02.ぶらり中部 おでかけレポ~全国・海外~

悲しい伝説に直結するサービスエリア-尼御前SA

記事公開日:2006年12月2日 更新日:

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 過日、所用で石川県の金沢市へと行ってきたのですが、その途中北陸自動車道に興味深いサービスエリアがあったのでレポートします。そのサービスエリアは悲しい伝説の残る岬へと通じており、さらにその岬にある遊歩道は、とんでもないところへと通じています。警告看板を無視して遊歩道を歩くとあなたも伝説になってしまう。そんな場所です。冬の日本海の荒波を見ながら伝説に触れてみます。

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 北陸自動車道は名神高速道路と接続する滋賀県の米原ジャンクションから、磐越自動車道などと接続する新潟中央ジャンクションを結ぶ476.5キロの路線です。普段、東名や名神を走りなれている名古屋っ子にとっては、交通量が少なく感じるとともに、サービスエリアおよびパーキングエリアの無さにビックリしてしまいます。サービスエリア案内にも「次のサービスエリアは61km先」といった表示がつけられています。それでも休憩する人は多いことから、サービスエリアの混雑具合は逆に東名や名神よりも激しく感じます。

 滋賀県から福井県へ。左手に市街地、右手に山並みを見ながら進んでいきます。そして石川県に入り、加賀インターチェンジを過ぎると「尼御前」というサービスエリアがあります。米原から140キロ弱のところです。名古屋近郊のサービスエリアのように、民間開放でチェーン店が立ち並ぶ...という風情ではなく、一昔前のサービスエリアの佇まいを残しています。近鉄が経営するレストランやスナックショップがあります。その最も右手にトイレがあるのですが、そのトイレの横から伝説の岬へと歩道が続いています。

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 歩道を歩いていくと、厳重に歩行者しか通さないようになっている柵を通ってサービスエリアの外に出る格好になり、その先に尼御前公園があります。海岸に松並木があり、もの悲しい雰囲気が漂っています。公園に入ると尼さんの像が。この像こそ、尼御前岬の名前の由来となった尼御前です。その昔、源義経が兄である頼朝の怒りを買い、都を追われて奥州平泉の藤原氏の下へと逃れようとこの地を訪れました。その従者のなかにいた一人の尼、それが尼御前です。

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 尼御前はこの岬から見える「安宅の関」についての噂を耳にします。それは安宅の関の取締りがものすごく厳しいというものです。そこで尼御前は義経の足手まといになることをおそれ、義経の無事を祈ってこの岬から身を投げてしまうのです。その伝説によってこの岬はいつしか尼御前岬と呼ばれるようになり、1973(S48)年に北陸自動車道が開通しサービスエリアが設けられると、尼御前サービスエリアと名づけられたとのことです。

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 義経が安宅の関を通る際のエピソードは歌舞伎の「勧進帳」という演目になっています。義経は弁慶を先頭に歩かせ、山伏の格好で関所を通り抜けようとします。しかし怪しいと感じた関守に止められると、弁慶は、ありもしない霊場再建の寄付集めを目的とした勧進帳を読み上げて、さらに義経を杖で殴るという演出を加えて関守を欺き、見事安宅の関を通り抜けることに成功します。それが1187(文治3)年のことと伝えられています。読み上げたといっても実は全てアドリブで、弁慶は白紙を見ながら台詞を唱えたそうです。安宅の関跡には「勧進帳ものがたり館」など観光施設が整備されています。ちなみに、頼朝は母親が熱田宮司の娘であり、里帰りした熱田で頼朝は生まれたという説があります。義経とは異母兄弟です。

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 さて、この尼御前岬についてですが、尼御前岬を基点として安宅の関跡まで、中部北陸自然歩道「安宅の関勧進帳のみち」として12.4キロの自然歩道が整備されています。歩くと3時間半ほどかかります。日本海の荒波は容赦なく崖を削り、海岸線は海食された奇岩が並んでいます。海食は現在も進行しています。それは海岸線へ行くとすぐにわかります。

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 尼御前公園内の遊歩道の一部には、通行禁止区域があります。理由はがけ崩れです。見ると歩道には亀裂が入り、今にも岬自体に亀裂が入り、歩道からまっさかさまに荒波へと吸い込まれてしまいそうな感じです。そのため、岬の先から日本海を眺めることができません。どうしても岬の先に立ちたい方は、尼御前の後を追う覚悟が必要です。

 サービスエリアと直結されている尼御前岬。この岬の行き着く先は天国。尼御前サービスエリアは天国に直結したサービスエリアということができます。

取材協力

KAZ Communications

尼御前岬(石川・加賀市)MAP

尼御前岬

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