13.大阪の今 おでかけレポ~全国・海外~

廃墟のイメージが現実に-フェスティバルゲート

記事公開日:2008年8月8日 更新日:

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 大阪にある、人の集まるスポット特集第2回目です。前回は、レトロな街並みが売りの新世界をご紹介しました。今回は、そんな新世界に隣接する巨大アミューズメントゾーンの今をお届けしようと思います。

 今から9年前、相方とやってきた際に訪れたそのアミューズメントゾーンは、多くの若者たちで賑わっていて、まるで別世界のような海底都市を模した大きな建物内をジェットコースターが走り、さらには芸人さんがライブでイベントをやっていたりしていて、思わず「さすが大都会大阪!」と言いたくなるものでした。

 それが今...。フェスティバルゲートへと9年ぶりに足を運びます。

タラッタくんは出迎えてくれるけど...

 地下鉄動物園駅のすぐ目の前。高さ45メートル、幅52メートルの巨大なゲートがそのアミューズメントゾーン「フェスティバルゲート」の入口です。8階建ての建物の中をジェットコースター「デルピス・ザ・コースター」のレールが大胆に駆け巡っていますが、一向にコースターが走る気配はありません。

 ギリシア語で「海」という意味の名が付けられた「タラッタくん」のイラストがお出迎えしてくれますが、人の気配も全く感じません。

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海底に沈んだ古代都市

 人の気配は全く無いのですが、普通に入場することができます。

 フェスティバルゲートは、「都市型立体遊園地」として1997(H9)年7月にオープンしたもので、ジェットコースターなどのアトラクションのほか、グルメ、ショッピング、ゲームセンター、シネマコンプレックスが一体となった施設で、総事業費約340億円をかけて建設されました。観光ガイドなどにも当然掲載され、入場無料ということで、9年前は大変な賑わいを見せていました。

 しかし、2001(H13)年にユニバーサル・スタジオ・ジャパンが開業すると状況は一変。特にこれといった直接的な影響があったわけではないはずなのですが、建物内にジェットコースターなどのアトラクションがあるフェスティバルゲートは、対抗するにも新しいアトラクションを導入することができず、ちょうど飽きられていた時期だったのか、施設全体に木枯らしが吹き始めます。

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 2004(H16)年2月、第3セクターだったフェスティバルゲート株式会社は破綻します。そう、この施設は第3セクターだったのです。

 コンセプトは「海底に沈んだ古代都市」で、ところどころわざとヒビが入っていたりするのですが、いまやそれは人工的なヒビなのか、本物のヒビなのかわからない状態です。

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リアルな廃墟

 その後も、元々市交通局の土地信託事業であったことから、大阪市交通記念館として再出発する計画が立てられたり、韓国系の企業が買収するといった話が出たものの、いまだに放置されていて、大阪市は今年中に新たな売却先を決めるとしています。

 現在のフェスティバルゲートでは、ジェットコースターなどのアトラクションは全く動いておらず、テナントもコンビニともう1社を除いて営業していません。ですので、建物の上の階へと上るエスカレーターやエレベーターは全く動いていません。

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 しかし、ふたつだけ利用価値があります。

 かつてフェスティバルゲートとのセットでオープンした、この先にある温泉施設「世界の温泉・スパワールド」は営業を続けていて、そこへの「通路」として利用されているのです。

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 通路としてのフェスティバルゲートの先に、好調に営業を続けているスパワールドや、大阪を代表する観光地である新世界、通天閣があるとはとても思えないほど、ここは陰気臭を放っています。

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 もうひとつの利用価値。それは、何も営業していない廃墟の遊園地にもかかわらず、大手を振って入場することが可能であるということです。ですので、現役の「廃墟」をリアルに体感できるという他に類を見ない遊園地となっています。

 陰気臭を放つ通路と廃墟型遊園地、これが今のフェスティバルゲートの利用価値です。

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にぎやかだった頃の面影

 施設内には、賑やかだったあの頃の面影が残っています。フェスティバルゲートのキャッチフレーズだった「そらもう、遊びまくりや」のポスターを見た時の切なさといったら...ありません。

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 すると目の前にはミニステージが。そういえば、昔ここで芸人さんのコントとかを見た記憶があるなぁと、9年前の記憶がよみがえります。フェスゲはこんなことになってしまったけど、あの時見た芸人さんは今も芸人さんなのだろうか。名前も覚えていないので、調べようも無いのですが、ふとそんなことを思ってしまいました。

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負の遺産

 このフェスティバルゲートの失敗により、大阪市は約380億円の負債を抱えました。総事業費以上です。そのうち200億円が公金から支出されていて、こんな廃墟を維持するにも毎月1,000万円以上がかかっています。

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 第3セクターだからダメだったとか、そういうことを言うつもりはありませんが、賑やかだった頃の姿を知っているだけに、現状との乖離に驚きます。あいりん地区と隣接しているのも不人気の要因だったと言われていますが、さすがにこんなところに住みたいとは思えないのか、それとも今も警備がしっかりしているのでしょうか、ドヤ街の人々やホームレスの姿を見かけることはありませんでした。

 名古屋では、名古屋港イタリア村が同じ道を歩むことになりそうですね。かつて、奈良ドリームランドの跡地に訪れた際に、

「廃墟というものは、廃墟になってどれほどの時間が経過したかは重要な要素ではなく、廃墟になることが決まった瞬間から廃墟となる」

 と書きましたが、このフェスティバルゲートについては、廃墟にもなりきれずまさに生き地獄状態で、これまで見た廃墟とは全く違う表情を見せてくれました。

 再び生き返るのか、そのまま地獄へ落ちるのか。既に200億円の公金が投入されたお祭りは、まだまだ続きます。

 人の集まるスポット紹介のはずが...いませんでした。次回は、必ず人がいるに決まっている、電車に乗ってみます。

取材協力

KAZ Communications

フェスティバルゲート(大阪・浪速区)MAP

34.650137, 135.504555

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