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TOICA(トイカ)モニターレポート-本当にスムーズ!?

記事公開日:2006年10月18日 更新日:

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 先日の記事で、JR東海の非接触自動改札システム「TOICA(トイカ)」について簡単にお伝えしましたが、今回はモニターの方の協力を得て、実際に同行してJRを利用してみました。モニター募集から実際の使用感、そして将来の展望をお送りします。

東海道線の改札がIC対応に

 9月30日より、JR東海道線の岐阜-刈谷間、そして中央線の名古屋-春日井間のうち22駅の改札に「IC」と書かれたものがお目見えしました。予めお金を入金(チャージ)しておいたTOICAのICカードをこの部分にかざすだけで、電車の乗車料金が自動的に清算され、改札を通ることができるシステムです。

これまでのように切符を買う必要も無く、またカードを改札機に挿入する必要も無いどころか、財布から出さずとも財布をかざすだけで精算が終了するというものです。

本運用を前にしたモニターテスト

 本運用は11月25日からを予定していて、現在は約800人を対象としたモニターテストが行われています。私自身はモニターでは無いのですが、モニターに当選された方に同行取材をする機会に恵まれました。

 モニター募集が行われたのは今年の7月25日から8月18日。その間に募集人員の10倍にあたる約8,000人への応募があったとのことです。当選者にいきなりICカードが送られてきたわけではなく、最初は「当選通知書」と「モニター同意書」、そして「TOICAご利用案内」の冊子が送られてきました。その同意書にサインをして9月20日までに返送した人に、今度は配達記録郵便でTOICAのカード現物が送られてきました。

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チャージしてあるためか配達記録郵便で

 届いたのは白地に水色の波が描かれたTOICAのカードとモニターアンケート用紙。モニター期間は9月30日から10月29日の1ヶ月間で、その使用感をアンケートに答えて11月12日までに返送することで、JR東海はモニターテストの結果を踏まえて本運用に入るという段取りになっています。

カードには予め1,500円分の利用可能金額がチャージされていたことから、現金と同じようなものなので配達記録郵便で送られたのでしょう。モニター期間終了から本運用までは1ヶ月ほどありますが、モニターはその間に駅でこのモニター用カードを返却することになっており、その場で清算され現金が返却されることになっています。

カードには赤字で「モニター用」という字が印刷されています。なお、謝礼としてはその1,500円と、アンケート返送時に記念品が贈られることになっています。

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実際にTOICAで乗車してみます

 ではTOICAのカードを持って実際に駅へ行ってみましょう。TOICAを改札機のICと書かれた部分にかざすと、改札が開き、液晶パネルには「残額680円」「SF利用」という文字と、TOICAのカードのイラストが表示されます。入場の都度、残額を確認することができます。そして出場の際には、加えて「引去額」が表示されます。

 私は切符を買って同行したのですが、やはりカードをかざすだけという使用感は見ているだけで爽快。JR東海は導入していませんが、磁気プリペイドカードを改札機に挿入するのとは全く感覚が異なります。まるでお金を支払っていないような気がするのは、あくまでも気のせいです。

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 駅には既にTOICA用の「チャージ機」が置かれていました。この機械ではお金を入金できるだけではなく、利用履歴も見ることが可能です。ポケットの部分にTOICAを入れます。差し込むのではなくカランという感じで本当に入れるだけです。カードフォルダに入れたままでも大丈夫です。すると液晶画面にカードの残高が表示されます。

 そこで「利用履歴」のボタンを押しますと、それまでにそのカードを利用した日付や利用した駅が全て表示されます。入金履歴もわかります。利用履歴ボタンを再度押すことで、なんとプリントアウトも可能です。お金が自動で決済できスムーズに改札が通れるという利点のほかに、JRの利用履歴がわかるというのも画期的です。まあ、なかにはわかっては困る人もいるかもしれませんが。

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チャージをしてみよう

 ではチャージしてみます。お札の投入口は全ての紙幣が使えます。2000円札も使用可能です。お札を入れるとそのままチャージされるわけではなく、お金を入れて「¥1000」「¥2000」「¥3000」「¥5000」「¥10000」のボタンを押す格好になります。

