14.天白区 名古屋を歩こう

子どものことを考えるならばむしろ...

記事公開日:2006年3月7日 更新日:

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 今回は音聞山の南端にある八事東小学校から八事駅方面へと歩きます。地図を見ると周辺は音聞山、御幸山、表山、八幡山と山という名の付く地名ばかりです。しかし地図上には住宅がびっしりと描かれており山里という雰囲気ではありません。昔の地名が残っているだけで、今は住宅街になっているだろうから、山といってもそれほどでも無いだろうとこの時は思っていたのですが...。

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 八事東小学校のすぐ北側には、石垣と白壁塀に囲まれた仏地院というお寺があります。釈迦如来を本尊として祀っており、11世の鶴峯和尚が1916(T5)年に現在地へと遷しています。創建は不詳ですが、1393(明徳4)年に創建された、末寺十数寺をもつ真言宗の一本山が前身と云われています。その後火災によって荒廃。1624(寛永元)年に復興し、その後曹洞宗に改宗したとのことです。大相撲名古屋場所の際には毎年、二子山部屋の宿舎となり稽古する力士の姿を見ることができ、多くの人が見学に訪れます。

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▲石垣と白壁。八事東小学校北側の仏地院。
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▲あざやかな緑に覆われる仏地院の山門。
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▲名古屋場所の時期には多くの人が力士を見に訪れます。

 続いて八事東小学校から東へと歩きます。しばらくすると塩竈神社の案内看板と神社が登場します。しかしこの神社は塩竈神社ではなく八事神社です。御幸山という地名のとおり山の斜面に神社はあり、神社の境内へは急な坂道が続いています。八事神社は正八幡宮と一之御前社、そして高峯大明神の三社を合祀して1910(M43)年に建立された神社で、三祭神を併祀しています。境内は広く、石を持ち上げることで力を競った力石や、かつては村人が芝居を演じた能舞台のような拝殿が残されています。社務所が立派なのが印象的でした。

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▲塩竈神社の看板の横にある八事神社。
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▲階段を登ったところにある拝殿。
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▲こっちが社殿かと思ってしまうような立派な社務所。

 八事神社の前の道をさらに東へと進んで行くと、先ほど案内看板のあった塩竈神社が北側に姿を表します。八事神社とは比べ物にならないほどの、さらに急な石段があり、鳥居ははるか向こうに見えます。その急坂を登って行くと青銅色の屋根を持つ大きな社殿と、その前に広がる大きな駐車場が目に入ります。塩竈神社は、弘化年間(1844-1847)に天白村の豪農山田善兵衛が、宮城県塩竈市にある、かつて陸奥国国幣中社だった鹽竈神社より分霊を祀ったのが始まりと伝えられています。

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▲山の斜面にあり、階段下からは本殿が見えない塩竈神社の入口。
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▲七五三のシーズンで賑わう塩竈神社。

 1882(M15)年、この見晴らしの良い御幸山中腹に社殿を構え、眺望も良く花見や紅葉の名勝でもあります。階段口にある藤の木は樹齢百数十年で、名古屋市の保存樹となっていて美しい薄紫色の花を咲かせます。塩竈神社は、製塩を伝えた神さまでもある鹽土老翁神(しおつちおぢのかみ)を祭神としていて、この神さまは海路を司っていたことから、人間の潮の満ち干き、つまり出産と、子どもの守護神として信仰を集めています。春の護児祭や七五三の時期には大変賑わい、広い駐車場は数多くの車でいっぱいになり周囲に車が溢れます。塩竈神社では自動車の御祓いも受けることができます。くれぐれもこの塩竈神社への道中、細い急坂での運転にはお気をつけください。御祓いを受ける前に事故を起こしてしまってはせっかくの新車が台無しですから。でも事故を起こした人こそ御祓いが必要な気もしますが。

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▲塩竈神社前からの眺め。かなり高いところにあります。

 塩竈神社の北側には御幸山公園と御幸山中学校があります。この公園には、御幸山の名
の由来を示す石碑が建てられています。このあたりがちょうど山頂になるのでしょう。振り返るとかなりの急坂を登ってきたことがわかります。御幸山という地名は伊達ではありませんでした。しかしその急坂にもびっしりと住宅が立ち並んでいます。夜はさぞかし夜景が綺麗なことでしょう。この公園にはふたつの石碑が建てられています。ひとつには「明治天皇八事御野立所」、そしてもうひとつには「御統監之所」とあります。

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▲公園の入口にある明治天皇八事御野立所の石碑です。
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▲こちらは公園の中央にある御統監之所。
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▲このあたりの住宅から見る夜景は綺麗でしょうね。

