16.守山区 名古屋を歩こう

ガチガチに守られている自然環境

記事公開日:2006年10月16日 更新日:

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柵の中にオオサンショウウオも生息する-八竜緑地

 大森の項では、名鉄瀬戸線の大森・金城学院前駅から南側を歩きましたが、今回はその駅から北側へと歩きます。大森というとそれまで、住宅街と学園というイメージだけを持っていたのですが、それを大きく覆されました。まさしく大森という地名がぴったりの静寂の空間がそこには広がっていました。いよいよ、かつては「森山」という表記だった守山区の本当の姿を目にすることになります。

 大森・金城学院前駅の前の道を北へ歩きます。すると金城学院大学が見えてきます。通り過ぎるようにさらに歩くと、駅から600メートルほどのところに学園のテニスコートが現れます。短大生のテニスウェア姿を眺めていたいところですが、不審者に思われてはいけないのでそこはぐっと我慢して足を北へ進めます。左側には道路の複雑さで迷わせ、不審者の侵入を許さない翠松園の住宅街が見えます。すると右に曲がることができる道路があるので曲がります。風景は一変。道路の左右を木々が覆います。右側には金属製の柵が設けられていて、入れないようになっていますが、少し歩くとちゃんと入口があります。ここは「八竜緑地」です。八竜緑地には湿地と新池があり、なんと絶滅の危機に瀕しているトウキョウサンショウウオも生息しているとのこと。その北入口から入ってみます。

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▲駅から真っ直ぐ歩き、右に曲がると森の中。
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▲入口以外のところからは入ってはいけません。
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▲八竜緑地の北入口から遊歩道を歩きます。

 八竜緑地には遊歩道が整備されています。地図を見ると北入口のすぐ近くには八龍神社があるので最初にご挨拶します。八龍神社という文字のある龍が彫られた石碑があるのですが、その龍の眼光が鋭く何かをじっと見つめているように見えます。森眞龍神という祠もありました。その神社を後にして、遊歩道を南に歩いていくと、湿地が広がっています。この八竜緑地の湿地には、シデコブシやマメナシ、シラタマホシクサなど東海地方固有の植物や、モウセンゴケやミミカキグサなど湿地性の食虫植物が生息していて、さらにはハッチョウトンボやヒメタイコウチなどの昆虫が生息しています。それらは名古屋市内では貴重な存在となっています。

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▲フェンスで囲まれている八龍神社。
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▲眼光鋭い龍が彫られた石碑。
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▲境内にあるもうひとつの祠、森眞龍神。

 そのため名古屋市は、湿地だけでなく湿地の源でもある湧水も併せて守るため、1986(S61)年に八竜湿地とその周辺約5ヘクタールを「八竜緑地保全地区」に指定して、ビオトープ公園として「八竜緑地」を整備しています。また、民間の「水源の森と八竜湿地を守る会」によって毎月第1日曜日には午前9時半から自然観察会も開かれています。遊歩道を歩いていると、地元の小学生の手による案内看板が設置されています。写真でどんな植物が生息しているかを示していたり、どんな絶滅危惧種がここで生きているのかを手書きの看板で説明しています。こういった環境のなかで活動することで、わざわざ教育しなくとも自然を大切にする心が自然と養われるでしょうね。

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▲八竜緑地を南へと遊歩道で歩いていきます。
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▲こちらはドクダミを写真で紹介。
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▲大森小学校の児童の手による絶滅危惧種を説明する看板。

 遊歩道を歩いていくと、木製の机と椅子が置かれた学習ひろばがあります。湿地はこの東側に広がっているのですが、荒らされないように普段はフェンスに覆われていて入れないようになっています。そして学習ひろばの南側には新池が広がります。池のほとりには桟橋が架けられていて、池のなかを見ることができるようになっています。新池の中央には何かお地蔵さんのような石像が見えたのですが、由来などはわかりませんでした。池のほとりに佇んでいると、静寂に包まれここが名古屋市内であることを忘れてしまいます。落ち葉の絨毯を歩いて、再び北入口へと戻ります。

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▲遊歩道は新池に突き当たります。左には普段は入れない湿地帯。
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▲桟橋から池のなかの生物を観察できます。
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▲池の中央にはお地蔵様が。

住民が携帯カメラで不審者撮影中-八龍山吉定寺

 北入口から再び東へと歩くと、八龍山吉定寺があります。周囲はやはり自然が豊かで心がほっとするかと思いきや、警告看板が。ここに車両を駐車すると、防犯カメラの他、住民によって全て携帯カメラで撮影され防犯委員会に収集記録する旨が書かれていました。そして犯罪発生時には、その該当車両の持ち主に駐車時の状況をお尋ねしますとありました。空き巣や痴漢、不法投棄、密猟対策とのことですが、そこまで厳重なところを見ると、過去に何かあったのでしょうかね...。世知辛いです。

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▲丘の上にある八龍山吉定寺。
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▲駐車車両への警告看板。

南京錠に有刺鉄線そして鉄製のフェンス...そこは-野鳥観察の森

 周囲には、草がボーボーに生え、自然に帰ろうとしている宅地に「売物件」という看板が掲げられていたりもしますが、フェンスに囲まれた大きな空間が目に入ります。工場か何かがこんな湿地近くにあるのか思うほどの厳重なフェンスです。フェンスをたどっていくとそこには「ここは、野鳥園です」の文字が。するとフェンスの一部が扉になっていて入れるようになっています。「野鳥観察の森」です。中に入って野鳥を見ようかと思ったのですが、もうこの時は夕方。見渡しても係員などがいる様子がありませんし、誰も森の中にいる気配はありません。またその入り口というのが、鉄製のフェンスで南京錠が取り付けられるようになっていて、さらには上は有刺鉄線が走っている頑丈なもので、悪く言えば監獄の非常口といった感じです。森の中に入っている間に、役所の人が車でやってきて入口に鍵でもかけられた日には、一夜をこの森で明かすことになってしまうと思い、少しだけ見て出ることにしました。まあ、夜行性の鳥をしっかりと観察できるいい機会にはなったかもしれませんが...。

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▲売物件です。買ったらまずは草刈からですね...。
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▲右手が野鳥園。フェンスと有刺鉄線に囲まれています。
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▲野鳥園の中は、鳥のさえずりだけが聞こえる空間。

 実はこの野鳥観察の森、現在は整備中なのですが、小幡緑地中央園の一部なのです。ではその野鳥観察の森から西へ、小幡緑地の本園へと歩きます。それにしても頑丈なフェンスでした。確かに住宅地に程近いにもかかわらず、日中でも静けさが漂う鬱蒼とした森のなかですから、犯罪者を寄せ付ける要素は充分にあるのかもしれません。

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▲これが野鳥園の入口です。鍵を閉められたら大変。

大森北2010

 八竜緑地も野鳥観察の森も、当時と変わらずしっかりと保護されていますが、売物件がありましたとおり、周囲の宅地開発は結構進んでいて、5年前に比べて、住宅は増えているような印象があります。


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