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犬山を走る元祖!跨座式モノレール!でも廃止決定でサヨナラ..名鉄.モンキーパーク

記事公開日:2007年12月18日 更新日:

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 我が国で、常設のモノレールが初めて走ったのが、今からちょうど50年前の1957(S32)年12月17日。上野動物園でした。それに合わせたわけではなかったのですけれども、このトッピーネットでは、偶然にも「夢の鉄道だったはずのモノレール特集」をお届けしています。

モノレールが走り始めて50年

 欠陥品で運行を休止してそのまま消え去ってしまった「ドリームランドモノレール」から、結果としてマイナーな形式を採用してしまったために修理不能になり、モノレールとともに遊園地までもが無くなってしまった、「向ヶ丘遊園モノレール」、新たな路線として華々しくデビューしつつも、債務超過という重い荷を乗せて走る「多摩モノレール」、そして50年前からある「上野動物園モノレール」をシリーズでご紹介してきました。

 しかし...どれも何か哀愁ただようものばかりでした。そこで、

・最も古い車両が現役で使われているモノレールはどこか
・輸送路線としてのモノレールとして最も古いのはどこか
・現在も他の路線で活躍している形式を最初に採用した路線はどこか

 を探したところ、その3つを兼ね備えたものが名古屋近郊を走っているということで、名古屋に帰ってきました。さっそく乗りに行きましょう。しかし、そこで歴史とロマンを感じるつもりが、最も深い哀愁を感じることになります。

時代の先駆けとなったモノレールは愛知・犬山

 犬山市の名鉄犬山遊園駅にやってきました。今回は、やっぱり地元民のお話を聞きながら乗ろう、ということで、この犬山のすぐお隣に住んでいる相方に同行をお願いしました。犬山遊園駅はその名のとおり、名鉄が運営する遊園地「日本モンキーパーク」の最寄り駅となっています。この犬山遊園駅とモンキーパークの「動物園駅」を3分で結んでいるのが、名鉄「モンキーパーク・モノレール線」です。

 モンキーパークはかつて「犬山ラインパーク」という名前だった記憶があるので、相方に聞いてみますが、さすがにリアルタイムでは知らないとのこと。それもそのはず、改称されたのは1980(S55)年ですから、相方の記憶にあるはずがありません。もちろん、モノレールの歴史はそれよりも古く、かつては名鉄ラインパークモノレール線として運行されていました。

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犬山遊園駅で乗り換えて…

 犬山遊園駅では、名鉄の電車よりも上の位置にモノレールがあります。開業は、上野動物園に遅れること約4年後の1962(S37)年3月21日。上野動物園のモノレールは園内の移動手段であり、輸送を目的としたアクセス路線としてのモノレールとしては、この犬山が日本初です。また、上野は懸垂式のため、跨座式のモノレールとしてもこの犬山が日本初です。

 ただ単純に日本初と言い切れないところが、いかにも名古屋の鉄道会社っぽくていいですね。でも、大々的にその日本初をアピールしているわけではないところが、日本初が大好きな名古屋らしからぬ奥ゆかしさ。

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 相方は、犬山遊園駅で怖い目にあったことがあるといいます。それは夜のこと。この駅はモンキーパークの最寄り駅ということで、おサルさんたちの像が置かれているのですが、小さい頃に夜それを見たときには、かなり怖かったとのこと。確かに...リアルすぎる。

 犬山遊園駅からではなく、途中駅の成田山にお参りをしてから、モノレールに乗ることにします。

途中駅の成田山駅から乗車してみます

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 犬山遊園駅と動物園駅の間には、成田山名古屋別院大聖寺への参詣者が乗降するための「成田山駅」があります。このお寺は、千葉県成田市にある大本山成田山新勝寺の別院で、1933(S28)年11月3日に開創されています。東海36不動尊霊場第1番の札所にもなっていて、初詣には多くの参詣者が訪れます。自動車の安全祈願でも良く知られています。

 私たちが訪れたのは、12月の雨が降る平日だったにもかかわらず、お参りにいらっしゃる方がいました。この近くに住む相方にとっては、初詣と言って真っ先に思い浮かぶのがこのお寺、というくらいに身近な存在のようです。

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 さて、モンキーパークモノレールは、区間運賃ではなく均一運賃となっています。どの区間でも1回乗車すると150円です。ですので、犬山遊園駅から乗っても、成田山から乗っても片道150円です。お参りを済ませてから、動物園へ行くために切符を買います。

 この路線は、自動改札機も無く、両端の駅では運転手さんが切符を回収するわけですが、当然、成田山駅は中間にあるために、運転手さんがそうしている暇はありません。ということで、駅員さんがいらっしゃいます。

 往復切符を買おうとすると...。

モンキーパークがお休みで…

「今日、モンキーパーク休みだけど。」

 と言われてしまいました。でも構いません。モノレールに乗りにきたのですから。

 すると、「ああ、これに乗りに来たんだね。」と、にこやかに応対していただけました。切符には、モノレール乗車のためだけのものではなく、モンキーパークの入場券とセットになっているものがありますので、乗車の際にはご確認ください。

