11.物語の現場へ あまのじゃくツアースペシャル

子どもに冒険をさせる親の勇気と責任-ムーミンな公園

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 いわゆる「キャラクター」と呼ばれるもののなかで、私が生まれて初めて好きという感情を抱いたのが「ムーミン」でした。当時はフジテレビが製作した「♪ねえムーミン、こっち向いて」という主題歌のアニメが再放送されており、そのキャラクターのかわいらしさに惹かれたものです。そして時は流れ、その十数年後にテレビ東京で「楽しいムーミン一家」という、トーベ・ヤンソンさんの原作を忠実に再現したといわれるリメイク版のアニメが放送されるようになりました。

 キャラクターはもちろんのこと、その世界観、美しい風景に一気に引き込まれ、原作の小説も何冊か読みました。そして、トーベ・ヤンソンさんの生涯を綴ったドキュメンタリー番組を見て、ヤンソンさんの行き方そのものにも興味を持ちました。そしていつかは、そのムーミンを生み出した、また、ムーミンが住んでいる舞台となっている、フィンランドへ行ってみたいという思いに駆られたのですが、なかなか簡単にいけるものではありません。

 ところがあったのです。ムーミンの世界を再現した場所が。埼玉県飯能市に。

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 今から10年前の1997(H9)年7月、当時テレビ東京のニュース番組に、「ニュース犬ブーニー」という、犬があちこちにレポートに行くコーナーがあり、そこで紹介されたのが、埼玉県飯能市に開園したばかりの「あけぼの子どもの森公園」でした。そこはムーミンの世界を取り入れた公園で、ムーミンの世界観を思い起こさせる風景が広がっていました。行ってみたいなぁとは思ったものの、名古屋からですとそう簡単にいける場所ではありません。しかし今回、思い切って十年越しの訪問をすることにしました。まあ、遠いとは言ってもフィンランドに比べれば近いものです。

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 西武池袋線で池袋から50分弱、飯能駅にやってきました。公園の最寄駅は元加治駅なのですが、そこにはタクシー乗り場が無いということで飯能まで来ました。飯能駅南口に停まっていた原市場タクシーに乗って一路あけぼの子どもの森公園へ。公園の周辺には市民体育館や市民球場、運動公園などもあり駐車場にはたくさんの車が止まっていました。タクシーを降り、両サイドを緑に覆われた坂道を登ってムーミンの世界へと足を進めます。この公園は「自然との共生・自我と自由の尊重」という理念を掲げていて、それはムーミンの物語と共通したものとなっています。案内看板もそれらしいデザインとなっていて、ワクワクします。

 すると、見えてきました。なんともいえない巨大なキノコのような形をした建物が。「ムーミン屋敷」です。ムーミンの家とはいささかデザインが異なりますが、これは訪れる人を家族の一員として暖かく迎える「家」をいイメージした建物で、ムーミンの家を再現したものというわけではありません。この日は平日でしたがたくさんの親子連れなどが訪れていました。家ですから、靴を脱いで上がります。あれ?フィンランドって靴脱ぐのかな。それ以前にムーミンは靴など履いていない。

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 中は吹き抜けになっていて開放感があります。地下1階は工房となっていて、1階はいこいの広場として暖炉があり、実際に使用されたすすの跡があります。レンガが崩れやすくなっているので触らないで下さいという張り紙が何とも...。建物をぐるぐる回りながら上へと階段を登ります。途中にはムーミンに登場するいろんなキャラクターの絵が。そこにはキャラクターの説明や、物語から引用されたセリフが書いてあるのですが、なかにはとても哲学的なものも...。たぶんここではしゃぐ子どもたちにはまだちょっとわからないでしょうね。

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 2階にはムーミンたちの小部屋があるのですが、これが小さい。ムーミンの実物ってそんなに小さいのかな?と思ってしまいます。いや、これはイメージですよね。スナフキンの身長が30センチほどなんてこと無いはず。しかしこの屋敷、いったいどこまで登れるのだろうと思うほどに登れます。本当にてっぺんまで登れます。しかもついている窓は全てユニークな形をしている上に、全て開閉することができます。さらに、どこに繋がっているのかわからないトンネルや、何のために存在しているのかわからない空間も。子どもにとっては大冒険となることでしょう。