 ですので、お釣りを受け取ることも可能です。TOICAには最大で2万円を入金することができます。紙幣を入れて「¥1000」のボタンを押すと、一瞬だけポケットが閉まります。書き込みの際だけは抜き取りができない状態になるというわけです。でも本当に一瞬です。本当にこれでお金が入ったのかと心配になるほどです。領収書の発行ももちろん可能です。

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まずはこのエリアからサービスイン

 11月25日のサービス開始時には東海道線の関ヶ原-二川間、中央線の名古屋-中津川間、関西線の名古屋-四日市間、そして武豊線の大府-武豊間の計74駅で利用可能となり、定期券もTOICA対応のものが導入されます。定期券にもプリペイド機能が一体化します。実際のカード発行には500円のデポジットが必要となりますが、カード返却時には返金されることになっています。

 JR東日本にはSuicaがあり、既に首都圏をはじめ仙台や新潟でも導入されています。またJR西日本のICOCAは近畿地方で導入されており、SuicaとICOCAは相互に利用することが可能になっています。

 Suicaは東京モノレールやりんかい線、ICOCAは私鉄線を含めて大阪近郊ほとんどの路線で利用可能となっていますが、TOICAは今のところJR東海の単独運用となり、名鉄や地下鉄、JRの他社線で利用することはできません。ただ、方式はJRの他社と同じであるため、将来的には相互で利用が可能になるものと思われます。というか、方式が同じだからできないようにする理由が無いですよね。

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相互利用は2008年をめどに

 SuicaやICOCAとの相互利用は再来年を目標としており、また、名鉄と地下鉄も2010(H22)年にはICカードの導入を予定しており、将来の共通化については話し合いの場を設ける方向にはなっているようですが、まだ明言はありません。名古屋には磁気カードによる共通ストアードフェアシステム「トランパス」があるのですが、名鉄はまだこのトランパスを全駅に拡大している段階で、ICカードは先の先といったところです。

 JR東海はこれまで、改札を通れる磁気カードシステムを一切導入してきませんでした。トランパスにも参加しませんでした。そのためJR東海を利用するには、定期券を持たない場合は必ず切符を買う必要があったわけで、名古屋駅の券売機は休日ともなるといつも行列ができていました。ICカードを導入することでJR東海は一気に利便性が高まるわけですが、面白くないのは名鉄でしょう。

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これで名鉄もやらないわけにはいかない

 これにより名鉄もICカードを導入しないわけにはいかなくなってしまいました。しかし、名鉄はこれまでにかなりの額を投資して、各駅の改札をトランパス対応のものに変えてきた、いや今も変え続けているわけです。それを今度は間髪入れずにICカード対応のものに入れ替えなければならなくなるのです。

 2001(H13)年11月からSuicaを導入している東京、2003(H15)年11月からICOCAを導入している大阪では、既に磁気カードは淘汰の時代を迎えているというのに、名鉄は今頃、「瀬戸線が12月16日からトランパス対応になります」「2007(H19)年度中には知多新線・西尾線(一部のぞく)・蒲郡線・尾西線・広見線がトランパス対応になります」なんてことを言っているのです。

 加えて、トランパスとICカードには大きな違いがあります。TOICAはただの電子マネーなので入金したそのままの金額しか利用できないのですが、トランパスにはプレミアムがあるのです。5000円のカードを買うと5600円分の利用が可能なのです。ICカード化でそのプレミアムをどうするのか、プレミアムの無いTOICAとどう共通化するのか、課題は山積みです。

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 プレミアムを無くすくらいなら、ICカードなど導入して欲しくないというのが、利用者としての率直な意見です。スムーズに改札が通れることよりも、1割以上ものプレミアムがついていることの方が、ケチな名古屋っ子にとってよっぽど魅力的なのは言わずもがなです。

 TOICAでJR東海の改札を通るのは実にスムーズでしたが、TOICAで名古屋の地下鉄や名鉄の改札を通ることができるようになるまでの道のりは、スムーズとは行かないようです。

「東京の魔法は名古屋では効かない-Suica」へ続く


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