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夢の空港アクセスを荒波が襲う…期待から不安へ-津なぎさまち

記事公開日:2007年5月27日 更新日:

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 今回は、津の新しい玄関となったスポットをご紹介します。2年前の2005(H17)年2月に開港した「津なぎさまち」です。

 津なぎさまちは、同じく2年前に開港した中部国際空港(セントレア)と、津をわずか40分の高速船で結び、三重県の人々の旅行の形態を変え、三重県への観光の形も大きく変える可能性を持つということで、大きな期待を背負った港として誕生しました。しかし今、その期待とは裏腹に、暗雲がたちこめようとしています。津なぎさまちを取り囲む環境は、この2年間で期待から不安へと変わろうとしています。一体何が変貌したというのでしょうか。

空の玄関としての津のなぎさまち

 津はその昔、安濃の港という意味で「安濃津」と呼ばれ、その安濃津の「津」が現在の津の地名の由来となっています。しかし1498(明応7)年、東海地方を襲った明応大地震によって津は港の機能を失ってしまいました。ちなみにこの時、浜名湖は海と繋がってしまいました。それほどまでにこの地方に大きな影響を与えた地震だったのです。

 それから600年以上が経ち、伊勢湾を挟んで津の対岸に中部国際空港(セントレア)が建設されることとなり、その空港と津を船で結ぶ玄関として、国、三重県、津市が連携し、「津なぎさまち」を誕生させたのです。

 津なぎさまちとセントレアを結ぶのは「津エアポートライン」の高速船「フェニックス」と「カトレア」。1時間ごとに1日15往復運航されています。運賃は大人が1,890円、小人が950円(片道)となっていて、所要時間は40分。車や鉄道で行くのと比べて格段に速く、加えてこれまでの名古屋空港へ行く所要時間を考えると、この40分というのは驚異的で「津が世界と繋がった」という、当時言われた表現は決して大げさではありませんでした。

 実際に愛知県内の内陸にある街よりも、津のほうがアクセスが良いという状態になったのです。

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新しい一つの街になるはずだった

 津なぎさまちは無料駐車場を完備しており、また、周囲は海水浴場という環境のとても良いところで、さらになぎさまちには、イタリアンレストランや喫茶店、レンタカーショップに日本料理店、バー、カフェ、そして貸しホールまでが備えられており、まさしく新しいひとつの「街」としてスタートを切ったのです。

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 津は市街地が海岸に近く、津駅からこの津なぎさまちまでバスでわずか10分、そして無料駐車場があることで、かなりの利用が期待されました。また、遠く全国や海外から三重県を訪れる観光客の窓口としての期待も高まりました。しかしです。

え?四日市にも就航?松阪も?

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 そんな順風満帆と思われた津なぎさまちに、じわりじわりとライバルが現れ始めたのです。

 三重県からセントレアへの船のアクセスは、2005(H17)年の開港当初、この津エアポートラインと鳥羽と常滑を結ぶ伊勢湾フェリーの2つのみでした。ライバル関係にあった伊勢湾フェリーは翌年の2006(H18)年3月になると2往復に減便となったのですが、その翌月、2006(H18)年4月にもうひとつのライバルが現れたのです。

 そのライバルとは、四日市浜園旅客ターミナルとセントレアを35分で結ぶセラヴィ観光汽船の「シーワープ」です。四日市は三重県内最大人口を誇る都市です。しかも1日10往復と便数も豊富。そしてなぎさまちと同じく無料駐車場を完備しているのです。しかしそれで終わりませんでした。

 さらに南勢の松阪から2006(H18)年12月に「松阪ベルライン」が就航し、1日7往復の運航を始めたのです。これが津エアポートラインに大きな打撃を与えます。

 四日市の場合は津よりも名古屋に近いので、セントレアへは海上ルートと陸上ルートと利用する人が分かれていたのですが、津よりも名古屋から離れている南勢地域の人々は、それまでほとんどが津エアポートラインを使っており、その客をごっそりとベルラインに持っていかれてしまったのです。加えて、三重県でもとりわけ観光集客力を持つ伊勢志摩や鳥羽へ行くのには、津よりも松阪の方が近いということで、観光客需要も奪われてしまったのです。

 この競争の激化により、先述の伊勢湾フェリー鳥羽-常滑航路は結局2007(H19)年3月末で廃止となりました。

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伊勢も…ってそんなに需要ある?

 ところが、それで終わらないのです。昨年まで、NPO法人が実験的に夏場の週末のみ運航していた、伊勢とセントレアを高速船で結ぶ構想が、四日市で運航しているセラヴィ観光汽船によって実現されようとしているのです。これがもし実現すると、セントレアと三重県とを結ぶ海上ルートは、四日市、津、松阪、伊勢の4つが存在することとなり、競争が激化するのは明白です。

 人口の多い四日市、観光地が近い松阪、伊勢と比べると、津は県庁所在地でありながらも苦戦を強いられる可能性が高いと思われます。

 伊勢湾は比較的穏やかな海ですが、これから津エアポートラインは大きな荒波に揉まれることとなりそうです。4つの船による激しすぎる戦いによって、どれも沈没といったことにならないよう、うまくやって欲しいと思うのですが。

 でも、はっきりいって羨ましいです。私は愛知県民にもかかわらず、山奥に住んでいるので空港へのアクセスは本当に大変。バスに乗ってさらに乗り換えて乗り換えて...ですから。それに比べたら津は船で40分という速さに加えて、さらに何泊停めても駐車場代が無料って...。

 しかし難点もあります。津の人は海外旅行をする場合、その日の海が穏やかであることを祈らなければならないのです。飛行機は飛ぶのに荒波で船は欠航...という悲しい事態もあり得ますからね...。

 今後も、三重県とセントレアを結ぶ海上アクセスは、様々な意味で注目です。

関連情報

津なぎさまち
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津なぎさまち(三重・津市)MAP

津なぎさまち

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