12.モノレール おでかけレポ~全国・海外~

世界最長の未来はあの人の手中に-大阪モノレール

記事公開日:2010年5月13日 更新日:

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★世界最長モノレールは大阪に
★万博で大活躍した?してない?
★空港と繋がって成功・その空港もモノレールもあの人が...

 トッピーネットでは2007(H19)年12月「夢の鉄道モノレール」と題して、かつて、未来の移動手段として、夢と希望が詰まった公共交通という存在だったモノレールが今、どうなっているのかをレポートしたことがありました。

 ちょうどその時、日本で最も古い車両が現役で使われ続け、輸送手段として最古の存在で、この地方を走る唯一のモノレールである「名鉄モンキーパークモノレール線」の廃止が決まり、その1年後、この地方からモノレールは姿を消しました。

 当時取材した路線が横浜ドリームランド線、向ヶ丘遊園モノレール、多摩モノレール、そして名鉄モンキーパークモノレール線であったことから、未来の夢の乗り物だったはずのモノレールは、朽ちてゆくか、債務が累積していくか...と、暗いレポートばかりになってしまいました。

 しかしそれは、一方的な視点でしかないのではないか、ということで今回、別の、ギネスブックにも載っているモノレールに乗ってみることにしてみました。さすが、近年延伸するだけのパワーがあるモノレールは違うな!と思ったものの、終着駅で見たものは...。

世界一のモノレールなのです

 今回乗ってきましたモノレールとは、大阪市の北側を走る大阪高速鉄道の「大阪モノレール」です。大阪市の北東部にある門真市から、守口市、摂津市、茨木市、吹田市、豊中市を結ぶ「本線(大阪モノレール線)」と、途中の万博記念公園駅から分岐した「彩都線(国際文化公園都市線)」からなり、総営業距離は28キロ。モノレールでこれだけの距離を結んでいる路線は世界に他に無く、ギネスブックにも掲載されています。

 ということは、逆に考えると、これ以上の規模のモノレールは今は世界に存在しないということになります。かつては、新幹線の代わりに走らせようという壮大な計画まであったモノレールの最終発展形がここ、なのです。今のところは。

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きっかけは万博...ではありません

 分岐しているのが「万博記念公園駅」というところで、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、私はこのモノレールに乗るために大阪へ行ったわけではなく、先日書きました「太陽の塔」のレポート取材のために万博記念公園に行った際、乗ったというわけです。

 となると、大阪に関して予備知識の全く無い私は、ひょっとして万博がきっかけでこの大阪モノレールは敷設されたの?だから世界一なの?なんて思ってしまいますが、全く違います。

 この大阪モノレールが南茨木-千里中央間で開業したのは1990(H2)年6月のこと。大阪万博が開催されたのは1970(S45)年ですから、それから20年も経ってからのことなのです。では、千里というだけあって、千里ニュータウンの住民の足として敷設されたのかと思ったら、それこそもっと時代はズレていて、千里ニュータウンの初入居は1962(S37)年です。

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 現在、万博公園に行こうとすると、どうしてもこの大阪モノレールは外せないわけですが、では万博開催当時、万博会場へのアクセスはどうなっていたのかといいますと、阪急千里線が北千里駅と山田駅の間に「万国博西口駅」を設置、また、北大阪急行が千里中央駅から「会場線」を延伸し「万国博中央口駅」を設けていたのです。

 万博終了後、阪急は万国博西口駅を廃止、北大阪急行は千里中央駅を現在地に移転し会場線を廃止してしまったのでした。しかしこれは最初から決まっていたことで、会場線跡は中国自動車道の上り2車線となったのでした。

 かといって、モノレールと大阪万博は無関係だったわけではなく、モノレールは会場内の輸送手段として採用され、それをきっかけとして都市モノレールが整備されていったのです。もちろん、この大阪モノレールもそう。

 つまり、大阪万博の時には将来の乗り物として提示された展示物のひとつだったモノレールが、今は会場跡地と周辺を結ぶ実際の乗り物として運行されている、というわけなのです。

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大阪モノレールの未来

 大阪モノレールは、ギネスブックに載るほどの距離を走っているものの、まだまだ完成形ではありません。当初、大阪市の外側をぐるっと、なんと南側の堺市までをも結ぶという構想でスタートしたものなのです。

 現在でも、門真市から東大阪市への延伸が示されているものの、その実現の目処は全く立っていません。

 ひょっとして、この大阪モノレールも多摩モノレールと同じようにお荷物第3セクター扱いなの...?かというと今はそうではありません。かつてはそんな扱いだったのですが、2001(H13)年以降は単年度黒字となっているのです。それなら、延伸はともかくとして、この大阪モノレールの未来は安泰なわけですね。私が今までいくつか乗ったモノレールのなかでは、こんな明るい話題は初めてです。

 何がきっかけだったのか。それは門真市と反対側の終点まで行けばわかる、ということで乗ってみます。

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行き着いた先には...

