02.中区 名古屋を歩こう

ここは夢が集う街

記事公開日:2004年3月18日 更新日:

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名古屋の兜町-伊勢町通

 最近は「栄ミナミ」と呼ばれるようになった、栄の南側を散策します。近年、栄の南側を走る若宮大通の向こうにある大須界隈が活気を見せ始め、栄から大須へと人の流れが生まれつつあります。その通り道になるのがここ、栄3丁目です。久屋大通沿いには松坂屋本店、パルコといった大きなデパートが建ち並ぶのですが、大須はもう少し西にあるため、その人の流れを取り込もうとデパート群よりも西側の矢場公園周辺に、自然発生的に小さなお店がたくさん出来始めています。

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▲パルコと松坂屋がある大津通。ここより西に、夢を持った人がいます。

 では、三越の西側にある丸栄と丸栄スカイルの間にある伊勢町通を南方向に歩きましょう。するとすぐに金融街になります。名古屋証券取引所や証券会社が建ち並んでいるのですが、東京の兜町のような雰囲気ではなく、手書きのポスターが張ってある昭和の雰囲気を残す地場の証券会社が多く、一昔前の金融街という様相を呈しています。証券取引所自体も1931(S6)年に建てられたもので、そろばんを弾く音が聞こえてきそうです。もちろん実際はコンピューター化されていますけどね。しかし、この地区にもビルの建設現場を多く見かけます。これも金融機関淘汰の影響でしょうか。

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▲名古屋証券取引所。昔ながらの建物です 画像 ▲周辺には古くからの地場証券と新築ビルが入り乱れます。

日本初の総合デザインセンター...って?-ナディアパーク

 この伊勢町通の一本西にある呉服町通、通称プリンセス大通に出ると、一気に雰囲気が変わります。トルコ料理専門店や、グラム量り売りの服屋さん、そしてアクセサリーショップといったお店が並びます。風俗店も若干ありますが、それほどは目立ちません。そんななかに目立つ大きなツインタワーがあります。それが「ナディアパーク」です。

 ナディアパークとは、「ナ」と「デ」という文字が入っていることから勘の鋭い方ならお気づきかもしれませんが、「名」古屋の「デ」ザインの情報発信基地として作られたもので、市の公共施設「デザインセンタービル」と商業施設「ビジネスセンタービル」が一体となり、その間をアトリウムが繋いでいます。

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▲「プリンセス大通」です。大きなアーチが目印。 画像 ▲プリンセス大通の一本西、「住吉通」小さなアーチが目印。

 商業施設としてはロフト、紀伊国屋書店、ヤマギワソフトが入っています。公共施設にある国際デザインセンターは、日本で初めての総合デザインセンターだそうです。また「日本初」が出てきましたが、この「総合デザインセンター」という定義自体がよくわかりません。とにかく名古屋市は、行政主導で芸術の街にしたいようです。公園の彫刻では市民の心を動かすことができなかったので、今度は実際にここで市民に芸術活動をさせようということです。芸術というものは行政主導で盛り上がるものなのでしょうか。かつての徳川宗春のように、中央と対立してでも名古屋を発展させるという気概のある市長や知事が登場すれば、話は別なのでしょうけれど。

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▲ナディアパーク。アトリウムではイベントが開かれていることもあります。

CMを知らない名古屋っ子はいない-アサヒドーカメラ

 ナディアパークを出て再び伊勢町通へ、すると黄色い4階建てのビルが登場します。名古屋ではCMを知らない人がいない程有名な「アサヒドーカメラ」です。かつてはパルコの前にあり、個人商店のような間口のお店だったのですが、ここに新本店を構えました。かつてのキャッチフレーズは「店員は無愛想だがカメラは安い。」これを全面に押し出し、ワハハ本舗の久本雅美さん、柴田理恵さんなどを起用し、ユニークなCMを展開しました。

 その後も、「アサヒドーカメラは心を入れ替えて、愛想を良くすることにしました、よろしくね。」とメチャクチャ愛想悪く話すCMや、この4階建ての新本店が完成した際、「新本店完成!」と言って30階建てくらいのビルの映像が出てきて、「映像はイメージです。」というテロップが小さく書いてあるCMなど、印象に残るCMを多数流しています。このアサヒドーカメラは栄3丁目で夢を叶えたお店と言えるでしょう。周りにはそれに続けとばかり、夢のあるお店がたくさんあります。