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 では、乗ってみましょう。まず目に入ってきたのは「HITACHI-ALWEG」の文字。このモノレールは、日立アルウェーグ式と呼ばれるもので、コンクリートのレールの上を、空気の入ったゴムタイヤで走行するというものです。この方式は、現在のモノレールの主流となっていて、1964(S39)年に運行を開始した東京モノレールはそのまま採用。その後は規格が統一され、日本跨座式として、先日乗車した多摩モノレールにも、現在我が国で最新のモノレールである、舞浜リゾートラインにも採用されています。

 メーカーが無くなって、修理不能に陥った、向ヶ丘遊園モノレールのロッキード式モノレールをベータのビデオデッキに例えるならば、名鉄モノレールはまさにVHS。しかもその1号機と言うことができます。

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 しかも驚くべきことに、現在運行されているのはその1号機。1962(S37)年から走り続けている車両なのです。ですから、当然冷暖房はありませんし、先ほどの、日立アルウェーグといった銘板はそのまま残されているというわけです。

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見ざる言わざる聞かざるは…

 しかし、座席のシートはモンキーパークのイメージに合わせて、おサルさんのカワイらしい図柄になっていて、古さを感じません。どうやら改装されたようです。確かにカワイイ図柄だけど、見ざる言わざる聞かざるってここじゃないでしょ(笑)。

 2006(H18)年から、日本モンキーパークにはモンパ君というキャラクターがいますが、その絵にはなっていません。改装したのはもう少し前のようです。

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 成田山からは山の茂みの中をモノレールは走っていきます。車両は3両編成で、かなりの人数を運ぶことができそうです。しかし、休園日の遊園地に向かうモノレールですから、当然、乗客は私たち2人のみ。でも、成田山までは参詣者が2人乗っていました。

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 山の茂みを越えて、目の前がぱーっと開けたら、終点の動物園はもうすぐ。

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 モンキーパークに到着です。と言っても、この日は休園日。この駅は改札の外側が遊園地になっているので、休園日は改札の外に出ることはできません。自動的に折り返し戻ることになります。

休日なので折り返しで

 当然、乗客は私たちだけです。

 すると運転手さんに話しかけられました。「今日はこれに乗りに?」と。

 その旨を伝えると、「もっと長い路線だったらいいんだけどねぇ。でも、往復だからね...。」と、成田山からの往復わずか計4分で、往復切符2人分600円であることを申し訳なさそうに確認し、「ゆき」の分を回収されました。

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 そして再び成田山へと戻ってきました。私たちが降車する際、成田山駅からの乗客はいませんでした。すると、成田山駅の駅員さんが我々を待ち構えていて迎えてくださいました。遊園地がお休みなわけですから、当然、この便で戻ってくることがわかっていたわけです。

「どうだった?もっと長い路線だったらいいんだけどねぇ。」

 と、運転手さんと同じことを言われてしまいました。

 相方は、家の近くの遊園地ということで、幼い頃はしょっちゅうモンキーパークに来ていたようで、その都度このモノレールに乗っていたとのこと。懐かしさいっぱいといった感じでした。私と相方は、2人とも名古屋市生まれなのですが、育った地域が違うので、私はこのモノレールについて、あまり記憶がありません。むしろ東山動物園のスカイビュートレインの方が馴染み深いです。ちなみにあれは、モノレールとはいえ遊戯施設です。

日本のモノレール界の元祖は…そして

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 日本のモノレール界の元祖といえる、名鉄モンキーパーク・モノレール線。我が国で最も古い車両であるにもかかわらず、きちんと整備され、なおかつ改装もされていて、大事に運行されているということがよくわかるものでした。

 このモノレールが、今、日本国中で走っているモノレールの祖先であり、ここから日本のモノレールの歴史は始まったのだと、感慨深い時間を過ごすことができました。途中駅から乗車したために、その感慨深い時間は往復でわずか4分弱でしたけれども。

 モノレールの元祖は名古屋(鉄道)にあり!

 と、我が国で常設のモノレールが走り始めて50周年の今日、この文章を書いていましたら、何ともいえないタイミングでNHKテレビからあるニュースが聞こえてきました。

廃止が決定に

「名鉄、モンキーパーク・モノレール線を廃止」

 近年利用者数が減少しており、昨年度は8,200万円の赤字。運行は来年の12月27日までで、翌日廃止とのこと。

 モノレール。それは、遊園地へのアクセスというだけの存在ではなく、遊園地へ入る前のアトラクションとして、子どもたちの夢を運ぶ乗り物として各地に生まれました。しかし、時代は移り変わり、レジャーは多様化し、遊園地へと足を運ぶ人々が減っているだけではなく、もはやモノレールという乗り物自体にも、冒険心や目新しさを感じさせるものが無くなってしまい、輸送という本来の目的以外の要素をもったモノレールは、次第に姿を消していく運命ということなのでしょうか。

 現在、我が国で走っているモノレールは11路線。これが来年には10路線になるわけです。

 その昔、我が国にはもっと多くの数のモノレール建設計画がありました。しかしほとんどは計画倒れになっています。やっぱりレールがひとつでは、倒れやすく安定しないものなのでしょうかね...だなんて、用意していたオチも空しくなるほど、名鉄の廃止のニュースはショックでした。

 駅員さんや、運転手さんがとても親しげで優しかった分、寂しさが強く残りました。

関連情報

モノレール線 | 名古屋鉄道
日本モンキーパーク

名鉄モンキーパークモノレール線(愛知・犬山市)MAP

35.387046, 136.948580

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