おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 第1章 名古屋っ子気質

黒船来襲…それまで名古屋に進出していなかった企業が続々

記事公開日:2004年1月3日

おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 第6回

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 先日、私が勤めている会社の東京本社営業担当者が、名古屋の市場動向を知りたいということでこの地方の取引先を一緒に回ることになりました。この担当者は東京生まれの東京育ち。今までプライベートも含め、名古屋に一度も来たことがないということで到着するや否やこんなことを言い出しました。

「名古屋って難しいんだよね確か。よそ者は受け入れないんでしょ?」

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名古屋はビジネスも排他的だった

 確かに、名古屋へ転勤すると大変らしいですとか名古屋はビジネスがやりにくいという話は噂話レベルだけでなくビジネス書にも書いてあるほどです。実際名古屋で長年生活している私にも、確かに外から入り込むのは少し難しいだろうな。と感じるところはあります。逆に名古屋で成功すれば、全国どこでもやっていけるという話もあります。

しかし流れは急に変わった

 ここ最近、これまではあまり見られなかった、名古屋以外に拠点を置く流通大手の名古屋進出が相次いでいます。

 2002(H14)年7月、愛知県に初上陸したコンビニエンスストア国内最大手「セブンイレブン」。同年12月には名古屋市内に進出しました。

 当初はサークルK王国であるこの地域にどれくらい食い込むことができるか、と言われていたのですが、2003(H15)年12月現在店舗数ではすでに名古屋地盤の中堅コンビニ「ココストア」と並び、各店の売上を見ても、全国の新店平均よりも名古屋地区の新店売上は大幅に上回っているそうです。

コンビニにショッピングセンター…

 2003(H15)年7月にはイオン熱田ショッピングセンターが名古屋の大きな繁華街の一つである金山駅近くにオープン。場所は大同特殊鋼工場跡地のため面積は広く、中心部にもかかわらず名古屋で商売をするには必須である駐車スペースを3200台分設け、連日渋滞を引き起こすほどの繁盛振りです。

 イオンはここ最近この地方へ積極的に出店しており、1999(H11)年にオープンした、映画館などを兼ね備え駐車場3000台を誇るイオン名古屋ベイシティを皮切りに、三好や扶桑などといった郊外住宅地にも大型店舗を軒並み出店しています。ただ、イオンは千葉県に本社があるとはいえ発祥の地は三重県であるので、地元の会社というイメージもあることはあるのですが...。

 また、8月には「ドン・キホーテ」がオープンしました。夜が早いと言われている名古屋への出店は吉と出るか凶と出るか注目されました。こちらも駐車場があるために車で行けるという利便性もあり、名古屋の夜を開拓する結果となりました。

地元資本のショッピングモールがあった場所に…

 そして11月7日、名古屋駅西口に「ビックカメラ名古屋西口店」がオープンしました。ここは元々地元スーパーであるユニー系列の「生活倉庫」という服飾雑貨店が入っていた場所なのですが、売上低迷を理由に2003(H14)年8月撤退を余儀なくされました。

 名古屋資本の店舗があったところに東京資本の店がやってきたわけです。また、名古屋では家電と言えばエイデン(旧栄電社)が大きな力を誇っており、名古屋駅東口から少し歩いたところに本店を構えています。今でも結婚前にはエイデンで家電一式を揃えるという若者も多いのです。

 駅前のために充分な駐車場も無い、このビックカメラに対して名古屋っ子は抵抗感があると思われていたのですが、実際は初日の来店者数15万人、売上は3億円と、予想を大幅に上回る結果を出したのです。

 その3日後には、専門書店大手のジュンク堂書店がJR名古屋駅の東側にオープン。専門書だけでなく小説などの新刊書や児童書など計約50万冊弱を並べて、年間8億円強の売上高を目指しているとのこと。さらに名古屋地区には、もう少し大型の店も作りたいという考えもあると言います。

イオン熱田
▲イオン熱田SC。駐車場からではカメラに入りきらない大きさ。

他地区資本進出そして名古屋地元消費心理の変化

 今、日本全体の消費が低迷しているなか、トヨタ自動車を中心として車に関してこの地方は地場産業にも活気があり、マスコミによると一番消費が元気なのが名古屋だそうです。そのため、今まで名古屋進出をためらっていた企業が新たな市場を求め、次々と進出してきているのです。

 さらには、少し前の名古屋っ子でしたら「駅前の電気屋さんなんて、車で行けんでかんわ。」ですとか、「コンビニはサークルKに決まっとるがね。」と、中身を見ることなく他地区資本の店についてはこう言っていたことでしょう。ところが今、これらの店には名古屋っ子が溢れています。何が名古屋っ子の心理を変えたのでしょうか。

