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浦島太郎が玉手箱を開けた場所は実在した-信州・寝覚の床

記事公開日:2007年3月24日

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 トッピーネットでは昨年、山梨県のカチカチ山で昔話「かちかちやま」の考察をしたことがありました。昔話というのは、どれにも教訓や感受性を育てる要素が盛り込まれているものです。しかもそれは明快で、桃太郎にしても鶴の恩返しにしても、細かい部分には難しい要素があるものの、大筋の教訓は容易く理解できるのが昔話というものです。

 しかし、私と相方の間で何度も議論になり、ずっと主題さえ理解しきれない昔話があります。それは「浦島太郎」です。

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 浦島太郎は亀を助け、そのお礼にと竜宮城で乙姫の接待を受けます。そして帰り際、乙姫は「絶対に開けてはいけませんよ」と言って「玉手箱」というおみやげを浦島太郎に手渡します。しかし竜宮城から戻った浦島太郎は、玉手箱を開いてしまいます。

 すると箱から白い煙がもくもくと出てきて、浦島太郎はおじいさんになってしまい、物語はそこで終わってしまいます。良いことをしたにもかかわらず、ハッピーエンドにならないこの浦島太郎。二人で何度議論をしても埒が明かないので、そこにはどんな意味があるのか、浦島太郎が玉手箱を開けた場所とされている、長野県上松町に実際に行ってみました。

 上松町にある「寝覚の床」。木曽川の両岸に不思議な形をした岩が転がるこの場所は、国の名勝史跡天然記念物に指定された景勝地として知られています。木曽川の水流によって侵食された花崗岩が「自然の彫刻」を形成していて、まるで人工的に作られたかのような、屏風や床、そして亀のような形の岩があり、その間にはエメラルドグリーンの色をした水面が輝き、幻想的な空間を作り出しています。

 国道19号沿いにある町営の駐車場近くには展望台があり、その姿を遠くから眺めることができ、多くの観光客はそこで景色を楽しむわけですが、私たちの目的はその綺麗な景色を楽しむことではありません。浦島太郎に、なぜ玉手箱を開けてしまったのか、乙姫はなぜあなたに玉手箱を渡したと思うか、を聞きにきたのです。

 ですから、そこからまるで崖のような階段を下って、川面へと向かいます。国道沿いを走るJR中央本線をくぐり、勾配が急なために何度も折り返す階段を下りていきます。

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 途中、左手には現代彫刻やモニュメントを配した「寝覚の床美術公園」があります。なぜこんなところに彫刻が置かれているのか、デザイン宣言都市の名古屋市じゃあるまいし...と思ったのですが、その意味はすぐに理解できました。寝覚の床というのは自然の力による彫刻作品を楽しむところです。

 それに対比させる意味で人工的な彫刻が置かれているということなのでしょう。推測ですが。そして長さ30メートルにも及ぶ日時計は、移り行く時を象徴しているとのこと。時間の経過によって浸食された岩、そしていきなりおじいさんになってしまうという、時の流れが曲がってしまった浦島太郎...。なかなか意味のある美術公園でした。

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 美術公園を横目に、「いっぷく」と書かれた売店を過ぎると、いよいよ寝覚の床は目の前です。ここがなぜ「寝覚の床」と呼ばれているのかと言いますと、まず「床」というのは、まるで床のように平らに侵食されてしまった岩の形のことを指しています。そして「寝覚」とは、浦島太郎の言葉によるものだそうです。

 浦島太郎は玉手箱を開けておじいさんになってしまった瞬間、「まるでこれまで夢を見ていたようだ、目が覚めたような感じだ。」と言ったというのです。だから「寝覚の床」なのです。

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 すると目の前に、「屏風岩」「床岩」「亀岩」が見えてきます。屏風や床は平らなものですから、岩が侵食されてその形に似るのは自然なことかもしれません。しかし、ここにまるで亀のような形をした岩があるのは、浦島太郎と結びついてますます不思議な感じがします。もちろんこの亀岩も自然の造形美。誰かが作ったわけではありません。

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 そしてこの寝覚の床の中央には堂宇がポツンとあります。浦島太郎を祀った「浦島堂」です。あそこに行けば時を越えて浦島太郎に話を聞くことができるかもしれません。しかし、今いるこの場所から浦島堂へはどう見ても道は整備されていません。ごつごつとした岩が転がっているのみです。行き方を示す看板もありません。あるのは、上流でダムの放流があった際に鳴ると思われる警告サイレンのついた関西電力の看板のみです。

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 道路側から流れている滝が木曽川に流れ込んでいます。そこに架けられた小さな橋を渡ると、いよいよ本当に道はなくなってしまいます。そして「危険な箇所がありますので十分注意して下さい」という、上松町が設置した看板が置かれています。この看板が、行ってはいけない場所ではないということを証明してくれましたので、頑張って岩を越えることを決心します。

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 カチカチ山ではヒールのある靴を履いていたために苦労した相方も、今回は最初から運動靴なので大丈夫かと思いきや、ちょっとためらい気味。確かにこの岩場を越えるのは女の子にとっては勇気が要ることかもしれません。それでも岩場へと足を進めます。浦島太郎は私たちに何を教えてくれるのでしょうか。岩場をよじ登っていきます。そして浦島堂で見たものとは。なんとそこには、本当に時を越えた驚くべきものが残されていました。

 続きは次回です

関連情報

寝覚の床(上松町観光協会)

寝覚の床(長野・上松町)MAP

寝覚の床

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