オイシイもの食べたよ! オイシイレポート

静岡・由比でいただく飲み込まれた宿場町でとっておきの桜エビ

記事公開日:2010年11月21日 更新日:

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★馬の水呑み場に登録有形文化財
★旧東海道には広重美術館
★桜エビのかきあげサックサク!

 トッピーネットでは以前、崖と荒波に挟まれ、旧東海道の難所とよばれ、今も細い海岸線に国道1号と高速道路、鉄道の線路がひしめき合い、パーキングエリアさえ縦列駐車のスペースしか確保できないという「由比」をご紹介したことがありました。

「挟まれたのは崖と荒波だけじゃなかった-静岡・由比町」

♪ふじのふじのみや~ごてんばあさんおって~(略)~
♪いはら うはら すそのにおりてきて~

 当時は、平成の大合併いう荒波にも踏ん張り、両側が合併によって静岡市清水区となり、飛び地となってまでも庵原郡由比町として存在していたのですが、とうとう、その荒波に飲み込まれ、2年前に由比町は静岡市清水区由比となり、由比町はもちろん、庵原郡も消滅してしまいました。

 そんな由比は桜エビの名産地。かつての宿場町風情を楽しんで、桜エビ料理をいただいてきました。

宿場町に大正ロマン?

 東名高速と並走する国道1号線から、まるで脇道に入るかのような角度で交差点から進入すると、そこに由比の街並みが広がります。東海道本線の由比駅前あたりから分岐する、現在は県道370号線となっている旧東海道を歩いていき、由比川にかかる橋を越えると、かつての宿場町区域に入り、当時を思い起こさせる風景が広がります。

 と、言いたいところなのですが、まず目に付いたのが銀行です。銀行といっても戦前を思い起こさせるような建物です。

 それは清水銀行由比支店・本町特別出張所。ここは今でこそ出張所という扱いになっていますが、1900(M33)年創業の庚子銀行本店として、1925(T14)年に完成したものなのです。

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 正面にはイオニア式柱頭を飾る柱が4本あり、清水銀行によりますと「簡素ながらも典型的な新古典主義の様式」だそうです。1997(H9)年9月には国の登録有形文化財に登録され、現在も大切に保存されるとともに、営業を続けているのです。

 一見、宿場町風情とは時代が異なるために違和感を感じたものの、これは、由比が古くから宿場町として栄え、商業の中心として明治、大正、昭和と繁栄し続けてきた歴史の語り部なのだと思うと、ぐっと存在感を感じたのでした。

 でも...そんな正面の背後に、新しい増築のような建物がくっついている姿の違和感を拭うことはできませんでしたが...。

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馬の水呑み場!

 そこから東へ、宿場町の中心へと歩いてみます。「あ!」と、驚きの表情で看板を指差す弥次喜多人形のある「東海道由比宿・おもしろ宿場館」、脇本陣跡、「和紙と錦織の館」などを見ながら歩いていきますと、右手に明治時代の郵便局舎が現れます。この建物は、1906(M39)年5月に平野義命という方が局長になった際、自宅に新築されたものでして、その後20年間使われたのだそうです。それで、今はどうなっているのかといいますと、平野さんの家になっているとのこと。自宅に郵便局を作ってそれが自宅になった...。まるで個人商店のようですね。

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 そんな明治時代の郵便局舎の向かい側には、中途半端な太さの水場があります。溝にしては太いし、水路にしては細い...。一体なんだろう...と思ったら、それは「馬の水呑み場」。

 その昔は、大名行列の馬がここで水を飲んだり、その馬の体を洗ったりしたのだそうです。この水路の向こうにある建物が本陣です。本陣のすぐ目の前にこういった施設が作られたのは当時でも珍しく、他の宿場町の本陣には類例を見ないと言われています。

 当然、今はもう水を飲む馬の姿を見ることはできませんが、その代わりに亀がたくさんいてちょっとビックリしました。

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広重美術館に入ってみます

 では、その本陣跡を見てみましょう。由比宿には本陣はひとつしかありませんでした。その本陣跡はその後ずっと由比本陣家が所有していたのですが、1989(H元)年、当主の理解を得て由比町が跡地を購入。現在は「東海道広重美術館」のある「由比本陣公園」として整備されています。

