02.ぶらり中部 おでかけレポ~全国・海外~

繋がらなかったけど華麗に復活-九頭竜湖駅

記事公開日:2010年7月6日 更新日:

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★岐阜県と福井県の間にある壁
★豪雨被害で不通になるも華麗に復活
★それでも1日5本ですか

 当然のことですが、愛知県民と岐阜県民では周辺県に対する感覚が違います。滋賀県や富山県については、愛知県民から見ると「遠い」という印象があるのですが、岐阜県民にとっては「隣県」という意識があり、親近感を感じるようです。

 しかしです。同じく、岐阜県民にとって隣県であるはずの福井県について、岐阜県民である相方はなじみが薄いようで、愛知県民である私とあまり意識が変わらないというのです。

 岐阜県と福井県はもちろん接しています。いや、それどころか、地図で見ると、岐阜県と福井県は結構な面積で接しているはずなのですが...。

 今回は、岐阜から見た福井という視点で、日帰り旅をしてみました。

元祖?高速無料!

 名古屋から福井へ車で行くとなりますと、大抵は名神高速道路と北陸自動車道を使って、滋賀県周りで行くルートを思い浮かべるのですが、今回はあくまでも岐阜と福井の接点ということで、岐阜県から福井県へと直接入るルートで行きます。

 東海北陸自動車道の白鳥インターから、通称「油坂峠道路」と呼ばれる中部縦貫自動車道へ。中部縦貫道といっても、まだまだ部分開通で、縦貫と呼ぶには程遠いため、通称名で呼ばれることが多いです。

 白鳥と油坂峠を結ぶこの道路は、1999(H11)年4月26日に開通、2005(H17)年9月末より無料開放されています。そのため、見た目は高速道路なのですが、整備状態は一般国道と同じで、結構なボロボロ具合です。急カーブのトンネルを越えるとそこは福井県。気付くとそんな高速道路風な道路もいつの間にか終わり、完全な一般国道となります。

湖にかかる夢の架け橋

 そして見えてくるのは九頭竜湖。訪れたこの日は4月末。桜がちょうど満開で、その奥には「箱ヶ瀬橋」が見えます。この橋、実は夢の架け橋なのです。

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 箱ヶ瀬橋がここに架けられたのは1968(S43)年。パラレルワイヤースピニング工法と呼ばれる方式で建設されており、どう見ても本州四国連絡橋(瀬戸大橋)のミニチュア版です。実際に、将来の実現を目指した瀬戸大橋の試作橋として架けられ、この橋の実測データがその後の瀬戸大橋に使用されています。

 実際に、本州と四国が繋がるのは、それから19年後の1987(S62)年のこと。夢への一歩がこんなところに記されているとは。

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恐竜親子が駅でお出迎え

 そこからさらに15分ほど車を走らせますと、「道の駅・九頭竜」に到着します。ここは道の駅と鉄道の駅が同居しているという、正真正銘の「駅」です。そうです。こんな山奥にまで鉄道が走っているのです。

 先ほど、夢の架け橋ともいえる橋を見てきましたが、この鉄道はそれとは逆。夢が叶うことがなかった終点なのです。

 その話の前に、道の駅でちょっと休憩です。出迎えてくれるのは、そう、福井らしく恐竜です。

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 福井県では、恐竜の化石が多数発見されており、2000(H12)年には「恐竜エキスポ2000」が開催され、その時に「福井県立恐竜博物館」が開館しています。福井県は恐竜を観光資源として、全面的にアピールしているのです。

 ここは岐阜県側から見ると福井の入口。恐竜親子がお出迎えしてくれるのも納得です。

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 よく出来てるなぁ~と見ていたら、なんと、恐竜親子は声を上げて動き始めるではありませんか!。「こいつ...動くぞ...」。

 この恐竜親子、今年に入ってからパワーアップしたらしく、その結果がこれのようです。口をあける様子も実にリアルで、周囲で見ていた子どもたちは、大喜びする派と怖がる派に二分。肌の質感といい、口の中といい、やたらとリアル。さらに、目も合います。

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特産品で腹ごしらえ~

 お腹がすいたので、ここで腹ごしらえすることにします。駅前とはいえ、ここは山奥。周囲に飲食店を見つけることは出来ず、道の駅でそのままいただきます。この、道の駅九頭竜には生産物直売所と麺類コーナーがありまして、直売所でもお弁当などが販売されていましたが、麺類コーナーでいただくことにしました。

 相方が注文したのは、2005(H17)年11月7日に大野市に編入されるまで存在した、和泉村名物の昇竜まいたけを使った「舞茸そば」です。舞茸の食感とそばってどうなんだろう...と思いましたが、これが結構合いますね。

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 そして私が注文したのは、福井名物の「おろしそば」です。名古屋では、おろしうどんやおろしそばというと、のりをかけることが多いのですが、福井のおろしそばには決まってかつおぶしがかかっていまして、こちらもどうなんだろう...と思ったのですが、これはおいしい!さっぱりとしつつも、コシもだしもしっかり、ですね。

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1日5本でも大切な足

 では、道の駅に続いて、鉄道の駅の方を見ていきたいと思います。九頭竜湖駅は、JR西日本・越美北線の終点駅で、現在、越美北線はその名で呼ばれることは少なく、「九頭竜線」という愛称で呼ばれています。それには理由があります。

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 時刻表を見ると、なんと1日5本。しかも、そのうち終電は越前大野止まりです。ホームには「乗って残そう越美北線」ののぼり。九頭竜線の未来は果たして...。いえいえ、未来どころか、この九頭竜線には6年前、廃線の危機が訪れたのです。

 越美北線の過去を紐解いてみます。

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越美北線の「美」とは?

