★JRは撤退するけど運行は続くのです
★増便+カード利用でサービス水準アップ!
★え?「実験的」ってどういうこと?
JR東海バスの完全撤退で、地元は困っているのかと思いきや、実は便利になるという不思議。
この9月30日をもって、路線バス事業から全面撤退するJR東海バス。かつての国鉄バス発祥の地である、瀬戸市のJR東海バス路線を3回にわたってシリーズでレポートしています。今回は3回目。
前回は、国鉄岡多線の代替バスとして誕生した、我が国初の省営バス路線の面影が残る、「瀬戸北線」をぶらりと歩いてみました。今回は、JR東海バス廃止後の瀬戸を考えます。
JRは撤退するけど運行は続く
今回廃止となるのは、JR東海バスのどの路線ということではなく、JR東海バスが路線バス事業そのものから撤退するわけで、現在走っている瀬戸市内3路線、春日井市内2路線の全てが失われる...のかと思いきや。
大曽根と瀬戸みずの坂を結んでいる「ゆとりーとライン」については完全廃止となるのですが、それ以外の4路線は名鉄バスが事業を継承することになっているのです。あの、路線バスを移管したり廃止したりするニュースばかりが聞こえてくる名鉄バスが引き継ぐというのですから、驚きです。
サービス水準を向上
名鉄バスに運行が引き継がれても、今年度いっぱいは回数券も利用できるように配慮するそうです。さらに、「広報せとNO.1143」によりますと、引き継ぐだけではなく、瀬戸北線に関しては平日の2本増便、瀬戸循環線については愛知環状鉄道中水野駅への乗り入れで、サービス水準を向上させると同時に、名鉄バスの赤津線も3往復増便になるとのこと。
さらに、名鉄バスの運行になることで、SFパノラマカード、トランパスが利用することができますから、カード購入時のプレミアムの恩恵が受けられると同時に、名鉄電車との90分以内の乗り継ぎ時に割引も受けられます。普通バスカード、昼間割引バスカードもお得です。
ただ...気になるのが...
まあ、カードの割引は他では当たり前のことなので驚かないですけど、事業継承そして増便には驚きを隠せません。どうしちゃったの名鉄バス、という気もしますが、広報には気になる文言もたくさん。
「市が運行経費の一部を負担」
まあ、これは良しとしましょう。もし、この路線がコミュニティバスに継承なんてことになったら、それこそ本数は激減、通勤・通学には使えないなんてことになってしまいますからね。経費負担してでも残すことには理解できます。
それよりも、かなり気になるのはこれ。
「実験的にサービス水準を向上させ、市民のみなさんにより利用してもらえるような取り組みを進めていきます。」
実験的?
実験的ってことは、増便は恒久的に約束されるものではないということですよね。
もっと気になるのは、この継承により、尾張瀬戸と新瀬戸の間では、名鉄瀬戸線と名鉄バスが全く同じ場所を併走するということになるのです。となると、瀬戸北線については、尾張瀬戸発着でもいいんじゃないの?という動きになるのは当然のような気がするのです。
果たして、いつまで名鉄バスがJR東海バスクオリティのまま、運行を続けてくれるのかは、正直未知数ですよね。
JR東海バス跡を濁さず
JR東海バスが掲示している、「路線バス廃止及び新たなバス運行のご案内」にはこうあります。
「長らくのご利用ありがとうございました」
本当に、長らくですよね。我が国の国鉄バスの歴史と同じ年数だけ、瀬戸を走ってきたわけですから。
「引き続き(名鉄バスを)ご利用頂きますようお願い申し上げます」
立つツバメ、跡を濁さず。ですね。
ただ...そのツバメのバスの後に登場する、赤いバスがいつまで運行してくれるかは、瀬戸の人々の使い方にかかっているというわけですね。あくまでも、サービス水準を維持・向上するのは「実験的」なのですから。しかも、最後までこの路線を「発祥の地」として守ってきたJR東海バスと違って、名鉄は他社から譲り受けただけの路線。思い入れも何もないでしょうしね...。