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 東海道広重美術館は、浮世絵師・歌川広重の作品を中心にコレクションした日本初の美術館で、約1,400点の版画などが収蔵されており、毎月作品の展示替えが行われています。この時は「浮世絵とジャポニスム」という企画展が開催されており、当時の外国から見た日本も知ることができ、なかなか興味深いものがありました。

 作品展示だけでなく、当時の手法と同じように版画をすることができる体験コーナーもあり、少しずつ色を重ねてできあがる版画の醍醐味を味わうこともできます。ただ、それを体験しないと、展示スペースとしてはちょっと物足りないかな...という気もしました...。

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由比名産を食べよう!

 ひとつ意外だったのは、その本陣公園には由比の名産品を紹介しているコーナーがありまして、いわしや桜エビの加工品なんかが並んでいたのですが、そこにやたらと缶詰が並んでいるのです。「♪やきとりなら~ホテイ~やきやき」のCMソングでおなじみの、ホテイフーズのものまで。

 焼き鳥も名産なの?と思ったら、そうではなく、なんと名産なのはその缶詰の中身ではなく、缶詰そのものだったのでした。缶詰工場がこのあたりにはたくさんあるんですね。

 では最後に、そんな名産品のなかからひとつ、桜エビのかきあげをいただくことにしましょう!

 今回は、静岡市に住む大学時代の友人に案内をしてもらったのですが、その友人イチオシのお店「井筒屋」へ。先ほどの清水銀行の向かいにあります。

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 お店の前にはツーリングのバイクがずらり。友人曰く、大変人気のお店で、いつも店の外に行列ができているとのこと。この日も多くの人がお店の外にまで溢れていました。

 すると、店の入口にはテレビ静岡の超人気番組「くさデカ」の張り紙が。「当店が登場!!」とのこと。その番組の人気のおかげで、司会を務めるDonDokoDonの平畠さんは静岡県で人気者だそうですね...。ちなみに。その平畠さんの「くさデカ」がテレビ静岡で放送されている時間に、名古屋の同じ系列の東海テレビではDonDokoDonのぐっさんが番組をやっているというのは、奇遇ですかね...。

 それにしても、番組自体を見たことがないので意味はよくわかりませんが、グルメ番組なのに「くさデカ」というタイトルなことには、一見語感的にちょっとどうなんだろ...なんて思ったりします。

桜エビづくし~

 そんなことを言っている間に席が空きました。注文したのはもちろん、この井筒屋名物の「由比定食(1,650円)」です。

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 運ばれてきました!桜エビなのはメインのかきあげだけではありません。ご飯も桜エビと一緒に炊き上げてあり、小鉢にも甘い桜エビ、お吸い物にも桜エビが!まさに桜エビ尽くしです。

 そしてもちろん、桜エビのかきあげはサックサク!なのに、口の中に何か硬いものが残るなどということはなく、残るのはいい風味だけ。これはたまりません。

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 さらに、そのかきあげには天つゆがついているのですが、それともうひとつ、桜エビで作ったという塩が用意されており、2つの味で桜エビのかきあげを味わうことができるのです。ご飯やお吸い物にもしっかりと桜エビの味が染み出していて大満足。由比の味、満喫できました!

 ただひとつ、残念だったのは、天気があまりよくなくて富士山が綺麗に見られなかったことですかね。遠目に見る富士山と由比の風景、一度青空で見てみたいですね。今回は歌川広重の「由井」の絵で、その部分はカバーしたいと思います。

 由比町自体は、静岡市清水区に飲み込まれてしまいましたが、この宿場町風情、そして名産品、いつまでも埋没せずに残って欲しいものです。崖と荒波に挟まれつつも、小さい宿場町でありながら、すっとその歴史を守りつつ発展してきたのだから、それはこれからも大丈夫ですよね。

 桜エビにシラス、みかんに甘夏。季節によって由比で味わえる名産は変わります。今度は、シラスもいいなぁ~。

関連情報

井筒屋(静岡・清水区)

静岡県静岡市 清水区由比314

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