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 もちろん、小さなお子さんにとっては危険な場所もありますが、それを見守るのが親の責任という、昔は当たり前のことでしたが、最近の公共施設としては珍しい文言が記されています。パンフレットにも、「冒険への挑戦が子どもの危険予知能力、危険対処力を育てていきます」「安全重視のあまり冒険遊びを奪ってしまっては、子どもの意欲や冒険心の芽を摘むことになりかねません」と書いてあり、私も全くそのとおりだと思います。私なんかの子どもの頃は、野山をかけまわって、擦り傷切り傷当たり前なんて時代でしたからね。でも、そういう体験をしないと、「危険」とはどういうことなのかが理解できない人間になってしまいますよね、確かに。

 子どもだけじゃなく、私たちのような大人でも久々にワクワク感を感じることができました。テーマパークのような与えられるものではなく、自分たちの足で前へ進む冒険のワクワク感。たくさんの子どもたちに味わって欲しいと思います。近くにあったらいいなぁこんな公園。

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 ムーミン屋敷の前には、ムーミン橋のかかる小川が流れていて、水あび小屋、わんぱく池へと続いています。この水あび小屋はまさにムーミン谷にある風景そのもの。スナフキンが橋の欄干に座って、ハーモニカを吹いていそうな風景です。まるでムーミン谷、まるでフィンランドです。汗ばむ蒸し暑さを除いて...。

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 わんぱく池をぐるっと回ると、小川の上流へと道が繋がっています。上流には滝があって見晴らし橋、デッキウォークといった散策路があるのですが、デッキウォークは危険ということで立ち入り禁止となっていました。冒険といってもやはり安全が確保されていない場所への進入はいけません。でも本当は、そういうところに入っていくことこそ、子どもというのは楽しいのでしょうけどね。

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 公園には他に、子どもたちが室内で自由に遊んだり、イベントが開催されたりする「子ども劇場」と、飯能産西川材のひのき丸太を使って作られた「森の家」があり、そこはムーミンの作者であるトーベ・ヤンソンさんの資料館となっています。

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 資料館の1階には、フィンランドの紹介や、現地のムーミングッズ、そして大阪の美術工芸家の手による紙粘土作品が展示されています。この作家の紙粘土作品はヤンソンさんが絶賛し、フィンランドにも展示されているのだとか。

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 また、トーベ・ヤンソンさんの生い立ちの紹介もあります。ムーミンが戦争を背景にして生まれたキャラクターだというのは、結構知られていますよね。

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 森の家の2階は図書室となっていて、ムーミンの原作はもちろんのこと、様々なムーミンの本や絵本、他にも子どもが喜びそうな本がたくさん所蔵されています。

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 そして公園の入り口には「あけぼの森の店」という売店があり、たくさんのムーミングッズが販売されています。店先にはニョロニョロの大きなぬいぐるみが。これって物語に登場する実物大サイズよりも大きいんじゃないですかね...。

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 ポストカードなどいくつか購入して、タクシーを呼ぶことにしました。元加治駅まで徒歩20分ほどということだったので、当初は歩いて帰ろうかとも思っていたのですが、公園をこれだけ歩き回った後にそれはさすがにきつい...。

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 ムーミンの世界をイメージした公園ということで、まあ景色がそれなりに似せてあるだけだろうと思っていたのですが、それだけではなく、その高い理念に驚きました。冒険こそが人生を豊かにする、まさにそうだと思います。冒険する勇気を持てなければ、厳しい人生を生き抜いていくことはできないような気がします。幼少期にこういった公園で遊んだことが、直接何かの役に立つということは無いかもしれませんが、幼い頃、こういった冒険心をくすぐる場所で、自分の足で一歩を踏み出す勇気、そして楽しさをインプットされていると、何か人生の壁に直面したときにも、それを何とかして越えようという思いが心の底から沸いてくるのではないでしょうか。

「危ないからやっちゃダメ」「やめておきなさい」「いけません」

 幼い頃にそんな言葉ばかりをかけられていたら、何かに挑戦すること自体がいけないことかのように思えて当たり前ですよね。過保護に何でも用意してあげて至れり尽くせりで育てた子に、学校を卒業したからと、いきなり自分の足で歩いて行けなんて言っても、それこそ無理な話でしょう。

 人生とはまさに冒険そのもの。幼い頃から子どもの冒険心をくすぐることが、その子の将来の成功に繋がるのかもしれません。

 まあ、私たちには子どもはいないどころか、まだ結婚もしていないので、いつか子育てをする時のためにと、心にとめておくことにします。ちょっと堅い話になってしまいましたね。次回は、ムーミンたちも食べているはずの、北欧料理をムーミンな空間でいただくことにします。

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あけぼの子どもの森公園(埼玉・飯能市)


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