トッピーの放送見聞録 放送事情レポート

ABC朝日放送新社屋稼動開始...さよなら大阪タワー

記事公開日:2008年7月1日 更新日:

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 テレビの完全デジタル化に向けて、古いアナログのシステムの改造には限界があるのか、思い切ってフルデジタルに移行した方が早いからなのか、それともただのキッカケにしているだけに過ぎないのか、会長が移転すると決めたから誰も文句を言えない社風だからなのか...。各局それぞれに様々な思惑があるのでしょうか、ここ数年で、新しい社屋に移転するテレビ局がたくさんあります。

 名古屋周辺でもCBC、東海テレビ、メ~テレ、そしてぎふチャンが新社屋へと移転しましたが、大阪ではこの6月23日に、朝日放送(ABC)が新社屋からの放送を開始しました。

 さっそく、新社屋に移行したばかりのABC・朝日放送へと行ってきました。

ロゴを変える大英断

 大阪のテレビ局といえば、先に移転した毎日放送や関西テレビなどを見ても、奇抜だったり洒落ていたりと、ただの普通のビルのような面白みの無い名古屋のテレビ局とは違って、社屋そのものにアイデンティティを感じることができるデザインになっていることが多いものです。端的に言うと「名古屋と違ってセンスがある」です。

 阪神電鉄で阪神福島駅へとやってきました。ここからは、ABCの旧社屋・新社屋ともに近く、両方への案内看板が設置されていました。

 その看板にはさっそく、アクサダイレ...じゃないや、ABCの新しいロゴが。

 最近、テレビ局はロゴをコロコロ変える風潮がありますが、ABCは一度マイナーチェンジをしているものの、これまでのロゴは、まだテレビがTBS系列だった30年以上前から使われてきたもので、略称を前面に出しているABCにとっては、ロゴが局イメージそのものであり、今年1月1日からのロゴ変更は、かなりの大英断といえます。

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水都OSAKAとの調和

 ABCの新社屋は堂島川のほとりにあります。この街の再開発プロジェクト自体が、水都大阪の再生をコンセプトとしていて、そのなかにあるABCの社屋は、川と空に向かって開かれた広場というイメージで、木目や緑があふれ、環境と対立しない建物となっています。

 再開発プロジェクトの名は「水都OSAKA・α(アルファ)プロジェクト」。その名を聞いて思わず、「♪こんな時アルファ~」と口ずさむのが、ABC新社屋での正しい振る舞いです。

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 社屋のガラス壁面を木で覆っているのは、調和のとれたデザインのためだけではありません。もうひとつの理由は、深夜まで残業していることを、労働基準監督署に見られないように隠すため...ではなく、これによって直射日光を避け消費電力を抑えるという、環境への配慮もされてのことです。

 まあ、放送局は深夜まで電気がついているのが当たり前ですからね。ラジオも24時間放送を行っているわけですし。

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社屋をぐるっとまわってみます

 新社屋には4つのテレビスタジオと、5つのラジオスタジオが設けられています。また、唯一生放送中に阪神大震災に遭遇したテレビ局としての教訓を生かして、免震構造となっています。

 ABCの新しいロゴは、社運を賭けているのか全てが「右肩上がり」。しかもABCという3文字だけでなく、全ての文字が作られているようで、サイトのアドレス表示や、英語社名表記など、アルファベットは全てロゴと同じ書体となっています。

 イメージとしてはかなり違いますけど、コンセプトとしては、テレビ朝日の現在のロゴに通じるものがあるような気もします。あちらも「右肩上がり」にこだわっているようですし。

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見学施設はありません...が

 東京のテレビ局はここ最近、観光施設化していて、フジテレビやテレビ朝日をはじめ、見学スペースや常設のグッズ販売スペースなどを設けていますが、ABCにはありません。ただ唯一、リバーデッキに「ABCキャラクターステーション」という移動可能なグッズショップが設けられています。

 これまでABCはグッズ販売を一切行わず、ABCのグッズは番組のノベルティとして手に入れるしか方法はありませんでしたから、ABCのキャラクターであるキュキュのファンには朗報です。

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局キャラよりも有名!?な...