 きっかけはデパートだったのではないでしょうか。

外からやってきたデパートが馴染んだ

 かつて名古屋のデパートといえば松坂屋がステータスシンボルであり唯一のブランドでした。お中元・お歳暮は「カトレヤの包装紙でなけな、受け取ってもらえーせん。」「カトレヤじゃにゃぁと、カッコつかせんがね。」と言わせるほどの力がありました。松坂屋以外を見ましても4M時代が長く続きました。

 4Mとは松坂屋、三越、丸栄、名鉄の4つのデパートを指します。松坂屋以外の3つも純粋な名古屋資本でした。(三越はオリエンタル中村百貨店が名古屋三越となったもので、三越本体とは別会社でした。現在は本体と合併。)にもかかわらず、松坂屋の一人勝ち状態だったのです。

 さらに厳しい状況だったのは、この4Mにも入れない地元資本ではないデパートです。名古屋駅にある近鉄百貨店は、一般向け路線をあきらめ女子中高生にターゲットを絞った店舗に変貌してしまいましたし、豊田市にあったそごうも真っ先に整理され松坂屋となってしまいました。

ビックカメラ
▲♪ビ~ック、ビックビック、ビックカメラ!のCMが流れる時が来るとは...。

高島屋が風穴を開けた...かも

 そんな膠着状態だった名古屋のデパート業界に風穴を開けたのが、2000(H12)年3月にオープンしたJR名古屋高島屋です。それまでは名古屋で買い物と言えば栄と相場が決まっていました。栄には松坂屋、丸栄、三越が出店しており、名古屋っ子はデパートで買い物と言えば栄へ出かけていくのが当たり前でした。名古屋駅にも松坂屋、名鉄、近鉄と3つのデパートがありましたがいまいちパッとしませんでした。売上比率は栄7対名駅3という状態でした。

 名古屋駅を新しくツインタワーとし、そこでJRが高島屋を経営することが決まりました。駅の真上という最高の立地条件。しかし両隣には松坂屋と名鉄があり苦戦も予想されていました。高島屋は岐阜にはあったものの名古屋での知名度はあまりありませんでした。少し詳しい人でも、「丸栄と提携しとる、どっかのデパートか。」程度の認識しかなく、ブランド力は全くありませんでした。

前評判とは大違い 蓋をあけてみたら…

 そのため、よそ者を受け付けない、カトレア信仰、4M信仰の厚い名古屋っ子の心をどれほど揺さぶることができるのか。名古屋駅に買い物という流れを作ることができるのか。と言われていたのですが、蓋を開けてみると絶好調。JR名古屋高島屋は開店して3年。着実にシェアをもぎ取っています。

 オープン前、1999(H11)年度の名古屋市内百貨店売上シェアは松坂屋37.3%・三越26.6%・名鉄20.0%・丸栄12.7%・近鉄3.4%でした。それが高島屋オープン後の半年間は、松坂屋32.2%・三越23.6%・名鉄16.7%・丸栄10.9%・近鉄3.1%、そして高島屋は13.2%に変化したのです。デパート全体として5%売上が増加したものの、既存店だけを見ますと9.2%のマイナスとなりました。高島屋は名古屋全体のデパート売上の一割強、丸栄以上の売上をいきなり持っていってしまったのです。

 その後も高島屋はシェアを拡大し続け、2003(H15)年11月月間売上で初めて三越栄店を抜いたのです。高島屋はなぜ名古屋っ子にすぐ受け入れられたのでしょうか。

徹底した「受け入れてもらう」ための戦略

 実はオープン前、JR名古屋高島屋は4年にわたりマーケットリサーチを行い名古屋の女性にとにかく受け入れられるようにという店舗設計を行いました。ゆとり空間を多く設け、トイレも女性の割合を増やしました。さらに、百貨店は不得意だった部分を専門店でカバーすべく東急ハンズなどをテナントとして受け入れるなど、何でも揃う店作りを目指したのです。

 この高島屋の頑張りを見て、名古屋っ子の考えは変わり始めたのではないでしょうか。名古屋ブランドにこだわる必要は無く、名古屋以外からやってくるものでも良いものは良い。

 逆に名古屋ブランドでも、あぐらをかいているようなところについてダメなものはダメと。そして焦ったのが4Mでした。丸栄は渋谷109路線を取り入れ、三越栄本店は大改装、星ヶ丘店も開店以来の改装を行いました。また松坂屋は南館を増床し、名古屋っ子が大好きな「日本一」の売場面積となりました。

 こうして名古屋のデパートは鎖国から開放されたのです。いや、高島屋という黒船の来襲により、鎖国消費だった名古屋っ子の意識が今変わり始めているのです。デパートだけでなく、ホームセンターやドラッグストアなど様々な業態が名古屋の市場を狙っています。これからは地元・非地元関係なく、良い物だけが残る時代になるのです。迎え撃つ名古屋ブランドがどのように立ち向かっていくのか、これからの戦いが見ものです。

 
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▲久々に帰郷した名古屋っ子は、すっかり浦島太郎状態なことでしょう。

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