トッピーの放送見聞録 放送事情レポート

関西のテレビが見られたのは「今までが偶然だった」?名張は名古屋圏?

記事公開日:2006年3月26日 更新日:

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 前回、三重県の名張市に行ってきたというお話をしましたが、その際にひとつの新聞記事を見せていただきました。21日付けの朝日新聞伊賀版にあった「伊賀で関西のテレビが見られなくなる」というものです。名張市は大阪の通勤圏で、大阪のベッドタウンとして人口が増加してきたというお話を前回したとおり、大阪からやってきた人がたくさん住んでいますし、古くから名張に住んでいる人も買物や通勤で大阪・奈良方面に出かけることが多いといいます。

 新聞のテレビ欄も大阪のテレビ局が大きく載っていますし、もちろん普段から多くの人が大阪のテレビを見ているのです。しかしこの「大阪のテレビを見る」ということに、ストップがかかるかもしれないのです。それはなぜなのでしょう。

放送エリアとしては三重県全域が名古屋傘下

 名張市は大阪のベッドタウンとはいえ、三重県です。三重県は放送の区分で言うと「中京広域圏」に含まれます。中京広域圏とは名古屋を中心とした放送エリアで、愛知・岐阜・三重県では名古屋の民放広域テレビ局と、各県のNHK・民放テレビ局を見ることになっています。放送事業は免許事業であり、このようなエリア区分は国が規定しています。

 しかし、名張市や三重県の伊賀地域ではこれまで名古屋のテレビはほとんど見られていませんでした。もちろんこれらの地域では名古屋のテレビ局が放送を流しているのですが、大阪のテレビの電波が飛んでくるために、ほとんどの家はそれを受信していたのです。通勤や買物に大阪へ出かけるこの地域の人にとっては、名古屋よりも大阪の情報が重要なのは明白です。

大阪のテレビ局に伊賀の話題を扱って欲しいと陳情

 これには問題が以前からありました。伊賀地方は正式には名古屋局のエリアになるために、ニュースとして扱われるのは名古屋局のみで、大阪局でこの地域のニュースが流されることはありませんでした。そこで地元住民は、大阪のテレビ局に伊賀の話題を扱って欲しいと陳情したこともありました。

 ところがです。もっと大きな問題が現在浮上しているのです。

テレビのデジタル化でエリアの適正化?

 それはテレビ放送のデジタル化です。現在のアナログテレビ放送は2011(H23)年にデジタルへ完全移行することが決まっています。それ自体には何の問題も無いのですが、このデジタル化に合わせて、国はエリアの適正化を行おうとしている側面があります。つまり国は、正式なエリア外へはなるべく電波を漏れさせないようにしたいのです。

 となると、これまで伊賀へと飛んできていた大阪の電波が、場合によっては見られなくなる可能性があるというのです。しかし電波というのはなかなか思い通りには飛んでくれず、技術的にはこれまでどおりのエリアを確保できるといわれています。問題になっているのはケーブルテレビを通してテレビを見ている家庭です。

ケーブルテレビに認可がおりるかどうか

 現在、名張のケーブルテレビ局「アドバンスコープ」では、大阪と名古屋両方と三重、京都などのアナログテレビ放送を流しています。しかしデジタル放送では、民放は名古屋広域局と三重テレビしか流されていません。将来的にも、正式なエリアである名古屋の放送しか流せない可能性が現状では高いのです。これに地元は反発しているのです。これまでどおり、大阪のテレビも見せて欲しいと。

 これに対し、総務省は「今までがたまたま偶然だった」とバッサリ斬り捨てています。

 確かに、これまで大阪の電波は飛びすぎていました。私の家は愛知県瀬戸市という、岐阜県と隣接する場所にあるのですが、かつて高台に住んでいた頃は、普通に4チャンの毎日放送や6チャンの朝日放送、8チャンの関西テレビを見ていました。関西テレビのローカル深夜番組で、岐阜県中津川市の人のお便りが紹介されていた記憶もあります。しかしデジタル放送では、三重県伊勢市から大阪の電波と同じチャンネルで名古屋の放送が出されることで、名古屋地域での大阪局受信ができなくなりました。

 まあ我が家は当然、大阪よりも名古屋が近いわけで、大阪の情報と名古屋の情報、どちらが必要かといえば名古屋の情報が必要です。大阪のテレビが受信できなくなっても「まあ仕方ないか」で済ますことが出来ますが、名張はそうはいかないでしょう。

 今後、署名集めなどを行う予定になっているそうですが、こういった区域外のテレビ受信は全国各地にある問題で、特に名張のケースはどういう判断がなされるか、全国的に注目されています。

追記

※2007(H19)年8月2日追記
CATVの区域外再送信、総務相が容認裁定へ
どうやら認められる方向になりそうです。

※2010(H22)年6月11日追記
アドバンスコープに対し、在阪広域4局の地デジ再送信が認められたとのことです。今後、アドバンスコープ内で再送信方式を決める会議で結論が出た後に、再送信開始の運びになったという情報が入ってきました。

※2010(H22)年06月23日追記
アドバンスコープでの、在阪広域4局の地デジ再送信は、8月1日から開始されるとのことです。

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