 普通、テレビ局のグッズというと、局のキャラクターのものばかりなのですが、ABCの場合はちょっと違います。ABCでキャラクターといえば、まさに存在自体がゆるキャラの「おはよう朝日です」でおなじみ「おき太くん」ですよね。他にも、高校野球中継で登場する「ねったまくん」グッズもあって驚きました。

 もちろん、グッズ買いましたよ。すると、ラジオのタイムテーブルも手渡してくれながら、店員さんは声をかけてくれました。

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マニアですみません

「キュキュバス」という、ナンバーはもちろん、ABCラジオの周波数「1008」の、かわいいバスがグッズショップとなっていて、店員さんが一人常駐していました。私がキュキュグッズを買うと、「今日はどこからいらっしゃったのですか?」と聞かれました。

 まあ、嘘をついても仕方が無いので、正直に「名古屋からです...」と答えると、一瞬「え?」という表情をされてから、「近鉄で?」と聞かれました。

 図星なわけですけど、やっぱり大阪の人にとって名古屋は近鉄というイメージなのでしょうかね。新幹線で行き来するというイメージではないのですね。

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ほたるまちと福澤諭吉

 この区画にはかつて1993(H5)年まで大阪大学医学部附属病院があり、再開発された際に区画一体に「ほたるまち」という名がつけられました。ABCのほかにはスーパーやカフェのある複合商業施設や、マンション、大学のサテライトキャンパスなどが設けられています。

 その一角にあるのが、「福澤諭吉誕生地」の碑です。1835(天保5)年、ここには豊前国中津藩の蔵屋敷があり、下級藩士福澤百助順の次男として諭吉は生まれています。ABCの新社屋建設にあたってしばらく仮撤去されていたのですが、再び整備されました。

 そりゃ、これをないがしろにするわけにはいきませんよね。公共性の高い放送事業とて、福澤諭吉さんがどんどん入ってこないことには、事業として成り立ちませんものね。

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新社屋から見る旧社屋

 ABCの新社屋前からは、旧社屋を望むことができます。ABCの旧社屋は公園やホール、ホテルなどを兼ね備えていて、敷地でロケをすることが多かったことから、私のようなエリア外在住者でもイメージを思い浮かべることができます。

 そのABCのシンボル的存在ともいえるのが、「大阪タワー」です。

 大阪在住の方でも、特に放送に興味をお持ちでない人は、「大阪タワーって?」と思われるかもしれません。

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さようなら大阪タワー

 大阪タワーは、ABCの電波塔として建てられたものですが、放送局併設のタワーとしては珍しく地上102メートルのところに展望台を持ち、そこにスタジオも設けられていて、お天気カメラで高い位置からの映像をバックに合成するのではなく、実際に高いところから放送するという画期的な番組を制作していました。

 高さ160メートルを誇り、通天閣よりもはるかに高い大阪タワーは、1966(S41)年の完成時から一般開放されていましたが、入場者の減少に加え、テロなどへの脅威に備え、放送局敷地への一般人立ち入りを制限するテレビ局が多くなる風潮のなかで、1997(H9)年9月をもって一般開放は終了しています。

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 かつてABCの関連会社として存在したホテルプラザはかなり前に廃業し、現在は低層階のみ大塚家具のショールームになっています。ホテルと大阪タワーと社屋からなる、いかにもABCという感じのするこの空間も、間もなく姿を消すことになります。

 大阪タワー、一度上ってみたかったな...。

 昔は、新婚さんいらっしゃいとか、ラブアタックとか、ABC制作の番組でプレゼントとして「ホテルプラザ」の名を聞くことも多かったですし、ホテルプラザと大阪タワーが消えてしまうことに、エリア外の人間ではありますが、感慨深いものがあります。

 ところで、そういえば名古屋でも、東海テレビの旧社屋は大塚家具のショールームになっていますね。大塚家具は放送局関連の古い建物に入居するのが好きなのでしょうかね。

 パブリが家賃に込みだったりして。

関連情報

新社屋のご案内(ABC)

取材協力

KAZ Communications

朝日放送(大阪・福島区)MAP

大阪市福島区福島1-1-30

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