 終点に現れたのは「大阪空港駅」。そうです、今いろんな意味で話題の伊丹空港こと大阪国際空港です。大阪モノレールがこの大阪空港に接続されたことで、阪急梅田から伊丹空港まで、29分で来られるようになったのです。

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 大阪空港駅にいますと、モノレールが到着するたびに、ビジネスマンがこれでもかというくらいに降りてきます。まさに生きているモノレール。かつて、名鉄モンキーパークモノレール線が開業した際のパンフレットにあった、モノレールからスーツを着た人たちがわんさか降りてくるという明らかに作られた風景が、ここでは現実のものとなっているのです。

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 駅をじっくり見ていて気になったことがいくつか。

 それは改札にある「○」「×」表示。大阪モノレールはIC乗車券にPiTaPaを導入しているので、「PiTaPa」と「ICOCA」を利用することができ、その2つには○がつけられている一方で、「Suica」には×がつけられています。それ自体はいいのですけど、使えないにもかかわらず、わざわざSuicaがロゴで書いてあるので、一瞬使えるのかと勘違いしてしまいました。使えないのにわざわざロゴなんですね...。

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路線全体を美術館に?

 そして改札内には、一目見ただけでは、いや、しっかり見てもその意図を理解することが難解な現在美術作品が置かれています。これは1990(H2)年から2001(H13)年にかけて開催された「国際現代造形コンクール・大阪トリエンナーレ」の入選作品など、関西の現代作家の作品や、大阪府が収集してきた美術作品を展示しているその名も「大阪モノレール美術館」というもので、

「大阪モノレールのすべての駅舎に設置したものです。さあ、大阪モノレールに乗って、世界の現代美術彫刻探検の旅に出かけましょう」

 とあるのですが...。

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 豊川駅と彩都西駅にはありません。

 この2駅は2007(H19)年3月19日に開業した最も新しい区間なので、忘れられているのか、それとも「もういいや...」的な発想で置いていないのかと思ったら、「順次展示する予定」とのことで、決して忘れているわけでも、なげやりになっているわけでもなく、最適な美術品を今、頑張って探しているところなのです!というポーズですよね?

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かなり身近な大阪空港

 さて、ではせっかく大阪空港駅まで来たので、伊丹空港こと大阪国際空港を見学していくことにします。大阪府豊中市、池田市、そして兵庫県伊丹市に跨るこの空港には、「大阪空港」「大阪国際空港」「伊丹空港」と呼び方が複数ありますが、正式には大阪国際空港です。

 国際空港となったのは1959(S34)年のこと。大阪の都心に近いメリットは大きかったものの、やはり都市化とともに騒音などで周辺地域との問題が発生。飛行時間の制限など運用面では難しさが出てきたのでした。

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 そこで登場するのが、海上に設けられ24時間体制での運用が可能な、1994(H6)年9月開港の「関西国際空港」です。国際線は関空へと移り、国内線も一部移管されたものの、大阪の中心部からの利便性において大阪国際空港の優位性は圧倒的で、結局国内線については以前と同じように運航されているのです。

 そのため関西のラジオでは、朝のワイド番組で飛行機の運航状況や空席状況を知らせるコーナーが、他の交通情報や列車運行情報と同じように設けられ、空港から音声で案内されます。大阪の人にとって、大阪国際空港がいかに重要な足になっているかがよくわかります。

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 大阪国際空港のターミナルは1969(S44)年供用開始であるため、その天井の低さなどは感じるものの、大改装が行われており、見た目に古さを感じさせることは無く、展望デッキ「ラ・ソーラ」は緑があふれ、休日ともなると多くの親子連れが飛行機見物に訪れ、賑わっています。

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大阪空港のこれから次第では...

 しかし、昨今報道でも話題になっていますように、関西圏にはこの大阪空港のほかに、関西国際空港、さらに2006(H18)年2月16日開港の神戸空港と、3つの空港が存在し、関西国際空港が減便になっていることから、大阪国際空港の廃止を視野に入れた検討なんて話が出ては撤回、また廃止論と二転三転。また、大阪モノレールについても完全民営化の検討もあります。

 先述の通り、大阪モノレールはこの大阪空港と接続されたことで黒字となったわけで、その前提が無くなってしまったら...と思うと、モノレールの未来の鍵は、この大阪空港が握っていると言うこともできます。いや、両方の鍵を握っているのが大阪府知事...というべきか...。

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 そして最近では、関西国際空港と大阪空港の経営を統合したうえで、経営権を民間に売却するなんて話も出ています。まだまだ流動的ですね。

 空港の話が固まらない限り、大阪モノレールの堺市までの延伸計画も着手できないという感じでしょうか。いや、例え空港の話が固まっても、大阪モノレールの延伸は...どうなんでしょ。

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 しかしそれにしても、この関西3空港の問題に比べて、名古屋圏は中部国際空港(セントレア)と名古屋空港でうまく棲み分けができていて、何も問題が無さそうだなと思っていたら、降って沸いたように日本航空が名古屋空港からの全面撤退を発表というわけで...。

 このまま行くと、名古屋空港は定期便がゼロになります。それってもう...空港じゃないよね。

 そういえば名古屋でも、名古屋空港まで新交通システムを延伸して利用客増を図るなんて話もありましたけど、ああ、その新交通システムはもう2006(H18)年に廃止されたんでしたっけね。

 大阪と名古屋。

 大阪と違って名古屋は都市規模が小さいから交通計画がうまくいかないと見るべきか、それとも、名古屋は見限る・見限られる決断が早いと見るべきか。この問題は対照的ですね。

関連情報

大阪モノレール
大阪国際空港(伊丹空港)

大阪モノレール・大阪空港駅(大阪・豊中市)MAP

大阪空港駅

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