おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 第3章 名古屋の企業

あそこだけに行列のできるヒミツ

記事公開日:2004年4月17日

おいでよ!名古屋みゃーみゃー通信 第21回

イラスト

 今回取り上げる名古屋で必ず行列ができるお店。それはとびきりおいしいラーメン屋さんでも、限定のランチメニューを出すお店でもありません。その行列は毎日できるものではなく、毎月ある特定の日にだけ発生します。しかもその行列は愛知県各地で見ることができ、同業者がガラガラなのにもかかわらず、愛知県の人は皆、時間のかかるその行列に並びます。

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名古屋で行列ができるお店

 その行列とは、毎月16日や25日といった世の中の給料日に発生する、UFJ銀行のATM(現金自動預払機)に並ぶ行列です。それなら名古屋に限らずどこにでも発生するのでは、と思われるかもしれませんが、名古屋の場合はUFJ銀行のみに行列が発生するというところが特徴です。

 給料日、スーパーなどに設置されている共同ATMコーナーを見ると、他の銀行のATMは各1台なのに対し、大抵はUFJ銀行のみ2台設置してあるにもかかわらず、UFJ銀行に並ぶ行列は店外まで溢れている光景を目にすることができます。

 なぜ、名古屋っ子はそれほどまでにUFJ銀行が好きなのでしょうか。そして、そんなに待たなければならないにもかかわらず、なぜ他の銀行に乗り換えないのでしょうか。

名古屋を圧倒的に支配していた東海銀行

 UFJ銀行は旧東海銀行と旧三和銀行が都市銀行再編の際に合併してできた銀行です。東海銀行は名古屋を地盤とし、三和銀行は大阪を地盤としていました。かつて三和銀行は愛知県にほとんど無く、合併した2002(H14)年1月現在では5店舗を数えるのみでした。ですので、現在愛知県内にあるUFJ銀行の店舗のほとんどは東海銀行であったということで
す。

地銀じゃなく都銀だった東海銀行

 私が幼い頃、都市銀行は「13BANKS」と呼ばれ13行ありました。第一勧業、富士、三井、太陽神戸、住友、埼玉、協和、大和、東京、三菱、北海道拓殖、三和、そして東海銀行。そのうち11行は関東・関西圏に本社を置いていて、地方に本社があるのは札幌市の北海道拓殖銀行と名古屋の東海銀行で、この2行は都市銀行でありながら地方銀行と揶揄されることもありました。

さくら・あさひ・東京三菱

 では、まずは都市銀行の変遷を見ていきます。信託銀行なども巻き込んでの再編をしていますが、今回は都市銀行のみの変遷を追います。太陽神戸と三井が1990(H2)年に合併して太陽神戸三井銀行が誕生その2年後に名称をさくら銀行に、1991(H3)年に埼玉と協和が合併して翌年あさひ銀行に、さらに1996(H8)年東京と三菱が合併して東京三菱銀行になりました。

北海道拓殖はバブル崩壊などの煽りを受け1997(H9)年に破たんします。その時点で第一勧業、富士、さくら、住友、あさひ、大和、東京三菱、三和、東海と都市銀行は9行になっていました。

みずほ・三井住友

 各銀行とも大きな不良債権を抱え、単独で生き残りをかけるのは難しく提携を模索します。当初は第一勧業と富士、さくらと住友、そして東海、あさひ、三和という3グループができ、東京三菱と大和は単独という形で話が進みます。第一勧業と富士は2000(H12)年に持株会社「みずほホールディングス」を設立し、2002(H14)年9月に都市銀行部門は「みずほ銀行」に再編。さくらと住友は2001(H13)年4月に合併し「三井住友銀行」になります。

 ところで、名古屋に住んでいるとこれらの都市銀行の合併はいまいちピンと来ません。と言うのも、2002(H14)年1月現在の有人支店数は先述の三和の5以外も、大和が2、富士が3、東京三菱が4、あさひが8、第一勧銀が10、三井住友が13といった状況で、しかもその店舗のほとんどは名古屋市内中心部に集中していて、名古屋っ子にとって東海銀行以外の都市銀行は馴染みがあまり無いのです。

UFJ銀行本店
▲UFJ銀行の本店です。名古屋財界の意地で名古屋が本店に。

東海銀行が合併で譲れなかったもの

東海・あさひ・三和の連合になるかと思いきや

 それほど東海銀行の力が強い愛知県。それでもやはり東海銀行も再編を考えなければならず、当初は関東地盤のあさひ銀行と提携します。さらに関西地盤の三和銀行と三行提携を結び、東(あさひ)・名(東海)・阪(三和)と太平洋ベルト地帯をカバーするリテールバンキングを目指し、持株会社化して統合後、三つの地域に特化した銀行を設置すると言った計画が持ち上がります。

 ところが、東海・三和とあさひ銀行の間に溝ができてしまいます。あさひ銀行は持株会社化を嫌いこの提携から3ヶ月後に離脱してしまいます。それをきっかけに東海と三和は合併の実現に向け急速に話が進んでいきます。そして2001(H14)年にUFJ銀行が誕生するのです。ちなみにあさひ銀行は、残っていた大和と系列の地方銀行と統合、2003(H15)年3月に「りそな銀行」を発足させています。

