13.緑区 名古屋を歩こう

大高の地酒で時代に酔う

記事公開日:2005年10月20日 更新日:

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 今回はJR東海道本線大高駅から西へと歩きます。大高駅周辺は、駅前には4階や5階建てのビルが少しあるものの、少し歩くと個人商店などがたくさん立ち並び、大高交差点から西方向へ進むと、ホーロー看板がよく似合う懐かしい街並みが広がります。商店に限らず個人経営と思われる工事業者なども散見されます。しばらくすると綺麗な石垣とクロガネモチの木に囲まれた神社が見えてきます。八幡社です。

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▲建物の表面がまぶしい、JR大高駅。
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▲駅前は道路も広く、ビルも若干あります。
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▲しかし、一本入ると懐かしい風景に。

 八幡社の起源は1180(治承4)年にまで遡ります。源頼朝が神奈川県鎌倉市にある鶴岡八幡宮の分霊を相模国小林郷丸山に鎮座させました。その後西暦1200年頃、大高城主花井備中守がその分霊を大高へと迎え、祀ったのが始まりと言われています。その際、現在地と大高城の両地に祀られました。八幡社は今も信仰が厚く、1981(S56)年には本殿改築、1999(H11)年には社務所の改築、さらに2002(H14)年には拝殿を新築しています。毎月15日には月次祭が開かれます。拝殿の真新しい柱に日差しが当たり、まさに神々しい光を放っていました。桶狭間の戦いの翌年である1561(永禄4)年、20歳の家康はこの八幡社へとお参りにやってきています。一体何を祈祷したのでしょうか。それは大高城址で考察してみましょう。

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▲大高町八幡社には、若かりし家康がお参りしています。
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▲真新しい本殿は鮮やか。

 八幡社の隣には大高町川向公会堂があります。名古屋市には公民館に当たるコミュニティセンターが各所に設置されているのですが、このあたりにはそれとは別に公会堂が多数設置されています。公会堂と言うと大きなホールをイメージしてしまいますが、近所の集会所のような雰囲気です。その公会堂のお隣には手芸屋さん。さらに南西へと歩いていくと、ビニル素材で作られた緑色と白色の縞模様のヒラヒラが軒先に付けられた、昭和40年代テイストの八百屋さんや、お茶屋さんなど、木造の建物に昭和がたくさん詰まっています。

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▲公会堂、手芸屋さん、懐かしい風景の始まりです。
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▲自動車よりも自転車が似合う昭和の街並み。
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▲軒先のヒラヒラがいい味を出している八百屋さん。

そしてその木造の建物に、表面だけコンクリート製の壁が付けられている不思議な建物が登場しました。排水のパイプは朽ち、外壁や入口に貼られた鉄板には錆びが広がっています。その錆びのなかにわずかに「東海銀行」という文字が見られます。かつての支店のようです。その東海銀行の文字は書体が古く、かなり昔に廃止されたことが伺えます。東海銀行の廃墟の後ろ側に回ってみますと、瓦屋根の建物が増築された跡もあります。かつてはこの周辺の商店の金庫として賑わっていたのでしょう。営業はしていないものの、いや、営業しておらず放置されているからこそ、ここにも昭和の香りがそのまま残っています。

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▲外観は銀行っぽい瓦屋根の建物。
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▲うっすらと残る「東海銀行」の文字。
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▲中に入って見てみたい。昭和の銀行がそのまま残っていそう。

 橋を渡って大高川を越えると、こちらはやや新しめ建物の「百貨店」や、昔は美容院に必ずあったクルクル回る看板が今も回っている美容院があります。右折してその美容院の横を通り抜けます。さらに古めかしい建物が建ち並びます。このあたりは商店がたくさんあるのですが、人通りはほとんどありません。銀行の廃墟などを見ていると、かつては何かで栄えた雰囲気があります。その栄えたものとは何か、この先にそれは今もあります。

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▲大高川を越えても昭和は続きます。
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▲川を越えたところにある百貨店。
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▲看板がいい味を出している美容院。

 するとなにやら看板が見えてきました。「清酒神の井・神の井酒造株式会社」とあります。そうなのです。このあたり大高川の南側は酒蔵として栄えたのです。起源は不明ですが江戸時代には隆盛を極め、この大高川から樽船によって江戸へとお酒が運ばれていたそうです。神の井酒造の角を左に曲がると薬師寺にぶつかりますので、そこを右に曲がって突き当たりを左折するとさらに黒囲いの酒蔵がずらっと並びます。「タカノユメの山盛酒造」があります。一升瓶がずらっと並べられており今も醸造が続けられている様子がわかります。

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▲清酒神の井・神の井酒造。いかにも歴史ありです。
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▲酒造メーカーふたつに挟まれる格好の薬師寺。
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▲タカノユメの山盛酒造。一升瓶が並んでいます。

 その近くにある大高下村商店はホーロー看板好きにはたまらないスポットです。「リボン化成特約店」「川鐵苦土珪カル」「石灰窒素」「丸ツバメ印尿素」「動物質の有機化成アニマック」などなど、農薬系のホーロー看板がずらっと並びます。しかも屋根がある場所に設置されているため比較的状態も綺麗なのです。今でもこれらの商品は取り扱われているのでしょうか。この下村商店の先を左に曲がります。

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▲大高下村商店。よくこれだけ綺麗に残されています。
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▲これ、今でも買える商品なのでしょうか。

 まだまだ昭和の街並みは続きます。今度は新町公会堂が登場しました。しかも文字が「公會堂」です。更に進むと、大きなレンガの煙突がある清酒萬乗醸造元が見えてきます。見事な黒囲いの酒蔵です。かつて江戸時代には200石を誇った大高村の酒蔵。現在もこの3軒がその繁栄を現代へと伝えています。この萬乗醸造元を除いた2軒、神の井酒造と山盛酒造では年に1度合同見学会が行われているそうです。

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▲新町公會堂です。家にしか見えないんですけど。
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▲清酒萬乗醸造元の煙突が見えてきました。
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▲煙突はなんと煉瓦製。

 大高で、江戸から昭和にかけての時代の流れに酔ってみてはいかがでしょうか。最近流行りの作られた昭和ではなく、生きた昭和がここにはあります。

 大高城址はもうこの先すぐです。


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