 1890(M23)年4月2日、陸軍大演習が行われた際に明治天皇がここが御野立所となりました。その際に音聞山から御幸山と山の名前は変えられました。そして1913(T2)年11月13日に陸軍特別大演習が行われた際、今度は大正天皇がここで再び統監を行いました。それを記念して1915(T4)年、この石碑がに建てられました。公園からの眺望も絶景で、携帯電話の基地局も置かれています。

 御幸山公園から御幸山中学校沿いを歩き、十字路を左折すると道路はクネクネと急な下り坂になります。するとその細い道沿いに、1911(M44)年創建の御嶽神社があります。神社の境内自体も急坂になっています。細い道路沿いには神社専用の駐車場がありますが、道路が細い上に急坂なので駐車には細心の注意が必要です。

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▲思わず通り過ぎそうになってしまった御嶽神社。
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▲御嶽神社は境内も急坂。

 さて、地図を見るとこの御幸山と音聞山という地名の間には太い道路が走っていて分かれています。反対側の御幸山と八幡山の間も同様です。実際はどうなっているかと言いますと、その道路が谷状になっていて、実際に別の山のようになっています。地図からは想像できないほどの急坂です。ですから御幸山から一度坂を下って、音聞山を登って下り、さらに隣の表山へと再び登るという格好になります。まさに一山越えてまた一山です。しかもその山の急坂沿いには地図どおりびっしりと住宅があります。では音聞山を越えて表山へと登ってみます。

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▲音聞山の急坂。坂を下ると...。
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▲今度は急な登り...。アップダウンがかなりきつい。足にきます。

 市バスの八事音聞山のバス停から西へと急坂を登ります。道路は太いのですが坂は容赦してくれません。路面はアスファルトに滑り止め加工がしてあります。坂を登りきったところには表山小学校があり、振り返るとその急坂ぶりに驚かされます。表山界隈は静かな住宅街となっていて、なかには石垣のある日光院というお寺もあります。その日光院を後にして表山の西端に行くと、表山住宅という高層住宅があるのですがこれが不思議。登ってきた斜面とは反対側の斜面に住宅が建っていて、建物の一方である、ふもと側は1階が地表なのですが、建物のもう片方では5階が地表なのです。1階から見ればもちろん5階は5階。でも5階から見るとそこが1階で、地下4階まである建物にも見えてしまうという実に不思議な住宅です。

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▲道幅は広いですが、歩道も滑り止め加工がしてあるほどの急坂、表山。
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▲住宅街のなかで、木を潜り抜けたところにある日光院。
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▲坂を利用した表山住宅。手前も地表、向こう側階段の先も地表。

 ではその表山住宅の不思議な階段を降り、八事方面へと歩きます。しばらく歩くと弥生ヶ丘団地の向かい側、左側に天道幼稚園と高照寺があります。高照寺は元々丹羽郡にあった稲木神社が前身で、1724(享保9)年に天道山高照寺となり、1741(寛保元)年に現在地へと遷っています。かつては八事駅のあたりまでの広さを誇るお寺だったそうです。そして高照寺から北へ150メートルほどのところに五社宮という神社があります。八事駅のあたりまで高照寺の敷地だったということは...そうです、この神社はかつて高照寺のなかにあったものです。

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▲この弥生ヶ丘団地の向かいにあるのが。
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▲かつては広大な敷地を誇った高照寺。
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▲昔は高照寺の敷地にあった五社宮。

 五社宮は日・月・星・神明・天王の五社を祀っています。創建は不明ですが、1741(寛保元)年に天道山高照寺が現在地に遷った際に、かつて高照寺が神社だったころの神さまを祀ったのがこの五社宮です。明治の神仏分離令によって高照寺とは分離されました。その緑に囲まれた五社宮を越えるともう八事のジャスコが見えます。

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▲坂を登りきるとジャスコシティ八事。

 今回、八事東小学校からこの八事駅までいくつの山を越えたことでしょう。地図を見てもその勾配は全く伝わってきませんし、谷状のところを走っている道路を車で走っても、その山の急さは実感できないと思います。実際、この急坂の住宅街に住んでいる人の多くは車で坂を昇り降りするでしょうし、住人でさえ一山越えて街へ出るという感覚は持っていないかもしれません。

 逆に、街に近く利便性は高いにもかかわらず、喧騒を離れ窓からは絶景を見渡せることから、山であることを理由に住む人もいるかもしれません。しかしです。これは車に乗れない子どもにとっては大変なことです。学校に行くにも、バスに乗るにも、友達の家に遊びに行くにも、山をいくつも越えなければならないといった事態になります。ですから、今時の軟弱な子どもに育てたくない、子どもの足腰や根性を鍛えたいという方にはむしろ最適な住宅地です。もちろんその際は、子どもの守護神であり氏神さまでもある塩竈神社でのお祈りも忘れずに


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