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▲アサヒドーカメラ。てっきり30階建てくらいになったのかと...。

クリエーター大集合!-さくらアパートメント

 アサヒドーカメラのすぐ南には、かつて「さくらや旅館」だった建物を改装した「さくらアパートメント」という個人商店の集合体があります。ここでは、名古屋で活動するクリエイターたちが自分で作ったものを売っています。服、アクセサリー、靴、アロマグッズなどなど、ニューヨークのSOHO地区に似ていると言ったら言い過ぎかもしれませんが、そんな雰囲気が漂っています。実際、店主と言ってもクリエイターなので、店番をしつつミシンを打つ姿などを見かけます。高尚なものではなく身近なデザイン。名古屋が本当にデザイン都市になりつつあるのかも知れない、とここでは思うことが出来ます。

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▲奥の白い建物が「さくらアパートメント」旅館の各部屋がショップになっています。

 このあたりにはさくらアパートメントに限らず、空きビルや空きテナントにこういったお店がチラホラと入り始め、路地裏にふと、オシャレなアクセサリーショップがあったりする宝捜し気分を楽しめます。夢を追いかけるクリエイターの姿を見ていると、こちらまで楽しい気分になります。

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▲パルコ前にこんな路地が残ります。ここにもお洒落なアクセサリーショップが手前にあります。 画像 ▲古い街並みのなかに新しい店がポツポツと。

夢を見る人が自然と集まる-栄3丁目

 ここで夢を追いかけているのはクリエイターだけではありません。先ほどの呉服町通の一本西、七間通には吉本栄3丁目劇場があります。ここには吉本興業の東海支社もあり、通称「名古屋吉本」と呼ばれています。面識は直接無いのですが、私の大学の後輩も頑張っているとのこと、みんな夢を追いかけてるなぁ。

※吉本栄3丁目劇場は2005(H17)年7月17日をもって閉館しました。

 そしてその向かいにキョクイチビルというビルがあるのですが、ここには華麗な転身を遂げた会社があります。呉服町通という名前の通りがあるとおり、このあたりには服飾関係のメーカーや問屋さんもあるのですが、ここにある会社はかつて、旭一シャイン工業という服飾メーカーでした。場所はここではなく、さらに繊維問屋街である錦にありました。ミンクの飼育を行いコートなどを製造していました。

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▲手前左側が吉本栄3丁目劇場。奥右側がトムスエンタテイメント。

 ところが、繊維業界は中国の安い品物に押され衰退する一方、そこで旭一は「キョクイチ」とカタカナの社名に改め、1991(H3)年アミューズメント産業に進出します。「AGスクエア」というゲームセンターを出店し、さらにはセガ・エンタープライゼスと資本提携を結びます。それだけには留まりませんでした。1994(H6)年に本社を現在地に移転するとその翌年、老舗のアニメ製作会社「東京ムービー新社」を吸収合併。版権ビジネスへと乗り出すのです。

 現在では、「トムス・エンタテイメント」と社名を改め、「名探偵コナン」「とっとこハム太郎」など人気アニメーションの企画・制作・販売を柱としており、連結ではアニメが売上の58%を占めるまでになりました。現在も繊維関係の業務を行っているものの、その売上比率は3%だそうです。アニメーション事業は東京支店で行われているそうで、ここで作られているわけではありませんけれども。それにしてもこの転身ぶりには驚かされます。この街は会社も夢を見ているのですね。

 周辺には、名古屋コミュニケーションアート専門学校などもあり、このあたりを歩いていると、夢を持っている人のパワーをわけてもらえそうです。保守的な名古屋らしくない一角と言えるでしょう。本当の意味で、デザイン宣言都市の姿が表面に出てきていると言えます。ひょっとして、ナディアパークが火付け役だったのかも。それはどうかな...。

 そしてそのパワーは大須界隈へと繋がります。しかし、栄と大須を分断するように「100m道路」若宮大通があります。もうひとつの夢の姿を見る前に、少し歴史に触れてみましょう。

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▲こういったお肉屋さんの向かいにブティックがあったりします。

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