうった展覧会に出会えたのも何らかの運命。ある意味それも縁結び。

 宍道湖うさぎが取り持ってくれたのかもしれないな...、と思ってみたりして。

島根県立美術館(島根・松江市)


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