トッピーの放送見聞録 放送事情レポート

金沢でも全局がデジタル放送をスタート 送信所からどのように電波は発射されてる?

記事公開日:2006年11月27日 更新日:

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 2003(H15)年12月1日に東京、大阪、そして名古屋でスタートした地上デジタル放送。それからまもなく3年が経とうとしているこの10月、ようやく中部地方全てのテレビ局(親局)で地上デジタル放送がスタートしました。

 そのうちのひとつ石川県では、ほとんどの放送局が7月からデジタル放送を開始していたのですが、それから遅れること3ヶ月。北陸朝日放送の開始により全局がデジタルハイビジョンで見られるようになりました。石川県では、金沢市観音堂町からデジタル放送の電波が発射されています。今回、運良く近くを通りがかる機会がありましたので見てきました。

アナログUHFの電波が出ていたところから…

 名古屋のような特殊な事例を除いて、デジタル放送はUHFの電波を使用するために、それまでアナログ放送のUHFの電波が出ているところからデジタルの電波を出すという場合がほとんどです。そうすることによって、視聴者はそれまでのアナログ用UHFアンテナでデジタル放送を視聴することが可能で、アンテナを増設することなくデジタル放送を楽しむことができます。金沢もそうなっています。

 これまで、金沢地区のUHFの電波は2本の鉄塔から発射されていました。金沢市観音堂町にある石川テレビ併設の「石川テレビ放送・テレビ空中線送信鉄塔」から石川テレビ(37ch)が送信され、そしてテレビ金沢(33ch)と北陸朝日放送(25ch)は石川テレビ近くの同じく観音堂町にテレビ金沢が設置したタワーからの送信となっていました。

 VHFであるNHK金沢と北陸放送は野々市町からの送信であったため、このあたりの家庭のアンテナは、VHF1本が野々市町、そしてUHF1本が金沢市観音堂町に向けられています。

 国道8号沿いで1軒だけ、UHFのアンテナを2本、この観音堂町に向けている家がありましたが、両タワーの間の距離はわずか250メートル。1本のアンテナで綺麗に受信できると思います。悪徳電器店に騙されたのか、それともかなりのこだわりがあるのか...。

地デジ用の鉄塔が建てられました

 さて、デジタル放送に話を戻します。石川テレビはこれまで、今にも倒れそうと言ったら失礼ですが、かなり細い鉄塔で電波を送信してきました。しかし1999(H11)年5月、デジタル放送の実験を機に新たな鉄塔に立て替えられました。その鉄塔高は160メートル。そんな新しいタワーからは2つの放送局がデジタルの電波を送出します。持ち主である石川テレビと、これまで野々市町からVHFで放送していた北陸放送です。北陸放送は石川テレビに送信タワーを借りる形になります。

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石川テレビには開局当時の面影も

 それにしても、石川テレビの社屋を見てびっくりしました。よく見ると増築増築でかなりの大きさがあるのですが、一見その姿はまるで独立U局かのようです。その社屋の横に新しいデジタル用タワーがあるのですが、それが建設される前にあった140メートルの円管鉄柱が建っていた場所には、旧送信鉄塔を記念して空中線が残されています。こういったものをモニュメントとして残す心意気は素敵です。こちらは開局の1969(S44)年2月から1999(H11)年3月まで使用されたとのことです。

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 その開局当時からあると思われる局舎も見受けられます。レンガ造りで2階建て。三重テレビの本社ととてもよく似ています。建設されたのが同時期で、しかも両局とも東海テレビ、中日新聞の関係会社ですから、ひょっとしたら同じ設計かもしれません。

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もう一本の鉄塔も近い

 では、石川テレビ本社から250メートルほど離れた場所にある、もう1本の鉄塔へ行ってみましょう。大徳中学校の南側にあります。このタワーはテレビ金沢が1990(H2)年4月に開局した時に建設され、翌年10月から北陸朝日放送も共用しています。当初からその予定があったのか、石川テレビの自立鉄塔に比べて立派なものとなっています。

 デジタル放送はテレビ金沢、北陸朝日放送に加えて、これまで野々市町から送信していたNHKが供用となっています。民放のタワーにNHKがのっかるという、これまでアナログではあまり見られなかった現象がおきています。

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 周辺はこれまで田畑だったようなのですが、新築の住宅が多く見受けられ、宅地開発が進んでいます。送信タワーのすぐ横にはテニスコートもあります。このあたりでは電波を浴びながら生活することになります。

 送信空中線には防雪カバーが取り付けられている上に、両方ともタワーには網がかけられていて、雪がドサっと地面に落ちて周囲にまき散らないように配慮がなされています。雪国ならではの光景であり、なおかつ住宅街にあることから気を使っていることがわかります。まあ、住宅街にあるというよりは、タワーの周囲に住宅ができてしまったと言った方が正確かもしれません。

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 デジタル化によってこれまで金沢地区では、悪徳電器店に騙された家庭を除いて、VHF・UHFと1本ずつアンテナを立てていたものが、UHF1本で済むようになります。それもこれも、視聴者に配慮してなのか、経費節減なのかはわかりませんが、NHKが民放に送信場所を合わせてくれたお陰です。

まあ単純ミスでしょうけどね

 私がなぜ、視聴者に配慮してなのかどうかわからない、とわざわざ言うのかといいますと、この記事を書く際にNHK金沢放送局のホームページを見てそう思ったからです。NHK金沢のホームページには「地上デジタル放送」について特設ページが設けられているのですが、そのページの「どうすれば受信できる?」という質問に、以下のように答えられているのです。

「屋上などにUHFアンテナが設置され、瀬戸デジタル放送タワーからのUHFの電波がそのまま各戸に流れていれば、現在のテレビに地上デジタルチューナー、または地上デジタル放送対応テレビを設置することで受信できます。」

 瀬戸デジタルタワー?

 いくらなんでも金沢で愛知県瀬戸市からの電波は流れてこないでしょう。たとえ流れてきたとしても、それはNHK金沢ではなく、NHK名古屋ですよね...。

 さては、NHK名古屋放送局が作ったホームページを流用して、チェックもせずそのまま掲載してますね。NHK金沢放送局の視聴者への配慮の程度が、ホームページによく現れています。やっぱり、民放のタワーを間借りする主たる目的は経費節減なのでしょうね。

関連情報

観音堂デジタルテレビ放送所(石川・金沢市)MAP

36.589606, 136.607983

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