 しかし、りそなは大和を存続会社としており本社も大阪、あさひ銀行の面影は無くなってしまったのかと思いきや、埼玉県内のあさひ銀行のみを切り離し、さいたま市に本社を置く埼玉りそな銀行を別に設立することで決着しています。

UFJ銀行の本店は名古屋に残った

 ちなみに、UFJ銀行は名古屋に本店を構えています。東海と三和の合併については、大阪地盤の三和が主導権を握っていたにもかかわらずです。当初三和は全ての本社機能を大阪に持っていこうとしていたのですが、名古屋の財界がそれでは名古屋から都市銀行が無くなってしまうと猛反発。結果UFJ銀行の本社を名古屋とし、持株会社のUFJホールディングスの本社を大阪とすることで決着しています。東海側の意地を三和が汲み取った形となりました。

東海銀行の通帳とカード
▲東海銀行時代の通帳とカード。バックスバニー。「ほんトウカイ?」

UFJ以外の都市銀行を見かけない

 というわけで、現在の都市銀行はみずほ、みずほコーポレート、三井住友、東京三菱、りそな、埼玉りそな、UFJの7行となっています。では、愛知県内の店舗はどういう状況になっているのでしょうか。現在(2004.4)の有人支店数は、みずほが10(うち名古屋市外4)、三井住友が8(〃3)、東京三菱が3(〃0)、りそなが5(〃0)という状況に対し…。

 UFJ銀行は店舗統合などで減少しているにもかかわらず107(〃58)店舗もあります。ATMコーナーも含めるとその数は膨大になります。逆に、他の都市銀行がスーパーのATMコーナーに入っていることは稀です。

 銀行のATMは相互開放されており、またコンビニなどでも利用できますが、手数料がかかりますし、やはりいざという時に有人店舗が近くにあった方が重宝します。名古屋への転勤族が名古屋へ来て驚くことのひとつがこれなのです。

 UFJ銀行以外の都市銀行に口座を持っている人にとって、名古屋ほど不便な都市は無いのです。否応なしにUFJ銀行に口座を作らなければなりません。もちろん、手数料など気にしないという太っ腹な人はいちいちそんなことをわざわざしないかもしれませんが。

愛知県には「地銀」が無い

 また、愛知県には地方銀行が無いという特殊な事情があります。かつての都市銀行は財閥系と地域系とに分類することができました。もちろん東海銀行は地域系で、1941(S16)年に(旧)愛知銀行、(旧)名古屋銀行、伊藤銀行が合併して発足しており、さらに1945(S20) 年には岡崎銀行、稲沢銀行、大野銀行と合併し、愛知県内の地方銀行をひとまとめにしてしまったのです。

 その後、1988(S63)年に相互銀行が普通銀行に転換し、名古屋相互銀行が名古屋銀行に、中央相互銀行が愛知銀行に、中京相互銀行が中京銀行になっていますが、これらは第二地銀と呼ばれ、協会組織も地方銀行とは別になっています。

他に、お隣岐阜県にある地方銀行、十六銀行や大垣共立銀行も愛知県に進出しています。もちろんこれらの第二地銀・地銀は愛知県内に多くの店舗を構えています。それでもやはりUFJには太刀打ちできません。一体なぜそれほどまでに愛知県民はUFJ銀行が好きなのでしょうか。

結局…なんでUFJ銀行が好きなの?

 それは、給与が振り込まれる口座がUFJ銀行だからです。

 給与振込口座は、自由に選べるからその説はおかしいのではないか、やはりUFJが好きだから選んでいるのではないか、と名古屋っ子以外の人は思われるかもしれません。金融機関にとって、給与振込口座に指定してもらうというのはとても重要なことです。

 給与が入ってくる口座のある銀行はその家庭にとってメインバンクとなり、ゆくゆくは住宅ローンや年金受取と末永く付き合ってもらえる可能性があります。そのため毎年4月になると給与振込指定キャンペーンなど、各銀行が必死になって獲得しようとします。

 ところが、UFJ銀行は特にキャンペーンを行わないにもかかわらず、給与振込口座が増え続けるのです。そこには秘密があります。給与を振込むのは各企業です。

 ある調査によると2003(H15)年春の時点で、愛知県内に本社を置く上場企業221社のうち、UFJ銀行をメインバンクとしているのは146社で66%をも占めます。各企業は給料を振込む際、やはりメインバンクから振込むことが多いと思われるのですが、他銀行への振込みと自行内への振込みでは手数料に差をつけることが多く、手数料コストの軽減を図りたい企業が、社員に対しUFJ銀行の口座への振込みをお願いするという場合が多いのです。

 もうひとつは噂レベルの話ですが、東海銀行時代、東海は融資先企業に対し融資との交換条件として、社員への給与振込口座を東海銀行に限る約束を取り付けるといったことをしていたとも言われています。

 名古屋の企業に就職した際、給与振込口座の申請用紙に「UFJ銀行に限ります」と書いてあった場合は、退職までずっと毎月、長時間行列に並ぶという覚悟が必要となります。

追記

UFJ銀行は現在、三菱東京UFJ銀行となり、名古屋に本店は置いていません。

イラスト
▲数十分並ぶのと、105円の他行手数料。天秤にかけたらやっぱり並ぶ名古屋っ子。

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