 現在はあまり使用されなくなった「越美北線」という名称ですが、「越」が表すのはもちろん越前の越。では、「美」は何かといいますとそれは「美濃」。当初は、福井駅と岐阜県美濃加茂市の美濃太田駅を結ぶ計画でスタートしているのです。

 越美北線は1972(S47)年12月15日にこの九頭竜湖駅まで国鉄が全線開通。一方、越美「南」線はといいますと、それよりも40年近く前、戦前の1934(S9)年に美濃太田-北濃全線が開通していました。

 越美線として繋ぐ計画があったため、この越美北線・九頭竜湖駅と越美南線・美濃白鳥駅の間は、国鉄バスが運行されていたのですが...。

 1987(S62)年4月1日に国鉄が分割民営化されると、越美北線はJR西日本に、一方の越美南線はその前年に第三セクターの「長良川鉄道」へと移行され、さらには越美線計画の名残であった、JR東海バスの九頭竜湖-美濃白鳥線も2002(H14)年に廃止され、高速道路が通じた一方で、公共交通としては福井県と岐阜県の間は分断されることとなったのです。

 そもそも、需要が無かったのでしょう。岐阜県と福井県の繋がりの希薄さがこのあたりに象徴されている気がします。いや、それとも、この鉄道が繋がってさえいれば、岐阜と福井の間に心の繋がりも生れていた...のかな。

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滅多に見られない?九頭竜線の車両が登場

 そうこうしているうちに、その1日5本のうちの1本が九頭竜湖駅にやってきました。この九頭竜湖駅までやってくるのはわずか1日5本ですが、越前大野まではその倍、1日9本が運行されています。

 ...。

一日9本って...と思うかもしれませんが、この九頭竜湖線は、今、走っていることが奇跡に近いのです。

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 九頭竜線の車両には2つのヘッドマークがつけられていました。ひとつは、越前大野城の築城430年祭をアピールする、うぐぴーとうめぴーのイラスト。そしてもうひとつは、この九頭竜線の開業50周年を祝うものです。

 当初は南福井から勝原の43.1キロの区間でスタートした越美北線。それは1960(S35)年のことでした。それから22年かけて全線開通を果たします。そして、廃線の危機が訪れたのはその倍、開業から44年の2004(H16)年のことでした。

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廃線の危機は物理的にやってきた

 九頭竜線に訪れた廃線の危機は、利用者の減少ですとか、債務超過ですとか、そういう問題ではなく、物理的にやってきたのです。そう、それは水害。

 2004(H16)年7月18日の福井豪雨で、九頭竜線の5つの橋梁が流されてしまいます。その橋の復旧だけで34億円がかかることとなり、それは、鉄道を新たに敷設するのと同程度の金額で、当然、存続が危ぶまれます。

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福井県の意地

 しかしです。総工費40億円をかけ、九頭竜線は華麗に復活するのです。その40億円の負担割合は、国が10億円、JR西日本が10億円、そして福井県が20億円となりました。復旧工事に着手されたのは、豪雨から1年以上が経過した2005(H17)年10月。結局、福井豪雨から3年弱が経過した2007(H19)年6月末、九頭竜線は全線開通を果たすのです。

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 多いところでも1日わずか9本しか走らない九頭竜線。そこに40億円、新たに路線を作るほどの金額をかけて復活させた福井県。もはやそれは意地のようなものを感じます。といいますか、収支で言ったら絶対見合うわけも無く、実際意地しかなかったのかもしれません。

 岐阜県側と繋がることは無かったものの、この九頭竜と福井を結ぶ九頭竜線こと越美北線は、大きな何かを乗り越え、今も走り続けています。

 実は今、この6年前の越美北線と同じ状況に陥っている路線が三重県にあります。JR名松線です。2009(H21)年10月8日、台風18号による被害で、一部区間の運休が続いています。福井県とJR西日本のように、三重県とJR東海はタッグを組むことが出来るのか...と言いたいところですが、JR東海は早々にバス輸送への切り替えを提案しており、このまま廃止としたいJR東海の思惑に対し、三重県や沿線自治体がどう動くのかが注目されています。

 あ、そうそう。この九頭竜線こと越美北線では、開業50周年を記念して、8月1日からラッピング車両を走らせるとのことですから、楽しみです。ただ、遭遇するには、あらかじめ運行時間を調べた上でのご訪問をオススメします。

 岐阜県と福井県の間にある壁は崩せなかったものの、福井県内の繋がりは強いことを感じたところで、さきほど、九頭竜線のヘッドマークに見た、築城430年祭で賑わっているであろう、越前大野城を見に行くことにしました。そこで見たものは、大型連休の祝日で賑わう観光地という姿ではなく...。

関連情報

道の駅 九頭竜

九頭竜湖駅(福井・大野市)MAP

九頭竜湖駅

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